「乾燥肌によるかゆみ」の治し方はご存知ですか?乾燥肌になりやすい人の特徴も医師が解説!

乾燥肌によるかゆみの原因とは?メディカルドック監修医が原因や治し方・乾燥肌になりやすい人の特徴・考えられる病気・対処法・予防法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
池澤 優子(あい皮ふ科・アレルギー科クリニック)
目次 -INDEX-
「乾燥肌によるかゆみ」の原因と治し方
冬の乾燥の時期には乾燥肌に悩まされているという方も多いのではないでしょうか。ここで乾燥肌(ドライスキン)は、医学的には皮脂欠乏症や乾皮症(かんぴしょう)という状態を指します。
以下では、乾燥肌の原因や治すにはどのようにすればよいか、説明していきます。
乾燥肌によるかゆみの原因と治し方
皮膚の水分保持機能や表皮のバリア機能が損なわれることによって、皮膚が乾燥してしまうことを皮脂欠乏症(乾皮症)と呼びます。これは、一般的に乾燥肌と呼ばれる状態です。乾燥肌の方は、皮膚の表面が光沢を失い、キメが荒くなっています。そして、乾燥した肌の表面に白っぽい粉のような皮が剥がれ落ち、細かいひび割れが見えることがあります。かゆみを訴えることもあります。乾燥肌が軽度な場合には、セルフメディケーションでも対応可能なこともあります。例えば、ゴシゴシと体を洗うことを避ける、低刺激のボディソープを使う、保湿のためのボディクリームを使用するなどがあります。しかし、掻きむしってしまうほどのかゆみがあったりするような場合、治療が必要となります。まずは、一般的な医療用のワセリンや、ヘパリン類似物質などの保湿剤が用いられます。
乾燥肌によるかゆみとぶつぶつがある症状の原因と治し方
乾燥肌が進行すると、皮膚のなめらかさが失われ、キメが粗くなりぶつぶつとみえる状態になってしまう場合があります。このような場合には、前述のように医療用の保湿剤を使って治療を行います。保湿剤としてヘパリン類似物質クリームを使う場合には、一回あたりの目安としてFTU(finger-tip unit)が提唱されています。この1FTUは、口径5㎜のチューブから軟膏を、大人の人差し指の先端から第1関節まで押し出した量(約0.5g)です。ローションの場合は手のひらに1円玉大の量をのせると0.5gとなります。この量を、大人の手のひら2枚分(体表面積の2%程度)に塗るというものです。実際には、少しテカテカするくらいの量(テイッシュが張り付くくらい)塗ることを目安にすると良いでしょう。1日2回塗ると効果的です。
乾燥肌によるかゆみと湿疹がある症状の原因と治し方
さらに乾燥肌が進むと、掻きむしることで炎症が起こり、湿疹ができてしまうこともあります。このような場合には、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を、保湿剤と一緒に使って治療をします。かゆみと乾燥肌、湿疹ができてしまった場合には、自己流の治療では症状が悪化することがあります。市販薬で改善しない場合は早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
乾燥肌になりやすい人の特徴
乾燥肌になりやすい人の特徴には以下のようなものがあります。
幼児や高齢者
幼児や乳幼児は、まだ皮膚の生理機能が十分に発達していません。また、高齢者は血行が悪くなるため皮脂腺や汗腺といった皮膚機能の低下がみられます。汗は、皮膚の水分や免疫機能、皮膚温度に影響を与えることで、皮膚を健康な状態に保つために重要な役割を果たしています。こうした方たちは、皮膚の中でも角層と呼ばれる部位の水分保有量が低下しています。特に、肌機能の未成熟や低下による皮脂欠乏症の症状は、主に太ももの前、すね、足の甲側に起こることが多いです。背中や腕にもみられることがありますが、皮脂の分泌や発汗が多い顔や腋などの擦れる部分に起こることは少ないとされています。
不適切な入浴習慣がある
熱いお風呂に入ったり、熱いシャワーを浴びたりといった習慣があると、皮膚が乾燥する原因となることがあります。また、石鹸やボディソープの主成分は界面活性剤で、過度な使用やすすぎの腰は皮膚の乾燥を悪化させる可能性があります。またナイロンタオルやブラシで体を洗うと、皮膚の角層から水分を逃してしまうため、乾燥肌予防のためには使用は避けた方が良いでしょう。代わりに、石鹸やボディーソープをよく泡立てて、泡を手のひらにとり優しく洗う様にすることがおすすめです。
アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患がある
アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患があると、その症状の一つとしてかゆみを伴う皮膚の乾燥を呈することがあります。また、全身的な病気として、慢性腎不全や糖尿病の方も乾燥肌になる傾向がみられます。放射線治療を受けている方は、治療する部位の皮膚に乾燥が生じやすくなります。あるいは抗がん剤治療を受けている方は、薬剤の種類によっては皮膚の乾燥が生じる場合もあります。
すぐに病院へ行くべき「乾燥肌によるかゆみ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
かゆみが強く湿疹が広がっている場合は、皮膚科へ
乾燥肌が悪化し、かゆみが強く掻きむしってしまうことで、炎症が起こり、湿疹ができる皮脂欠乏性湿疹という状態になることがあります。この湿疹が広がると、炎症が悪化して膿を伴う皮疹(膿疱(のうほう))ができることなどもあります。このような場合には、早めに皮膚科を受診し、治療を受けるようにしましょう。
「乾燥肌によるかゆみ」の特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「乾燥肌によるかゆみ」症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激やアレルゲンに対して過剰な炎症反応を起こす慢性の皮膚疾患です。主な原因は遺伝的要因や環境要因とされ、他のアレルギー疾患(喘息、鼻炎、結膜炎、蕁麻疹)を合併することもあります。乾燥肌によるかゆみが強く、掻きむしることでさらに炎症が悪化し、症状が慢性化することがあります。特に肘や膝の裏、首や顔に症状が現れやすく、夜間のかゆみが強くなる傾向があります。治療には保湿剤やステロイド外用薬、免疫抑制剤のタクロリムス軟膏、抗ヒスタミン薬(内服)などが用いられます。ここ数年、乳幼児期から使用できる非ステロイド抗炎症薬であるJAK阻害薬やPDE4阻害薬の軟膏も広く治療に使われるようになりました。重症の場合は免疫抑制剤(内服)や生物学的製剤(注射剤)が適応となることもあります。皮膚のかゆみが持続し、日常生活に支障をきたす場合は皮膚科を受診し、適切な治療を受ける必要があります。
皮脂欠乏性湿疹
皮脂欠乏性湿疹は、皮膚の皮脂が不足することで乾燥し、ひび割れやかゆみを伴う湿疹を引き起こす皮膚疾患です。加齢や入浴時の過度な洗浄、乾燥した環境などが発症の要因となり、特に冬場は症状が悪化しやすい傾向があります。すねや腕、腰周りに症状が現れやすく、細かいひび割れや粉を吹いたような状態になるのが特徴です。治療には保湿剤の使用が第一選択となり、症状が強い場合はステロイド外用薬が処方されます。悪化すると掻き壊しによる二次感染のリスクもあるため、かゆみがひどくなる前に皮膚科を受診し、適切なスキンケアを行うことが大切です。
慢性腎臓病
慢性腎臓病などの全身疾患でも、皮膚の乾燥とかゆみが生じることがあります。慢性腎臓病は、腎機能が徐々に低下する病気で、進行すると体内の老廃物が適切に排出されなくなり、皮膚の乾燥とかゆみが生じることがあります。腎臓の機能が低下すると、体内の水分バランスが崩れ、皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚がカサカサになりやすくなります。また、尿毒素の蓄積が神経を刺激し、強いかゆみを引き起こすこともあります。特に背中や下肢にかゆみが出ることが多く、夜間に悪化することが特徴です。治療の基本は腎機能の管理であり、適切な食事療法や薬物療法が行われます。かゆみが強い場合には、保湿剤や抗炎症外用薬、飲み薬の選択的オピオイド受容体作動薬や抗ヒスタミン薬の使用が推奨されることもあります。腎機能が低下している可能性がある場合は、腎臓内科を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
「乾燥肌によるかゆみ」の正しい対処法は?
乾燥による肌のかゆみがある場合、まずは生活習慣を見直してみると良いでしょう。入浴後には、角層から水分が逃げやすくなるので、直後でなくても良いですが保湿剤を使うようにしましょう。また、衣服の選び方も重要です。吸湿性放湿性のよくない合成繊維の下着や羊毛素材やゴワゴワした素材の衣服の刺激によってかゆみが出ることがあるので、そうした刺激がない衣服を選ぶ様にしましょう。
冬は暖房によって室内の湿度も低下します。対策として、適宜加湿器などを使用しましょう。また冬は汗をかかなくなり、血行がわるくなるため、高齢の方や運動不足の方は特に乾燥しやすくなります。冬でも適度な運動や入浴を行うことが皮膚の健康ひいては体の健康にも大切です。ただし、夏でも、長時間日光を浴びると皮膚が乾燥しやすくなるという報告もあるので、過度に太陽光を浴びすぎない様にしましょう。
一時的な症状や軽度の乾燥肌に対しては、市販の保湿剤を使い、生活習慣改善を行うことで改善する場合もあります。しかし、改善が見られない場合や悪化する場合には、皮膚科できちんと診察を受ける様にしましょう。
「乾燥肌によるかゆみ」の正しい予防法は?
乾燥肌によるかゆみを予防するためには、先ほどまでにお伝えしたような入浴や運動などの生活習慣・加湿・保湿なども大切となります。また、太陽光からの紫外線は5月から8月にかけて強くなります。特に、10時から14時ごろには紫外線量が多くなります。この時間帯には、帽子を着用し、なるべく日陰を歩く様にし、外にいる時間が長い場合には日焼け止めを使うようにしましょう。
「乾燥肌によるかゆみ」についてよくある質問
ここまで乾燥肌によるかゆみについて紹介しました。ここでは「乾燥肌によるかゆみ」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
乾燥肌でボディークリームを塗ってもかゆみを引き起こす原因について教えてください。
池澤 優子(医師)
市販のボディークリームを塗ってもかゆみがある場合、保湿が不十分な場合や、使用する方にとっては刺激やかぶれになる様な成分が含まれている場合があります。他の製品や、症状が治らない場合には皮膚科受診をおすすめします。
まとめ
乾燥肌によるかゆみは、適切な保湿と生活習慣の改善で予防・対策が可能です。もし症状が改善しない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
「乾燥肌によるかゆみ」で考えられる病気
「乾燥肌によるかゆみ」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
乾燥肌によるかゆみは、単なるスキンケアの問題ではなく、皮膚疾患や全身性疾患のサインであることもあります。長引く場合や、他の症状を伴う場合は、皮膚科や内科での受診を検討しましょう。
「乾燥肌によるかゆみ」に似ている症状・関連する症状
「乾燥肌によるかゆみ」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 湿疹ができる
- フケ(頭皮)や細かい皮むけができる
- 肌がざらざらする
- 皮膚が赤くなる
- 色素沈着
- 掻きむしった跡が残る
乾燥肌によるかゆみが強く、掻きむしってしまうと、時に炎症や感染を伴い上記のような症状が現れることがあります。早めに皮膚科を受診しましょう。




