

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
目次 -INDEX-
食物アレルギーの概要
食物アレルギーとは、食べ物が原因となり免疫学的機序を介して生体に不利益な症状が起こることです。本来無害な成分であっても免疫機能が過剰に反応することで、生体にアレルギー反応が生じます。 したがって体質の問題で乳糖を分解できずに下痢を起こす乳糖不耐症は、免疫機能とは関係ないため食物アレルギーには該当しません。 なお食物アレルギーには、即時型と非即時型(遅発型)があります。 即時型 免疫グロブリンE(IgE抗体)が関わる 非即時型 T細胞による反応と考えられている(詳細は未解明) 即時型は、食べ物を摂取した直後〜2時間以内くらいにアレルギー反応を生じるケースがほとんどです。即時型食物アレルギーの症状は蕁麻疹、湿疹、下痢、咳、ゼーゼーとした息遣いなどがあります。なお食物アレルギーの多くは、即時型といわれています。 一方で非即時型は、食べ物を摂取してから数時間後に湿疹やかゆみなど、主に皮膚に関する症状が認められます。食物アレルギーの原因
個人によって、アレルギーの原因となる食べ物は異なります。 小児では卵、牛乳、小麦、大豆が主なアレルゲンとなっています。ただし、これらは年齢が上がるにつれて症状が出なくなる「寛解(かんかい)」となるケースが多いようです。 一方、成人で発症する場合は魚類、エビ、カニ、果物などが主なアレルゲンとなります。この場合は、寛解しにくいと考えられています。 また小児から成人となる間に発症する際アレルゲンとなりやすいのは、ピーナッツやそば、ごまなどです。これらが乳幼児期に発症した場合は寛解するケースもありますが、一般的に耐性は得られにくい、つまり寛解しにくいとされています。果物が原因となることも
小児や成人に認められる食物アレルギーの中には、果物を原因とするケースもあります。たとえばキウイ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなどです。この場合は、口唇、口腔、咽頭のかゆみなど口腔症状だけのケースが多いようです。これらは、花粉症との関連性もあると推測されています。運動との組み合わせで生じる食物アレルギー
特定の食べ物と運動を組み合わせることで「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)」が生じることがあります。実際に小麦や魚介類などの昼食を摂り、その後サッカーなど激しく身体を動かしたときに蕁麻疹が出現し、その後呼吸器症状を伴うショックに至ったとの報告があります。 食物依存性運動誘発性アナフィラキシーは、運動以外にも風邪、睡眠不足、ストレス、アルコール摂取、入浴などにより誘発されることもあるようです。食物アレルギーの前兆や初期症状について
食物アレルギーの出現頻度は「皮膚粘膜症状>消化器症状>上気道症状>下気道症状>全身性症状」です。 皮膚粘膜症状 かゆみ、蕁麻疹、血管運動性浮腫、発赤疹、湿疹、眼結膜充血、流涙、まぶたの腫れ 消化器症状 悪心、お腹の痛み、嘔吐、下痢 上気道症状 口腔粘膜や咽頭のかゆみ・違和感・腫れ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり 下気道症状 咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューと音のする呼吸)、呼吸困難 全身性症状 頻脈、血圧低下、活動性低下、意識障害 これらの症状がある場合は下記の診療科目を受診しましょう。 皮膚科 皮膚症状がある場合 小児科 子どもの場合 内科 成人の場合 ただし症状によっては、アレルギー科を受診する必要もあります。また、全身性症状があるなど緊急性の高いケースのときには、救急を受診してください。食物アレルギーの検査・診断
食物アレルギーの検査・診断には、問診、血液検査、皮膚テスト、食物除去試験、食物負荷試験などがあります。問診
問診では、さまざまな聞き取りがあります。- 何を食べたのか
- どのくらいの量を食べたのか
- 摂取後何分後くらいに、どのような症状が出たのか
- 既往歴
- 服薬状況
- アレルギー疾患の家族歴
- 食習慣や生活環境について
血液検査
血液検査で、特異的IgE抗体の量を測定します。これは診断の補助にはなりますが、IgE抗体が検出されたからといって、必ずしもアレルギー症状が出るわけではありません。したがってIgE抗体の検査で陽性となった時点で、その食べ物を除去する必要はないでしょう。 また食物アレルギーのある方は、末梢血好酸球数の増加、鉄欠乏性貧血、肝機能障害、低たんぱく血症、電解質異常が認められることがあります。そのため、必要に応じて一般血液検査が行われることもあります。皮膚テスト
皮膚プリックテストは即時型の食物アレルギーに対する検査方法です。プリックテスト専用のプリック針で少量のアレルゲンを皮膚に入れて、アレルギー反応が生じるか判定します。アレルギーがある場合には、針を刺した場所に膨疹(ぼうしん)ができます。なお膨疹とは赤みを帯びた膨らみのことです。食物除去試験
問診でアレルゲンが予想できたら、該当するものを1〜2週間除去します。そして症状の改善が得られるか、食物日記を記録します。食物負荷試験
アレルゲンとなるものや疑われるものを、医師の管理の元で摂取する検査です。 過去に重篤な反応や呼吸器症状が出ている場合には、原則として入院で食物負荷試験を行います。一方で、重篤な反応を引き起こす可能性が低いと判断される場合には、在宅での試験も可能です。食物アレルギーの治療
食物アレルギーの治療は、大きく2つにわけられます。- 日常での管理
- 即時型アレルギー反応に対する治療
日常での管理
日常での治療のポイントは、必要最小限の食物除去です。そしてアレルゲンが入っている食品や、代用食品について十分に確認しておく必要があります。見た目ではわからなくても、お菓子などの加工品に含まれるものもありますので、食品表示をしっかりと確認しましょう。 また補助的な治療としては、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬といった薬物療法が用いられます。即時型アレルギー反応に対する治療
皮膚症状や消化器症状であれば、経過観察や抗ヒスタミン薬の投与で対処が可能です。 ただし咳や喘息など呼吸器症状が出ると、ショックに至ることもあります。その場合は、医療機関への緊急受診が必要となります。 効果的な薬剤としては0.1%ボスミンの皮下注があり、使用量はおおよそ「体重(kg)×0.01(ml)」です。食物アレルギーになりやすい人・予防の方法
小児は消化機能が未熟なため、食物アレルギーになりやすいようです。とくに乳児期に食物アレルギーを発症するケースが多いようです。小児で発症する食物アレルギーの特徴は、自然によくなることです。1歳で食物アレルギーと診断された方のうち、約9割は小学校入学前に寛解すると考えられています。 また食物アレルギーの症状を予防するには、アレルゲンとなっている食べ物を避けることが大切です。健康危害の発生を防止するために、食品表示法では容器に包装された加工食品について、特定原材料を含む旨、表示するよう義務付けています。 なお、特定原材料とは「えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生」です。 また特定原材料に準ずるものに「アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン」があります。これらの表示義務はありませんが、表示するよう推奨されています。 ただし、その場で包装される食品などにはアレルギー表示の義務はありませんので、注意しましょう。関連する病気
- アナフィラキシーショック
- 口腔アレルギー症候群
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
- アトピー性皮膚炎
- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎
- 乳児アトピー性皮膚炎
- セリアック病




