「親が下肢静脈瘤を発症している」、これって遺伝するの? どんな人がなりやすい?
ご両親の足の静脈瘤を見て、「自分もそうなるのではないか」と不安を抱く人もいらっしゃると思います。今回は下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と遺伝の関係やどのような人がなりやすいかについて、「うのさわクリニック」の宇野澤先生に聞いてきました。
監修医師:
宇野澤 聡(うのさわクリニック 院長)
日本大学医学部卒業、日本大学医学部大学院修了。日本大学系列の附属病院で、主に心臓血管外科の診療を経験。2020年、千葉県流山市に「うのさわクリニック」開院。心臓の病気のほか、下肢静脈瘤や人工透析に向けたシャント手術もおこなっている。医学博士。日本循環器学会認定専門医、日本心臓血管外科学会認定専門医、日本脈管学会認定専門医。日本外科学会、日本胸部外科学会、日本静脈学会、日本透析医学会の各会員。
かなり高確率な遺伝要因
編集部
下肢静脈瘤って、立ち仕事などで生じてくるのですよね?
宇野澤先生
はい。たしかに、立ち仕事をされている人に発症しやすいですが、遺伝も強く関係しているようです。
編集部
遺伝の影響は、どの程度あるのでしょうか?
宇野澤先生
一般に、ご両親のどちらかが下肢静脈瘤を経験している場合は約40%、双方にある場合は約90%の確率で発症するといわれています。
編集部
後天的に生じた下肢静脈瘤が、遺伝することはあり得ますか?
宇野澤先生
そもそも、下肢静脈瘤の発症の原因が遺伝であるのか、後天的要因であるのかを明確に区別することはできません。下肢静脈瘤の遺伝というのは、「発症しやすい体質を受け継いだ」と理解していただければと思います。
編集部
いずれにしても、遺伝の問題は自身では解決できませんよね。
宇野澤先生
もし、ご両親が下肢静脈瘤を発症していたら、「自分もリスクファクターを抱えているんだな」と思うようにしてください。発症には環境的要因も大きいため、親が下肢静脈瘤であるからといって、全ての人が発症するわけではありません。
遺伝以外の「引き金」の存在
編集部
コブになりやすい“傾向”はありますか?
宇野澤先生
板前さんや美容師さんなどの「立ち仕事」に就いている人ですね。じっと立っている時間が長いと、静脈の弁に負担がかかり、弁が壊れて下肢静脈瘤を発症しやすくなります。
編集部
年齢も関係してきそうですね。
宇野澤先生
そうですね。立っていることが多く、年齢を重ねれば重ねるほど、静脈の弁への負担が蓄積されていき、いずれ下肢静脈瘤になってしまいます。
編集部
ほかにも傾向があったら、教えてください。
宇野澤先生
妊娠中の女性は、胎児が静脈を圧迫することで血流を滞らせがちです。また、女性ホルモンの影響で血管が広がりやすくなることも一因になり得ます。弁のサイズ以上に血管が広がると、血液をとどめておけないのが理由です。加えて、滞留や逆流がはじまると、さらにその部分で血管が膨らみます。ほかにも便秘による力みも、静脈の弁に負担がかかってしまいます。
緊急性がないだけに、考えられる対策は様々
編集部
傾向がわかっていれば、対策も可能ですよね?
宇野澤先生
はい。足のむくみやだるさなどの症状に加えて、ご両親に病歴があるとしたら、弾性ストッキングで予防してみてもいいでしょう。静脈瘤のないうちに防ぐのも一つの方法です。症状の改善も期待できます。
編集部
むくみや足先の冷えも、関係しているのでしょうか?
宇野澤先生
そうした症状で悩んでいるとしたら、下肢静脈瘤かどうかに関わらず、医師に相談するといいでしょう。足先の冷えが静脈瘤だと思って来院された患者さんは、動脈の狭窄が原因でした。下肢静脈瘤だけでなく、ほかの病気も視野にいれて診断する必要があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
宇野澤先生
足のむくみやだるさの相談先は、「血管外科」をおすすめします。また、下肢静脈瘤の治療方法は確立されていて、日帰りでおこなうことができます。気になる足の症状があれば、お気軽にご相談ください。
編集部まとめ
「下肢静脈瘤と遺伝の関係は明らかである」とのことでした。そして、遺伝以外にも「発症へ至る傾向」がいくつも存在します。疑わしい症状が出た場合は、ほかの病気の可能性も考えられるので、血管外科を受診して解決策を提示してもらいましょう。
医院情報
所在地 | 〒270-0101 千葉県流山市東深井382-20 |
アクセス | 東武アーバンパークライン「運河駅」徒歩1分 |
診療科目 | 内科、小児科、循環器内科、心臓外科、血管外科 |