「かゆみのない丸い湿疹」ができる原因はご存知ですか?医師が対処法も徹底解説!
かゆみのない丸い湿疹で、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
「かゆみのない丸い湿疹」症状で考えられる病気と対処法
かゆみのない丸い湿疹が体に出たことはありませんか。湿疹というと痒みを伴うものが想像しやすいものですが、かゆみが出ないものも存在します。考えられる疾患について説明いたします。
顔のかゆみのない丸い湿疹の症状で考えられる原因と対処法
顔にかゆみのない丸い湿疹が出現した場合、シェーグレン症候群の可能性が考えられます。シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは、本来、細菌やウイルスといった外敵から身を守るための免疫反応が、自分自身の体を敵とみなして反応してしまう疾患のことです。
シェーグレン症候群では、主に唾液腺や涙腺といった部分が障害されることが多く、ドライアイや口・鼻の乾燥が特徴的な症状と言われています。顔面にかゆみのない紅斑が出現することも重要な所見です。年齢層は50歳代に多いのですが、子供から80歳の老人まで発症することも稀ながらあります。男女比は男1人:女17人で、女性に多く発症します。
ご自身でできる対処法はありませんので早めに医療機関で精査を受けましょう。受診すべき診療科は膠原病内科です。緊急性はないので日中に受診してください。
赤ちゃんのかゆみのない丸い湿疹の症状で考えられる原因と対処法
赤ちゃん(特に新生児)でかゆみのない丸い湿疹が出現した場合、新生児エリテマトーデス(新生児ループス)の可能性が考えられます。新生児エリテマトーデスとは、母体の自己抗体(抗 SS−A 抗体・抗 SS−B 抗体)が胎児や新生児に作用して全身性エリトマトーデスという自己免疫疾患に似た症状を引き起こす病気です。胎児期から高度の徐脈(脈が異常に遅くなること)を起こす先天性完全房室ブロック、丸い皮疹(顔面に多い)、血球減少(血液の一部の成分が不足する状態)、肝機能異常などがあります。心臓の症状以外は基本的に一時的なもので生後一年までに自然治癒します。ただし先天性完全房室ブロックでは自然治癒は難しく、ほとんどがペースメーカーの植え込みが必要となります。(しかし抗 SS-A 抗体陽性の全身性エリテマトーデスの妊婦からこの心疾患を有する胎児が出生するリスクは1%と、それほど確率は高くないです。)
ご自身でできる対処法はありませんので、赤ちゃんのお顔の丸い湿疹に気づいたら、小児科を受診しましょう。またこの疾患の場合、母親からの遺伝になるため、母の検査も重要になります。合わせて受診を検討しましょう。緊急性はありませんが、早期発見、早期治療が重要ですので早めに受診してください。
すぐに病院へ行くべき「かゆみのない丸い湿疹」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
体重減少を伴う場合は、総合内科へ
かゆみのない丸い湿疹は環状紅斑と言い、詳細は後述しますが、ほとんどは良性であることがほとんどです。しかし稀に悪性腫瘍由来で発生していることがあります。湿疹だけでそれを見極めることは皮膚科専門医でないと難しいですが、短期間での急激な体重減少は悪性腫瘍を疑う根拠になります。もしどちらも見られる際は、皮膚科だけでなく総合内科も受診してください。
受診・予防の目安となる「かゆみのない丸い湿疹」のセルフチェック法
- かゆみのない丸い湿疹以外に口渇症状がある場合
- かゆみのない丸い湿疹以外にドライアイがある場合
- かゆみのない丸い湿疹以外に体重減少がある場合
「かゆみのない丸い湿疹」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「かゆみのない丸い湿疹」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
環状紅斑
環状紅斑とは輪っか状に紅く出現したやや隆起した病変のことを指します。これは病名ではなく、症状の名前に当たります。環状紅斑を呈する原因疾患は様々で、自己免疫性疾患や感染症、悪性腫瘍によるものなどがあります。ただし、これらの疾患が原因で起こるものは非常に稀であり、ほとんどの環状紅斑は遠心性環状紅斑という病気です。そしてこの遠心性環状紅斑が出現する原因については判明していません。
典型的な症状は、かゆみがないことや、季節の変わり目に出現することであり、再発を繰り返す良性の疾患です。
何度も症状が出たり消えたりを繰り返す場合は、一度医療機関を受診してください。専門科は皮膚科です。何らかの原因から環状紅斑が出現していないか調べながら、抗アレルギー薬の内服やステロイドの塗り薬を用いることが一般的です。緊急性はないので日中に受診してください。
貨幣状湿疹
貨幣状湿疹とは、その名の通り湿疹の形が貨幣(コイン)に似ている湿疹を指します。
かゆみは認められるので今回のテーマからやや外れますが、特徴的な丸い湿疹を認める病気です。貨幣状湿疹(コイン状湿疹)が出現する原因の多くはアトピー性皮膚炎によるものと考えられています。乾燥肌が元々ある方がかゆみのある部分を何度も掻いてしまうことで、小さなびらん(傷で皮膚がジクジクした状態、陥凹しており表皮という皮膚表面が欠損している)を多数作ってしまい、丸い形状にどんどん拡大するとされていますが、詳細なメカニズムは不明です。
受診すべき診療科は皮膚科です。ステロイドの塗り薬が非常によく効きます。適切な塗り薬を処方してもらいましょう。緊急性はありませんが、適切な治療を行わないと悪化する一方ですので、早めの日程で受診してください。
「かゆみのない丸い湿疹」の正しい対処法は?
かゆみが少しでもある場合は、痒みを取り除いたり炎症を抑えるためにステロイドの塗り薬や抗アレルギー薬を内服しましょう。これらは市販のものでも問題ありません。ただし顔面には塗らないように注意しましょう。
「かゆみのない丸い湿疹」の症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「かゆみのない丸い湿疹」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
かゆみのない丸い湿疹は自然治癒しますか?
中川 龍太郎(医師)
先述の遠心性環状紅斑の場合は自然治癒することが多いです。そして最初もしばしば見られます。
かゆみのない丸い湿疹を早く治すためにできることはありますか?
中川 龍太郎(医師)
スキンケアが一定の効果を見込めるかもしれません。乾燥した皮膚は痒みを発生しやすく、現時点で湿疹にかゆみがなくても、この乾燥のせいでかゆみが出現する可能性があります。保湿剤を十分に使いましょう。
まとめ かゆみのない丸い湿疹はシェーグレン症候群の可能あり
湿疹となると皮膚科の病気と捉えがちですが、自己免疫疾患(膠原病内科の病気)でも皮膚症状は多く見られます。安易に自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。
「かゆみのない丸い湿疹」症状で考えられる病気
「かゆみのない丸い湿疹」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚系の病気
- 遠心性環状紅斑
- 貨幣状湿疹
膠原病内科の病気
- シェーグレン症候群
- 新生児ループス
湿疹という皮膚症状ですが、原因として自己免疫疾患も可能性に上がります。症状が繰り返す場合は、医療機関を受診してください。
「かゆみのない丸い湿疹」に似ている症状・関連する症状
「かゆみのない丸い湿疹」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「かゆみのない丸い湿疹」以外にこれらの症状がある場合も、シェーグレン症候群や新生児ループスなどの自己免疫疾患が候補に上がり、精査が必要です。体重減少もみられる場合などもふくめ、複数の症状が該当する場合は早めに受診しましょう。