目次 -INDEX-

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

プロフィールをもっと見る
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

気管支喘息の概要

気管支喘息とは、発作的に起こる気道の狭窄によって、呼吸機能が低下する呼吸器系疾患です。咳や痰、繰り返す喘息発作を主な症状とし、小児のみならず40代以降の成人や高齢者まですべての年齢層で発症します。
喘息発作とは気道が狭窄して呼吸が困難になり、激しくせき込んで、息を吐くときにゼーゼーヒューヒューと音がする喘鳴を呈する症状です。
長期間の気道炎症は気道の線維化と呼吸機能の低下を引き起こし、気管支喘息の重症化を招きます。炎症で粘膜が腫れた気道は刺激に対して過敏になり、喘息発作を繰り返します。

気管支喘息の原因

気管支喘息の原因の代表的なものの一つはハウスダスト・ダニ・大気汚染物質などのアレルギーです。小児の患者さんの大半はアレルギーが関係していますが、成人の患者さんの4割はアレルゲンが発見できません。

アレルギー以外に気管支喘息の発症に関わる危険因子は以下のとおりです。

  • 遺伝的要素
  • アトピー素因
  • ウイルス性疾患
  • 気候の変化
  • ストレス
  • 肥満
  • 運動
  • 食品、食品添加物
  • アルコール
  • 妊娠
  • 月経
  • 過労

気管支喘息の原因は喘息発作の引き金となり、症状を悪化させる要因になります。しかしながら、原因が特定できないケースも少なくありません。

気管支喘息の前兆や初期症状について

気管支喘息の発作は夜間から早朝に起こりやすいのが特徴です。夜間や早朝の激しい咳・呼吸困難・喘鳴がみられる場合は気管支喘息を疑って内科やアレルギー科、呼吸器内科の受診をおすすめします。

小児は小児科やアレルギー科にご相談ください。

気管支喘息の検査・診断

気管支喘息の診断には症状と経過の聞き取りが重要です。発症時期や症状の経緯、患者さんや家族のアレルギーの有無、成人の患者さんには小児喘息の既往があるかなどを聞き取ります。気道が狭い乳幼児は風邪症状でも喘鳴が起こるため、類似疾患との鑑別は容易ではありません。保護者は喘鳴が起きるタイミングや喘鳴以外の症状があるかを観察して、医師に伝えます。

病院で行う検査は以下のとおりです。

  • 血液検査
  • 肺機能検査
  • 気道可逆性試験
  • 呼気中一酸化窒素濃度測定
  • 喀痰検査

血液検査ではアレルギーに関連するIgEや好酸球細胞の増加、気管支喘息以外の疾患の可能性がないかを調べます。呼吸機能に関する肺活量や1秒間に吐き出す空気の量などを検査するのが肺機能検査です。

気道が狭くなっていると、思い切り吸い込んだ息を全部吐き出す時間が正常な人より長くかかります。気道可逆性試験は気管支拡張剤の吸入し、吸入前後で呼吸機能の変化があるかを調べる検査です。気道の炎症の有無と程度は、喀痰検査や呼気中一酸化窒素濃度測定で検査します。

患者さんが自宅で行う検査がピークフローです。簡易の肺機能検査器具、いわゆるピークフローメーターを使って、力いっぱい息を吐き出したときの空気の速さを測定します。毎日ピークフローの数値を観察し続けると、気管支喘息の状態把握に効果的です。

気管支喘息かどうかは本人や家族からの聞き取りと検査結果をもとに、医師が総合的に診断します。乳幼児には肺機能検査や呼気中一酸化窒素濃度測定の実施は困難です。まずは気管支喘息の治療を開始し、改善がみられるか経過観察をするケースもあります。

気管支喘息の治療

気道の炎症を抑え、気管支を拡張させるのが気管支喘息治療の基本です。喘息発作を予防する治療と発作を抑える治療の2種類を組み合わせます。定期的に受診して気管支喘息の状態を評価し、症状や発作のない状態を維持するのが治療の目標です。気管支喘息の治療には薬物療法の継続と悪化因子の除外など自己管理が求められます。

妊娠中・授乳中の患者さんも医師の指示に従い、喘息発作を予防する治療を継続します。子宮によって肺が圧迫され、呼吸機能が低下する妊娠中の患者さんは気管支喘息の症状を悪化させる可能性が高い状態です。主な気管支喘息治療薬は妊娠中・授乳中の患者さんに問題なく使用できるとされています。

喘息発作を予防する治療

喘息発作を予防する薬は、少しずつ気道の炎症を改善して喘息発作を起こしにくくする薬です。そのため、症状がない時期に自己中断してはいけません。治療の主軸となるのが気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬です。吸入ステロイド薬と併用して気管支拡張薬である長時間作用性β2刺激薬やロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤を使用します。吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬の配合剤は吸入回数が減り、個々に使用するよりも効果が大きいのが利点です。小児は吸入薬が気道に届くように、一人ひとりに合う吸入方法の検討が大切になります。また、毎日根気強く吸入を継続できるように家族の協力が必要です。

発作を抑える治療

発作には息苦しさを緩和する薬として短時間作用性吸入β2刺激薬やステロイドの全身投与、緊急時にはアドレナリンの皮下注射を行います。第一選択薬は短時間作用性吸入β2刺激薬です。所持していない場合や20分ごとの吸入を繰り返しても発作が治まらないときは受診をおすすめします。内服薬の場合は服用30分後に症状とピークフローを確認し、変化がないときや悪化しているときは受診が必要です。顔色が悪く、強い喘息発作のときは気管支拡張薬を吸入しながら、状況に応じて救急車を要請するなど速やかに受診します。

禁煙

喫煙している成人の患者さんは禁煙を始めて、呼吸機能の悪化と症状の重症化を予防します。喫煙は吸入ステロイド薬の効果を弱め、症状の悪化を招く要因です。自力での禁煙が難しい場合はニコチンガムやニコチンパッチの使用、禁煙外来の受診をおすすめします。

自己管理ツールの活用

症状や発作の出ない良好な状態を目指すには自己管理の継続が重要です。自己管理ツールとしてピークフローメーターによるモニタリングと喘息日記が広く活用されています。ピークフローメーターを毎日朝と夕方に行うと、気道の状態や日内変動の確認が可能です。喘息日記には体調や症状・ピークフロー値・日常生活への影響などを記載します。本人が発作の兆候をつかんだり、悪化因子の除去に役立てたりできるツールであると同時に、医師が治療方針を検討する際の情報源として有効です。

気管支喘息になりやすい人・予防の方法

気管支喘息になりやすい人の特徴を以下に示します。

  • アレルギー体質の家族がいる人
  • 肥満
  • その他のアレルギーがある人
  • 気管支が敏感な人
  • 低出生体重児

予防にはアレルギーを起こすアレルゲンの除去、感染症の予防、肥満の解消などが大切です。また、妊娠前の喫煙と肥満は生まれてくる子どもが気管支喘息やアレルギー体質になりやすいとされています。

アレルゲンの除去

ダニやハウスダストを除去するため、室内のホコリを溜めない環境づくりが重要です。ホコリが溜まりやすいカーペットや絨毯、布用ソファは置かず、照明は天井据え付け型にします。防ダニ寝具、高密度繊維布団カバーの使用も効果的です。衣服やカーテンはこまめに洗濯し、犬や猫など毛の生えたペットの飼育は控えます。また、ダニは湿気の高い場所も好むため、湿気への対策も大切です。湿度上昇の原因となる洗濯物の部屋干しや観葉植物の栽培は好ましくありません。アレルゲンが特定されている患者さんは、アレルゲン物質を身体に取り込まない対策をします。

感染症の予防

風邪やインフルエンザなどの感染症は気管支喘息の発症と症状を悪化させる要因です。流行前のインフルエンザワクチンの接種、混雑時のマスク着用や帰宅時の手洗いの励行など感染症予防に努めます。バランスのとれた食事・適度な運動・十分な睡眠をとり、体力をつける規則正しい生活も大切です。

肥満の解消

体内の脂肪組織から分泌される物質は気道の過敏性の亢進と炎症の悪化を招くとされています。脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積している肥満の人は気管支喘息を発症するリスクが高い状態です。また、肥満によって蓄積された腹膜内の脂肪が横隔膜を押し上げるため、肥満の人は呼吸機能が低下しています。食事のコントロールと定期的な運動を実践し、内臓脂肪の減少と肥満の解消をおすすめします。

関連する病気

参考文献

この記事の監修医師