「顔のかぶれ」は何が原因かご存知ですか?医師が徹底解説!
顔がかぶれるとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
湯地 義啓(医師)
日本精神神経学会認定精神科専門医。日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医。日本糖尿病協会登録医
NSCA-CPT(米国 NSCA 認定パーソナルトレーナー) メンサ会員
ハーバード大学 Blackburn Course in Obesity Medicine 修了
日本糖尿病協会登録医。DPAT(災害派遣精神医療チーム)隊員
日本精神神経学会。日本スポーツ精神医学会。日本精神神経薬理学会。
日本内科学会。日本肥満学会。日本臨床栄養学会。
「顔のかぶれ」の症状で考えられる病気と対処法
何かにかぶれた経験は多少なりともあるのではないでしょうか?
化粧品、ピアス、ネックレス、植物など原因物質と皮膚が接触して生じた湿疹のことを、俗称として「かぶれ」といいます。専門用語では接触皮膚炎といいます。
ただし、日常生活において使用される「かぶれ」は接触皮膚炎以外にも、皮膚炎、特に湿疹などで使われることが多いです。この点を踏まえながら、以下に解説していきたいと思います。
顔のかぶれで考えられる原因と対処法
顔がかぶれてしまった場合には、接触皮膚炎が最も考えられる疾患です。しかし、症状が類似しているものとして、ざ瘡(ニキビ)、伝染性膿痂疹、火傷、薬疹、水痘、帯状疱疹、急性湿疹、Dariel病(ダリエー病)などがあり、これらの疾患である可能性もあります。
赤みやかゆみ、腫れ、ぶつぶつなどの症状を伴うことがあり、下記の見出しでも解説いたします。患部にはできる限り手で触れず、清潔な環境を保つようにしましょう。
保湿管理は重要ですが、まずは医療機関を受診することが最も早く確実な対処方法となります。乳幼児や学童期であれば小児科もしくは皮膚科に行くようにしてください。思春期以降であれば皮膚科を受診してください。近くに小児科や皮膚科がない場合は内科を受診するようにしてください。高齢者でこれまでに水痘にかかったことがあれば帯状疱疹の可能性がありますので、その旨を医師に伝えるようにしてください。
顔がかぶれて腫れているで考えられる原因と対処法
顔がかぶれた際、徐々に膨れ上がってくることがあります。これは水疱や膿疱が生じているためと考えられます。
水疱は5㎜未満の大きさで、透明な薄い皮膜で液体を包んでおり、これが皮膚を持ち上げて起こります。水疱は火傷や虫刺されや帯状疱疹などでみられます。
膿疱は皮膚の中に膿(白血球の塊)が溜まって、皮膚が隆起することをいいます。
膿疱はざ瘡(ニキビ)、伝染性膿痂疹、薬疹などでみられます。
顔がかぶれて赤い症状で考えられる原因と対処法
顔がかぶれて赤い時は、紅斑である可能性があります。
紅斑は皮膚の毛細血管が拡張したことにより皮膚の色が赤く見えてしまっている状態のことをいいます。紅斑がみられる病気としては火傷、薬疹、水痘、帯状疱疹などがあります。
顔がかぶれてブツブツしている症状で考えられる原因と対処法
顔がかぶれてブツブツしている時は、皮膚表面で過剰な角化が起こっていたり、表面より少し下の真皮と呼ばれる部分が炎症を起こしてしまい1㎜未満程の複数の小さな隆起が生じている可能性があります。この場合は慢性湿疹や痒疹、水疱を伴っていたりすると急性湿疹が考えられます。
また、10代から20代で顔、脇、前胸部など汗をかきやすい部分に暗褐色の盛り上がりがあるとDariel病(ダリエー病)が考えられます。
すぐに病院へ行くべき「顔のかぶれ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
薬を変えてから症状が悪化している場合は、皮膚科や内科へ
服用しているお薬が原因で顔がかぶれたような皮膚炎が生じることがあります。初期はお腹、背中や胸などの体幹にでることが多いですが、そのまま服用を続けていると全身に広がっていき、ひどい場合は水疱を伴うようになり、関節痛、筋肉痛、発熱を生じることもありますので、お薬を服用中に心当たりのない顔のかぶれ等が生じた場合は、早めに皮膚科や内科などの医療機関を受診するようにしてください。
顔のかぶれた部分に熱感、痛みを伴い、悪寒や発熱などの全身の症状を伴う場合は、皮膚科や内科へ
顔のかぶれた部分に熱感、痛みを伴い、悪寒や発熱などの全身の症状を伴う場合、蜂窩織炎の可能性があります。蜂窩織炎は怪我をした部分などから細菌が入り込み、感染が全身へと広がることで生じます。この場合、部分的な治療ではうまくいかないため、抗生剤を服用し全身に広がった細菌を退治する必要性があります。急速に悪化するため、蜂窩織炎が疑われるような場合はすぐに皮膚科や内科などの医療機関を受診してください。
受診・予防の目安となる「顔のかぶれ」症状のセルフチェック法
- 顔のかぶれ以外に熱感や痛みがある場合
- 顔のかぶれ以外に悪寒や発熱などの全身の症状がある場合
- 顔のかぶれ以外に関節痛や筋肉痛がある場合
「顔のかぶれ」の症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「顔のかぶれ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
尋常性ざ瘡
尋常性ざ瘡は最も身近な病気であり、いわゆるニキビのことです。
ニキビは思春期に多い病気です。思春期に男性ホルモンの分泌が亢進して皮脂の分泌が多くなります。皮脂の過剰な分泌によって、アクネ桿菌という細菌が繁殖しやすくなります。アクネ桿菌が皮脂を分解する作用によって皮膚が刺激されて、角栓が毛穴を塞いでしまい皮脂がどんどん溜まるために、細菌が増殖します。増殖した細菌を退治しようとして、免疫細胞(好中球など)が働き炎症を生じた結果、丘疹や膿疱(=ニキビ)を作ってしまいます。
ニキビの対処方法は、1日1,2回程度、石鹸を泡立てて摩擦を加えないようにしながらゆっくりと洗顔を行うこと、可能な限りニキビの部分には化粧品など刺激となるものを使用しないこと、脂質の摂取を控えることなどがあります。
早めにニキビを治したい方は、抗生剤の内服や塗り薬の使用を勧めます(塗り薬よりも内服薬の方が治療効果は早いです)。また、「にきび」は治ったけれど一部ボツボツが残ったという場合は、レーザーアブレーションやフラクショナルレーザーなどが有効です。一つニキビが顔にできた時、まだ肉眼では見えていないにきびがたくさん隠れ潜んでいる可能性があります。見た目が気になる方、なかなかニキビが治らない方、何度も繰り返している方は、早めに皮膚科や美容皮膚科などの医療機関を受診するようにしましょう。
酒さ
酒さというのは、まるでお酒を飲んで顔を赤くしたかのように、眉間、鼻、頬を中心として発赤が生じている状態です。頬や鼻などの特に赤い部分を鏡でよく見ると、血管が拡張して浮き上がって見えます。
発症の詳しいメカニズムは解明されていません。酒さを血管が拡張することが悪化要因であると言われています。カフェイン、アルコール、香辛料、寒暖差(寒い所から暖かい所へ)、ストレスなどが要因になります。
日ごろからできる対処方法は、上記の食べ物の摂取を控えることや、適度にストレス発散を行うことです。治療には、飲み薬として抗生剤や顔のダニを退治する外用薬が使われます。ただし、鼻や頬などの特に赤く、血管が拡張しているのが透き通って見える部分に対してはお薬で治療を行うことが難しいため、レーザー治療などを行うこともあります。多少の赤みであっても、酒さは年齢と共に進行するので、できるかぎり早めに病院を受診しましょう。
接触皮膚炎
接触皮膚炎には2つのパターンがあります。
一つ目は原因物質と皮膚が接触し、その物質がもつ刺激作用によって皮膚が障害されるもの、これを刺激性接触皮膚炎と呼びます。二つ目は原因物質と皮膚が接触した際にアレルギー反応が引き起こされて生じるアレルギー性皮膚炎です。ただ、日常生活において使用される「かぶれ」は上記以外の皮膚に炎症が行った皮膚炎、特に湿疹などで使われることが多いです。
皮脂欠乏性湿疹
皮脂欠乏性湿疹は、皮膚の中に水分をためこむ機能や、皮脂や汗によって皮膚にフタをする機能が低下し、乾燥状態となり、かさつきやかゆみを生じます。かゆみがある部分を掻いてしまい、赤いブツブツができるようになります。皮脂欠乏性湿疹の症状を少しでも緩和するために、乾燥肌にならないようにすることが重要です。そのため、化粧水、乳液、クリームなどをしっかりと行い、暖房器具を使う際は加湿器を使うなどして温度管理とあわせて湿度管理が重要となってきます。湿度は知らず知らずのうちに下がっていることもあるので、温度計と一体になった湿度計を用意するといいでしょう。また、過度な洗顔は皮脂を洗い流し過ぎてしまうので控えるようにしましょう。また、タオルで顔や体を拭く際はポンポンと上からソフトにタッチするようにしてください。かゆみの強い湿疹に対してはかゆみをおさえる抗アレルギー薬の使用や、ステロイド剤を使用し炎症を抑えます。抗アレルギー薬やステロイド剤は市販されていますが、生じた部分や程度によって使うお薬、使ってはいけないお薬、使用日数が異なるので、可能な限り皮膚科を受診するようにしてください。医師に市販薬で対応しても大丈夫かどうかを相談するのも良いでしょう。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎では、皮膚の中に水分をため込む力が弱くなったことにより、皮膚が乾燥しやすくなり皮膚のバリア機能が低下します。バリア機能が低下すると、微生物や物質が皮膚の中に侵入しやすくなります。微生物や特定の物質が皮膚の中に侵入すると、それに対して体がアレルギー反応を起こして、微生物や有害な物質を退治しようとします。この退治する力が強すぎて、顔、首、肘、膝裏などさまざまな部位で炎症を起こし、強いかゆみをひきおこしてしまうのです。日常の対処方法としてはスキンケア、特に保湿が重要となってきます。保湿剤としては、ヘパリン類似物質、尿素、ワセリン、亜鉛華軟膏などを肌状態に応じて使い分けしていきます。ただし、多くの場合、保湿だけでは病状をおさえることができないことが多く、重症化しないようにステロイドの塗り薬を使います。また、全身のかゆみが強いため、抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)を併せて内服します。ステロイドの長期使用は副作用が生じやすくなりますが、病状によってはステロイドの使用が結果として良好なものとなります。現在はステロイド一つをとっても幅広い治療の選択肢があります。アトピー性皮膚炎を疑った際は保湿だけで様子を見るのではなく、早期に皮膚科を受診するようにしてください。
「顔のかぶれ」症状の正しい対処法は?
まずは、「かぶれ」なのか「かぶれ」によく似た他の症状なのかを見極める必要があります。
「かぶれ」の場合、最近使い始めた金属類や衣服など肌に直接触れるものによって生じていることが多いため、そのようなものに心当たりがあれば使用を控えるようにして様子を見てください。そのようなものに心当たりがなければ、「かぶれ」ではなく、他の病気である可能性があります。「かぶれ」かどうかわからないような場合は過度な洗顔を避ける、化粧品などの使用を少なくとも該当部位には使用しない、十分な睡眠(特に起床時間を一定にしてリズムを作る)をとるようにしてください。炎症を起こした部分の治りを早くする、炎症が収まった後の色素が沈着しないようにするためにも、しっかりと保湿を行うように心がけてください。ただし、かぶれた部分が熱をもっている、水疱を形成している場合は蜂窩織炎や薬疹の可能性もありますので、早期に医療機関へ受診するようにしてください。
「顔のかぶれ」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「顔のかぶれ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
顔がかぶれているときのスキンケアはどうすれば良いですか?
湯地 義啓 医師
顔がかぶれているときは、肌を攻撃する因子が、肌を守ってくれる因子を上回った場合です。
ですので、肌を攻撃する因子をできる限り避け、肌を守ってくれる因子をできる限り取り入れるようにしなければなりません。日常のスキンケアでできることは、タオルはもちろんのこと、石鹸であってもこすりすぎないようにするために、しっかりと泡立ててから洗うようにしましょう。熱いお湯での長時間の入浴は、保湿環境を作るのに最低限必要な皮脂まで溶かしてしまいますので控えるようにしてください。
また、保湿は非常に重要ですが、保湿剤選びは慎重に行わなければなりません。高価な商品がよい商品ではないことをしっかりと頭の中に入れておいてください。尿素入りの保湿剤はかぶれている部位などには刺激が強いので控えるようにしてください。冬場であっても紫外線は避け、前髪などは肌にふれないようにしてください。髪の毛の先端が目に入った時に痛みを覚えるのと同じように、肌にも刺激となりますので注意してください。
ストレスで顔がかぶれることはありますか?
湯地 義啓 医師
ストレスをため込んだ生活をしていると良質な睡眠がとれなくなり、免疫力が低下します。良質な睡眠がとれていない状態が続くと、肌の新陳代謝(ターンオーバー)がうまく機能しなくなります。通常、理想的な肌の細胞は28日程度で入れ替わっていきますが、これが35日、40日とどんどん遅くなり、古くなった細胞がお肌にたまりやすくなります。古くなった細胞は本来の保湿機能を果たせず、乾燥肌になりやすくなってしまいます。これにより、肌バリア機能が低下し、微生物などが侵入しやすくなります。さらに、免疫力が低下しているのでお肌に入った微生物が繁殖しやすくなってしまいます。またストレスは自律神経のバランスも悪くしてしまい、お肌の表面をバリアする皮脂の分泌も正常に機能しなくなるのです。ですので、お肌にとってストレスをためないことは重要であり、そのためには十分な睡眠、特に起きる時間を一定にして睡眠リズムが崩れないようにすることが重要になってきます。
まとめ 顔かぶれが気になる時は皮膚科を受診!
お肌のトラブルは自分自身の体に起こっているトラブルを教えてくれる最初の信号です。
患者様の中には、お肌の調子が悪くなった時、「こんなことで本当に受診してよいのか」と悩み、受診を控える方がいらっしゃいます。もし、車の運転の際にブレーキとアクセルの効き具合がなんとなくだが悪くなってきている気がするという時、そのまま放っておくことはできないでしょう。そのような時はプロの整備士さんに診てもらうはずです。普段目にしているお肌だから私にでもわかるのではなく、早めに皮膚科の専門医に診てもらうようにしてください。
「顔のかぶれ」症状で考えられる病気
「顔のかぶれ」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
一見するとかぶれに似ている症状を呈する病気はたくさんあります。改善しない場合には早めに医療機関を受診することをお勧めします。
「顔のかぶれ」に似ている症状・関連する症状
「顔のかぶれ」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 口の中が痛い
- 発熱
- 顔が赤い
- 顔にぶつぶつがある
- 顔が腫れている
- 顔に水ぶくれがある
まずは、その症状がかぶれなのかどうかを検討する必要があります。かぶれであれば、皮膚に直接触れる何らかの原因があることが多いため、思いたるものがあるかどうかから検討し、受診した際に医師へ相談してください。
・新しい皮膚科学第3版