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アデノイド増殖症
渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

アデノイド増殖症の概要

アデノイド増殖症とは、アデノイド(咽頭扁桃)が異常に大きくなって耳や鼻、のどなどにさまざまな症状が現れる疾患です。小児の発症が多いですが、成人に発症することもあります。

アデノイドとは、のどの奥に位置するリンパ組織で、細菌やウイルスの侵入を防御する免疫機能があります。通常3~6歳頃までの小児はアデノイドが大きく、成長に伴い小さくなっていくことが一般的です。

何らかの原因によってアデノイドが異常に大きくなると、空気の通り道が狭くなり、呼吸や飲み込みが障害されたりすることがあります。呼吸が障害されることで、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、いびきをかいたりする「睡眠時無呼吸症候群」を伴うケースもあります。

アデノイドがさらに大きくなると、鼻と耳をつなぐ耳管が閉塞して中耳炎や難聴を併発したり、のどから鼻につながる後鼻孔が詰まって副鼻腔炎を発症したりする恐れもあります。

長期的には、歯並びに悪影響を及ぼしたり、呼吸のしにくさやのどの痛みが原因で食事が十分に取れなくなり、体重が減少したりすることもあります。

このようにアデノイド増殖症では、単にアデノイドが大きくなるだけでなく、日常生活に支障を来したり、身体の成長にも悪影響を及ぼす恐れがあることが特徴です。

アデノイド増殖症は、感染症やアレルギー、刺激物の摂取などさまざまな原因によって発症します。特に小児では保育園等の集団生活で感染症にかかる機会が多く、発症のリスクが高い傾向にあります。

アデノイド増殖症の発症を認める場合には、感染症など原因に対する治療に加え、呼吸障害などがある場合にはアデノイドの切除術が考慮されることもあります。

アデノイド増殖症

アデノイド増殖症の原因

アデノイドは生理的に大きくなるものですが、さまざまな原因によって異常に大きくなることがあります。

例えば、のどにウイルスや細菌感染を生じたり、アレルギーを起こしたりすることが原因でアデノイドが腫れることがあります。

アデノイド増殖症の前兆や初期症状について

通常、アデノイドは健康な人でも大きくなることがあり、大きくなっても自覚症状なく経過することもあります。

しかし、呼吸のしにくさから口呼吸になったり、鼻が詰まったような声になったりすることもあります。また、炎症が耳にまで及んで中耳炎や難聴を併発することもあるほか、睡眠中の呼吸が障害されて睡眠時無呼吸症候群を認めるケースもあります。

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に定期的に呼吸が止まったりいびきが出たりすることがあります。そのため、睡眠が妨げられて日中の眠気や集中力の低下などにつながる恐れもあります

アデノイド増殖症の検査・診断

アデノイド増殖症が疑われる場合には、問診や症状の観察とあわせてレントゲンや内視鏡などを用いてアデノイドの状態を確認します。また必要に応じて睡眠ポリグラフ検査などが行われることもあります。

問診では、飲食のしにくさ、喋りにくさ、睡眠中の無呼吸やいびきの有無などを聴取します。また、最近のどの感染症(レンサ球菌咽頭炎など)にかかったことがあるか、中耳炎を発症したことがあるかなどもあわせて確認します。

アデノイドの腫れに加えて睡眠中のいびきや無呼吸を認める場合には、入院の上、頭皮や顔に電極を貼り付け、睡眠中の脳の活動をモニタリングする睡眠ポリグラフ検査が行われることもあります。

アデノイド増殖症の治療

アデノイド増殖症を認める場合には、まずは原因に対する治療が行われます。

のどの感染症が原因の場合には抗菌薬、アレルギーが原因の場合にはステロイドの点鼻薬や抗ヒスタミン薬などが用いられます。

原因に対する治療を行っても症状が改善しない場合や、睡眠時無呼吸症候群を認める場合、アデノイド増殖症によって中耳炎を繰り返し発症する場合、強い不快感を伴う場合などは、アデノイドの切除術が考慮されることもあります。

アデノイド切除術では、内視鏡でのどを観察しながら狭い空間に入る機器を使用してアデノイドを切除します。手術は全身麻酔下で行われますが、外来で実施することも可能です。

アデノイド切除術による術後合併症の可能性は低いものの、まれに患部から出血することがあります。特に小児の場合には患部から多量に出血して重篤な状態に陥るリスクがあるため、術後に出血を認める場合には速やかに医療機関を受診することが重要です。

アデノイド増殖症になりやすい人・予防の方法

感染の機会が多い小児や、保育施設等に勤務する成人は、アデノイド増殖症の発症リスクが高いといえます。そのため、小児だけでなく、保護者や保育施設職員も感染対策をしっかり行うことがアデノイド増殖症の予防に繋がるといえるでしょう。

感染対策のためには、マスクの着用や手洗い、うがいなどのほか、免疫力を高めるための取り組みをすることが重要です。

免疫力を高めるためには、適度な運動を心がけ、十分な睡眠をとって体を休めるようにしましょう。また、規則正しい食生活を送ることも有効です。食事は1日3食バランス良く摂るようにし、炭水化物・タンパク質・脂質のほか、食物繊維やビタミン類、ミネラルを含む食品を取り入れると良いでしょう。


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