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「魚鱗癬(ぎょりんせん)」とは?原因・治療法・症状についても解説!

 更新日:2023/06/30
「魚鱗癬(ぎょりんせん)」とは?原因・治療法・症状についても解説!

魚鱗癬とは皮膚の表面の角層が非常に厚くなったり、皮膚のバリア機能に異常がみられたりする症状をきたす疾患の総称です。見た目が魚のうろこのようになるので魚鱗癬といわれています。この病気では先天性の場合と、血液系悪性腫瘍などに伴う後天性の場合があります。

先天性のものは原因となる遺伝子の異常によって、表皮の正常な状態が損なわれることで、病気になると考えられています。また原因の遺伝形式を明らかにすることも可能です。

今回は、そんな魚鱗癬の概要や症状、治療方法などを詳しく解説していきます。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

魚鱗癬とは

魚鱗癬とはどのような疾患でしょうか?

    魚鱗癬とは、全身性に鱗屑がみられる疾患の総称のことをいいます。生まれつきみられる先天性の場合と、血液系悪性腫瘍などに伴う後天性があるのが特徴です。

    血液系悪性腫瘍などに伴う後天性の場合は、原因となる基礎疾患の精査が必要となりその基礎疾患に基づいた治療を行います。ほとんどの場合は先天性で、はっきりとどの遺伝子形式が原因となるのかを明らかにすることが可能です。

    原因遺伝子や臨床症状、罹患部位などによって10 種類以上に分類される病気となっています。魚鱗癬のなかでは最も軽症な「尋常性魚鱗癬」もその中のひとつです。

魚鱗癬の症状

魚鱗癬の症状にはどのような特徴がありますか?

    魚鱗癬の症状は、角層が分厚くなる・カサカサに乾燥し異常が起こるなどで、いわゆるサメ肌といわれるものです。全身の皮膚が乾燥するので、粗くなって皮が剥けたり落ちたりしていきます。見た目が魚のうろこのようになるから魚鱗癬という名前になりました。

先天性魚鱗癬の症状

先天性魚鱗癬の症状はどのような症状がみられますか?

    生まれつきの先天性は先天的な遺伝子の異常によって、胎児の時から皮膚表面にある角層が非常に厚くなってしまいます。そのため生まれてきた新生児は、全身や広範囲の皮膚が厚い角質に覆われているのが主な症状の特徴です。

    そんな先天性魚鱗癬は、さらにケラチン症性魚鱗癬・道化師様魚鱗癬・道化師様魚鱗癬以外の常染色体劣性遺伝性魚鱗癬・魚鱗癬症候群などに分けられます。

尋常性魚鱗癬の症状

その他の魚鱗癬の症状はどのような症状がみられますか?

    尋常性魚鱗癬の場合、生まれてすぐには症状が出ていないのが特徴です。肌のバリア機能を担っているフィラグリンが遺伝子変異することによって、皮膚に異常が現れます。しかし、魚鱗癬のなかでは最も軽症です。

    潜在的な患者も含めると有病率は人口の約10%と推測されるほど意外とポピュラーな病気です。通常は乳幼児期に発症し、そのまま成長しても青年期以降によくなっていくことがほとんどです。

    四肢伸側や体幹において、皮膚が乾燥してしまうほか、下腿伸側や背部にも症状がよくみられます。夏季に軽快する場合もあるので、自覚症状がない人も中にはいます。

    フィラグリンが遺伝子の変異によって皮膚の乾燥が起こることから、同じく肌のバリア機能が要因で起こるアトピー性皮膚炎に合併することも多い病気です。

魚鱗癬の原因

魚鱗癬の原因はどのようなものがありますか?

    先天性の原因は、生まれつきの遺伝子の異常からくるものです。原因の遺伝子で病型が決まるので、検査してどの遺伝子が原因なのか特定をすることができます。

    遺伝子の異常によって皮膚が健康的な状態が保たれずに病気になります。それぞれ原因の遺伝子の違いで、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、葉状魚鱗癬、道化師様魚鱗癬などに分類されます。

    後天性では内臓悪性腫瘍が原因になることが多いです。ですが後天性はまれといわれています。

魚鱗癬の受診科目

魚鱗癬は何科を受診したらいいでしょうか?

    膚の異常が主な症状ですので、皮膚科を受診しましょう。

魚鱗癬の検査

魚鱗癬 検査

魚鱗癬ではどのような検査を行いますか?

    局所麻酔薬を使って患部を小さく皮膚を切り取ってから皮膚の状態を顕微鏡で詳しく観察することがあります。また、血液などからも遺伝子を取り出して調べる場合もあります。

    検査によってどの遺伝子が原因なのか特定が可能です。

魚鱗癬の治療

魚鱗癬の治療には、どのようなものがありますか?

    特効薬的なものはないので、症状が穏やかになるように働きかけることを目指して治療します。
    塗り薬、飲み薬、点滴などによる治療があり、どれにも一長一短あるので正しく理解して注意して治療を行いましょう。

塗り薬による治療

魚鱗癬 治療

魚鱗癬に塗り薬を使う場合どのような治療になりますか?

    症状を和らげるために、サリチル酸ワセリンや尿素剤などの角質をとかす薬、または保湿剤を塗り薬として使いますが、刺激感がある場合もあるので注意が必要です。なかでもサリチル酸ワセリンは気をつけましょう。たくさん使用していく中で発熱や吐き気、錯乱、脱水が起こることがあれば中毒症状の場合があります。

    その他の塗り薬では活性型ビタミンD3軟膏を使いますが、こちらも注意点があります。これはたくさん使用すると血液の中のカルシウム濃度が上がってしまうのです。塗り薬であっても医者や薬剤師の指示に従って使用することが大切です。

飲み薬による治療

魚鱗癬に飲み薬を使う場合どのような治療になりますか?

    飲み薬としてはビタミンA誘導体を使うことがあります。ビタミンA誘導体を摂取することによって考えられる注意点は、子どもの場合、成長障害です。また、唇の荒れが出る場合もあります。子どもに使う場合は特にその点に注意をし飲み薬を服用することが大事です。

    さらに、ビタミンA誘導体は、服用することで精子や卵子の形成に影響を及ぼします。そのため妊娠を希望する場合は、男女とも内服をやめた後に一定期間の避妊が必要となります。

点滴による治療

魚鱗癬に点滴を使う場合どのような治療になりますか?

    幼い子どもでは、日常生活に支障をきたすほどに手のひら、足の裏の皮膚が厚くなってしまうこともあります。その結果、身長や体重などの成長にも関わってしまうことがあり、栄養剤などの補給が必要になることも少なからずあります。

    幼い子どもは点滴による脱水症状の防止や体温管理、皮膚の細菌やウイルス感染の治療をすることもあります。

魚鱗癬の性差・年齢差

魚鱗癬の発症に性差や年齢差はありますか?

    性差や年齢差はありませんが、アトピー性皮膚炎患者の20〜50%はバリア機能に関わる因子であるフィラグリン遺伝子変異をもっているため、魚鱗癬を発症しやすいといわれています。

編集部まとめ

魚鱗癬は見た目に症状が出る病気なので、生まれつきの先天性の場合、気が付きやすい病気でもあります。バリア機能に異常が出るため、カサカサと乾燥しやすくそれによって皮膚の表面にある角質層が変性してしまういわゆるサメ肌といわれるものです。

比較的軽い症状の場合もあり、自覚症状がないこともありますが、中には成長を阻害するほどに皮膚に変化がみられることもあります。治療法には塗り薬や飲み薬、点滴などがありますが、それぞれ注意点もありますので、医師や薬剤師の指示のもと行いましょう。

肌の健康にはバリア機能が大きく関わってきます。そのバリア機能をつかさどるフィラグリン遺伝子が変異してしまうことによって皮膚に異常が現れるので放置することなく、少しでも症状が気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

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