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中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

フェルティ症候群の概要

フェルティ症候群は、脾臓(ひぞう)の腫れ、好中球(白血球の一種)の減少、関節リウマチの3つが合併するまれな病気です。関節リウマチ患者のごく少数に見られ、男性よりも女性の発症率が高いとされています。フェルティ症候群は、関節リウマチを長い間患った後に起こることが多いですが、時には関節リウマチの診断前にあらわれることもあります。

近年では、関節リウマチの治療法が進歩したため、フェルティ症候群を発症する人は減っていると考えられています。一度フェルティ症候群を発症すると、免疫細胞である白血球が減少して感染症にかかりやすくなるため、早めの診断と治療が大切です。

フェルティ症候群の原因

フェルティ症候群の正確な原因は完全に分かっていませんが、いくつかの要因が考えられています。とくに「HLA-DR4」という遺伝子の異常を持つ人に多く見られることが分かっています。

フェルティ症候群は何らかの原因により、免疫システムに異常が生じることで発症します。通常、免疫は自分自身の細胞を攻撃しないように設計されていますが、フェルティ症候群では誤って自分の好中球や脾臓を攻撃してしまいます(自己免疫)。攻撃された脾臓が、好中球を過剰に分解してしまうことも一つの原因です。

さらに、体内で白血球を増やすために必要な物質の働きが妨げられることも、好中球が減少する原因となっています。

フェルティ症候群の前兆や初期症状について

フェルティ症候群では、関節リウマチの症状が見られます。症状には個人差がありますが、関節の痛み、腫れ、朝のこわばりなどが長く続きます。

他の特徴的な症状として、好中球の減少による免疫力の低下により、感染症が繰り返し起こるのも特徴です。とくに皮膚の感染や肺炎などの呼吸器の感染が多く見られます。また、原因不明の発熱や体重減少などの全身症状が見られることもあります。

そのほか、皮膚の下にできる硬いしこり(リウマチ結節)、リンパ節の腫れ、足の潰瘍、ドライアイ、ドライマウスなどの症状があらわれることもあります。左上腹部に触れた時、不快感や鈍い痛みを感じる場合もあります。

フェルティ症候群の検査・診断

フェルティ症候群の診断は、関節リウマチ、白血球(とくに好中球)の減少、脾臓の腫れの3つから判断されます。脾臓の腫れがなくても、関節リウマチで白血球減少が確認されればフェルティ症候群と診断されることもあります。また、抗生物質が効きにくい感染症が続く場合は、フェルティ症候群を疑う重要な手がかりとなります。

以上の診断基準を満たすか調べるために、血液検査や画像検査、骨髄検査などが実施されます。

血液検査

白血球の一種である好中球が2000/µL未満となっていることがフェルティ症候群の特徴です。また、ほとんどの患者で貧血が見られます。脾臓が腫れている場合は血小板の数値も低いことがあります。関節リウマチの症状を確かめるために、自己免疫の値についても調べます。

参照:National Library of Medicine「Felty Syndrome」

画像検査

関節のレントゲン検査で関節リウマチによる関節破壊の程度を確認します。腹部の超音波検査やCT検査では脾臓の腫れを確認します。

骨髄検査

骨の中にある「骨髄」という血液を作る部位を、骨髄液や骨髄組織の一部を採取して調べます。白血病などの他の病気との鑑別や、白血球減少の原因を調べるために役立ちます。

フェルティ症候群の治療

フェルティ症候群の治療では、薬物療法や脾臓摘出術が検討されます。

薬物療法

フェルティ症候群の薬物療法では、主に抗リウマチ薬が使用されます。抗リウマチ薬には、関節の炎症を抑えながら好中球の数を増やす作用があります。

十分な効果が見られない場合は、より強力なステロイド薬や免疫抑制薬などが使われることがあります。ステロイド薬は素早く症状を和らげる効果がありますが、感染症のリスクを高めるため短期間のみ使われます。

白血球が著しく少ない場合には、骨髄を刺激して白血球を増やす特殊な薬が一時的に使われることもあります。

脾臓摘出術

脾臓を取り除く手術です。フェルティ症候群での脾臓は好中球を過剰に破壊する場所となっているため、取り除くことで血液中の白血球数を増やす効果が期待できます。手術のリスクや合併症があるため、薬物療法が効かない場合の最終手段として行われます。

フェルティ症候群になりやすい人・予防の方法

フェルティ症候群は、長期間にわたって関節リウマチを患っている人に多く見られます。とくに中年以降の女性に多いのが特徴です。

また、特定の遺伝子を持つ人や、関節リウマチの家族歴がある人もリスクが高くなります。リウマトイド因子や抗CCP抗体の値が高い人も注意が必要です。

予防法としては、関節リウマチの早期発見と適切な治療が重要です。定期的な血液検査で白血球の減少を早めに見つけることも大切になります。

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