感染症専門医は日本の新型コロナ対策をどう評価する? 終息の見込みは?
※この記事は、2020年3月23日時点の取材データをもとに作成しております。
監修医師:
堀野 哲也(東京慈恵会医科大学附属病院感染症科 診療医長、
日本感染症学会感染症専門医)
編集部
感染症専門医として、日本政府の新型コロナウイルス対策をどのように評価していますか?
堀野先生
現時点では、重症者の急激な増加で医療機関が対応不能になっている状況はありませんので、現在行われているさまざまな対策が功を奏しているのではないかと思いますが、まだ新型コロナウイルス感染症が流行している状況ですので、評価は時期尚早だと思っています。
編集部
日本の感染者数の推移は、急激に感染者が増えている欧米諸国と比べて緩やかな傾向ですが、なぜでしょう?
堀野先生
検査数が各国で異なりますので感染者数で比較することは難しいですが、行政や保健所の方々が感染者の行動履歴を丹念に追跡して接触者対応をしていることや、主催者や多くの方がクラスターの発生しやすい行事の開催、参加を自粛して新たなクラスターを発生させないために取り組んでいること、さらに手指衛生や咳エチケットが遵守され、感染しないこと、感染させないことへの取り組みなどが重症者や死亡者数が急激に増加していないことにつながっているのだと思います。
編集部
新型コロナ日本の終息はいつになるでしょうか? 感染症専門医の予測は?
堀野先生
依然として新たな感染者が報告され、まだピークを迎えていない状況だと思いますので、いつ終息するのかは私には予測できません。
基本再生産数が2-3であるインフルエンザでは50-67%の方が免疫を獲得すると流行が阻止されると考えられていますが、新型コロナウイルス感染症は80%の方が他の方に感染させないとされますので、そこまで感染率が上昇する前に新たな感染者数は減少するのかもしれません。
一方、新型コロナウイルスは換気の悪い密閉空間に、多くの人が集まり、接近して人が会話や発声するような状況ではクラスターという形で一人の感染者から複数の人に感染が広がるということですから、あくまで個人的な考えですが、ピークを越えた後に収束と小規模あるいは局地的な流行を繰り返しながら終息に向かうのではないかと思います。
編集部
ワクチンの開発も進んでいるようですね。
堀野先生
ワクチンの開発は進んでいるようですが、人での安全性と有効性の確認にはもう少し時間がかかると思います。また、ワクチン投与の対象者を重症化のリスクの高い高齢者や基礎疾患を有する方とするのか、感染の広がりを抑制するために感染しても軽症のことが多い小児を含む若年層も対象とするのかについても検討されていると思います。
編集部
ワクチンの完成まで最短1年はかかると言われていますが、終息のためにはワクチンは必要不可欠になるでしょうか?
堀野先生
コロナウイルスが原因であるSARSの集団発生は、2002年11月に肺炎の患者が初めて報告され、2003年7月に終息宣言が出されています。このとき32の地域と国にわたり8000人以上の方に感染し、流行の中心は院内感染であったと報告されており、今回の新型コロナウイルス感染症の規模や市中で感染が広がっていることを考えると、ワクチンは必要だろうと思います。
編集部
中国・韓国は新規感染者が一時に比べかなり減ってきていて「ピークアウト」しているように見えますが、このような状態から再び感染者が爆発的に増えるようなことはありうるのでしょうか?
堀野先生
両国とも感染者数は多いものの、人口と対比すると中国は14億人中8万人(0.006%)、韓国は5100万人中8400人(0.016%)ですから、今回流行した地域以外で流行する可能性はありうると思いますが、小規模な流行に抑えるための対策を実行していると思います。
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