「へその下が硬い」のは「便秘」が原因?医師が対処法も徹底解説!
へその下が硬いとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
「へその下が硬い」症状で考えられる病気と対処法
へその下に何か硬いものがある、となると何か気になりますよね。今回は臓器の位置関係などから考えられる疾患について解説していきます。
へその下が硬い症状で考えられる原因と対処法
へその下が硬い症状の場合、便秘症の可能性が考えられます。腸管内に糞便が溜まっているために、腸が張って硬くなり、へその下あたりに硬さを自覚している可能性があります。
すぐに解消するためには浣腸を用いて排便を促すことですが、強い腹痛がないのであれば無理に出す必要はなく、腹部を温めたり、腸が活発に動くように無理のない範囲で運動を心がけると効果的です。また予防策として、食物繊維や水分の摂取量を増やすと良いでしょう。
もしこれらの対応を行っても改善しない場合は、一度医療機関で調べることをお勧めします。受診すべき診療科は消化器内科、一般内科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。
へその下が硬くしこりがある症状で考えられる原因と対処法
へその下に硬いしこりがある場合、腹部大動脈瘤の可能性があります。詳細は後述しますが、腹部大動脈瘤とはお腹を通過する大動脈の壁にできた瘤(こぶ)です。
大きさは様々で、大きくなるほどこの瘤が破裂するリスクは高まりますが、瘤自体では自覚症状はありません。ただしへその下を触って“硬いしこり”だと認識できる場合は、ある程度の大きさになっている可能性があります。体表から触知できる大きさの場合は、瘤の拍動を感じることはあるかもしれません。
腹部大動脈瘤への対応で重要なのは、早期発見と早期管理です。この病気は自覚症状がないため、健診などで偶然指摘されることの多い病気です。この際に一度、しっかりと破裂リスクの評価をしておくことが重要です。
受診すべき診療科は循環器内科や心臓血管外科です。腹部大動脈瘤の存在を指摘されただけでは緊急性はありませんが、できるだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「へその下が硬い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
激烈な腹痛を自覚した場合は、救命救急センターへ
へその下に硬いしこりを以前から自覚していて、かつ激烈な腹痛を自覚された場合、先述の腹部大動脈瘤が破裂した可能性があります。これは非常に危険で致死率の高い状況です。この時、おそらく自覚された本人が救急要請をすることは不可能なため、周囲の方が要請しましょう。一刻を争う事態ですので、受け入れ可能な高度救命救急センターでいち早く治療を開始してもらえるようにすることが重要です。救急隊に対して、搬送後の見舞い、通院のことを気にされて家の近くの病院を指定されるご家族がしばしば見受けられますが、致死率も非常に高い病気なのでその後のことを考えている場合ではありません。最速で治療開始できるところへ搬送依頼してください。
受診・予防の目安となる「へその下が硬い」ときのセルフチェック法
- へその下が硬い以外にお腹に張りがある場合
- へその下が硬い以外に吐き気がある場合
- へその下が硬い以外に腹痛がある場合
「へその下が硬い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「へその下が硬い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
便秘
便秘とは、医学上の定義では、「本来排出すべき糞便を十分に快適に排出できていない状態が続き、日常生活に支障が生じている状態のこと」を指します。原因は食物繊維摂取量の減少、ストレス、運動量の減少や高齢化などの環境要因があります。またパーキンソン病などの神経疾患、うつ病などの精神疾患、糖尿病(自律神経障害を伴うもの)や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、そして切れ痔や炎症性腸疾患、大腸の腫瘍による腸の閉塞といった消化器の疾患が原因で、便秘になることもあります。
ご自身でできる対処法は、食物繊維や水分の摂取を増やし、しっかりと運動することで町の動きも活発にすることですが、それでも改善がない場合は、先述の病気が隠れている可能性があるため、一度病院受診をお勧めします。受診すべき科は消化器内科や一般内科です。原因検索をしつつ、便秘を改善する内服薬を飲むのが一般的な治療方針になります。
腹部大動脈瘤
大動脈瘤とは、「大動脈の壁の一部が全周性、または局所性に拡大または突出した状態」と医学上は定義されます。つまり、大動脈という人体で最も太い血管の壁に瘤(こぶ)ができた状態です。大動脈は太く、そして長いため心臓から出た後、胸を通って腰まで下がってきます。そのため胸部大動脈、腹部大動脈と分類されます。腹部大動脈瘤は、お腹の部分を通る大動脈に発生した瘤となります。
大動脈瘤ができる原因は、動脈硬化、外傷、炎症、感染、先天的なものなどがありますが、ほとんどが動脈硬化によるものとされています。
大動脈瘤が存在するだけでは自覚症状がない場合があります。大動脈瘤が大きいことによる周囲臓器への圧迫症状が出ることもありますが、頻度は多くありません。ただし、大動脈瘤が破裂した際は激烈な痛みに加えて大出血によるショック状態に陥ります。また破裂した際は命に関わる危険な疾患です。
診断は超音波検査やCTなどの画像検査で行われます。瘤があるだけでは自覚症状もないため、偶然見つかることも多いです。サイズが小さい場合は血圧管理を行いながら経過観察を行うこともありますが、サイズが大きい場合や瘤の形が歪で、破裂のリスクが高い場合は外科手術であったりカテーテルを用いた治療が行われることもあります。破裂した場合は即緊急手術となります。
検診などで大動脈瘤の存在を指摘された場合は、循環器内科、心臓血管外科などの専門機関で定期的な観察を行い厳重に管理すべきです。できるだけ早めに受診してリスク評価をしてもらいましょう。
「へその下が硬い」の正しい対処法は?
へその下の硬さが便秘によるものであった場合は、便秘への改善策が有効です。
まず副交感神経優位のリラックスした状態が排便につながりますので、睡眠時間をしっかり確保して強度の高くない運動を行う、ゆっくり入浴して体を温める、などの方法を試してみましょう。
また腸内環境を整えることも重要です。食物繊維や水分を多く摂取しましょう。市販の整腸剤も用法用量を守っていれば問題ありません。
この2つに取り組んでも症状が改善しない場合は、症状の原因を再び調べる必要がありますので、医療機関で相談してみましょう。
「へその下が硬い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「へその下が硬い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
へその下が硬いときは何科を受診すればいいですか?
中川 龍太郎(医師)
まずは消化器内科や一般内科を受診しましょう。
へその下が硬いのですが放置しても大丈夫ですか?
中川 龍太郎(医師)
1ヶ月様子を見て全く改善がなければ、一度医療機関を受診してください。
へその下の臓器は何ですか?
中川 龍太郎(医師)
腸管や大動脈が存在します。
まとめ へその下が硬いときは腹部大動脈瘤に注意
へその下が硬い時、多くの場合は便秘のことが多いですが、まれに腹部大動脈瘤が見つかることがあります。また動脈硬化が影響しますので、年齢が高くなるにつれて、そして喫煙歴のある人はこの病気になる確率も高くなります。
65~75歳の男性の有病率は喫煙なしで2%、喫煙者は6~7%と報告されています。これは65~75歳男性の非喫煙者でも100人に2人、喫煙者で100人中7人は腹部大動脈瘤が見つかるということです。小さい確率ではないので、大丈夫だろうと油断せず定期的なチェックをお勧めします。
「へその下が硬い」症状で考えられる病気
「へその下が硬い」から医師が考えられる病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
- 腹部大動脈瘤
- 大動脈瘤破裂
消化器系の病気
- 便秘症
へその下の痛みといっても腸管だけでなく大動脈という血管からの症状ということもあり得ます。症状が改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
「へその下が硬い」に似ている症状・関連する症状
「へその下が硬い」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「へその下が硬い」症状のほかに上記の症状が見られる場合も、便秘症や腹部大動脈瘤の可能性は考えられます。腹痛や吐き気などの症状が強くみられる場合は、一度医療機関を受診して詳しく調べてもらいましょう。