

監修医師:
伊藤 喜介(医師)
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名古屋卒業後、総合病院、大学病院で経験を積む。現在は外科医をしながら、地域医療に従事もしている。診療科目は消化器外科、消化器内科。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・消化器がん外科治療認定医、日本消化器病学会専門医、日本腹部救急医学会認定医、がん治療認定医。
目次 -INDEX-
門脈圧亢進症の概要
門脈とは肝臓に入る血管の一つを指します。門脈は胃、腸、脾臓、膵臓などといった腹腔内の臓器から肝臓に血液を送る血管であり、特に腸から肝臓へ栄養素などのさまざまな物質を運ぶ働きをしています。 門脈圧亢進症とは何らかの原因により、この門脈の圧力が異常に上昇してしまった状態のことを指します。門脈圧が上昇するためには、肝臓を通り抜ける血液が滞る必要があります。肝臓から心臓へと血液を送る肝静脈、肝臓そのもの、肝臓に入るまでの門脈のいずれかに異常が起きた時に門脈圧の上昇が見られます。門脈圧が上昇したことにより、さまざまな症状を呈します。門脈圧亢進症の原因
門脈圧が上昇する要因は、肝臓から心臓へと血液を送る肝静脈の異常による肝後性門脈圧亢進症、肝臓そのものの異常による肝内性門脈圧亢進症、肝臓に入るまでの門脈の異常による肝前性門脈圧亢進症に分類されます。 以下に、いくつかの原因となる疾患について説明していきます。肝硬変
門脈圧亢進症の最も多い原因となる疾患となります。肝硬変とは肝炎などの病態により、肝臓内に繊維化が広がっていく疾患です。肝臓内が繊維化を起こすと組織が「硬く」なります。硬い組織では血管が広がりにくいため、肝臓へ多くの血液を送ることができません。門脈の血流が滞ってしまうことで、門脈圧の上昇が引き起こされます。バッド・キアリ症候群(Budd-Chiari症候群)
肝臓から心臓へと血液を送る肝静脈や肝部下大静脈が閉塞してしまう病気のことです。血栓形成や血液凝固異常などが原因と考えられていますが、原因不明である場合も多く見られます。肝臓から血液が流れ出ることができないため、肝臓に血液が溜まりうっ血を起こします。そして最終的には流入路である門脈圧の上昇が引き起こされます。肝外門脈閉塞症
何らかの原因で肝臓に流入する門脈が閉塞してしまう疾患です。明らかな原因のない原発性肝外門脈閉塞症と、膵炎や胆嚢・胆管炎、腹腔内手術などの影響で門脈閉塞してしまう続発性肝外門脈閉塞症がみられます。門脈が閉塞してしまうため、それよりも腸や脾臓側では血流がうっ滞し、門脈圧の上昇が引き起こされます。門脈圧亢進症の前兆や初期症状について
門脈圧亢進症は軽症の場合、症状を自覚することはほとんどありません。しかし、門脈圧亢進症が続くと、門脈血は肝臓を迂回するような流れである側副血行路を形成し流れていきます。これらによって以下のような病態を引き起こしさまざまな症状が現れます。胃・食道静脈瘤
側副血行路の最も形成されやすい部位として、胃や食道の静脈の逆流があります。逆流した静脈は時に拡張してコブ状になり、このような状態を胃静脈瘤、食道静脈瘤といいます。拡張した血管は破れやすいため、破裂すると消化管内に出血し、吐血や下血を生じます。止血が遅れると死に至るような重篤な結果を引き起こす場合もあります。脾腫・脾機能亢進
脾臓から門脈へと向かう血流が滞るため、脾臓の血流も滞ってしまいます。よって脾臓は腫大して脾腫を起こします。また、脾臓は古くなった白血球や血小板などの血液成分を壊す働きがあります。脾臓に血液が滞ることでこの働きが亢進し、結果として過剰な血液成分の破壊が起き、貧血、血小板減少、白血球減少を引き起こします。腹水
門脈圧が上昇すると毛細管圧の上昇が起こり、肝臓や腸の表面から水分が漏れ出てきます。腹腔内に貯留すると腹水となります。量が増えるとお腹が張って苦しくなり、栄養が漏れ出ることで栄養の喪失が起こります。肝性脳症
門脈圧が上昇すると肝臓へ流入する血液が減少します。アンモニアなどの毒素は肝臓で除去されますが、門脈圧亢進症では除去量が少ないまま全身に流れていきます。脳にアンモニアが貯留することで、意識障害、眠気などの症状を引き起こします。気になる症状があるときは内科を受診しましょう。




