「陰部にしこりやできもの」ができる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
陰部にできものやしこりがある時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
森田 知世(医師)
「陰部にできものやしこりがある」症状で考えられる病気と対処法
陰部にしこりがある、歩くとすれて痛い、できものがどんどん増えている、などの症状はありませんか?このような症状は人にも相談しづらく、何科を受診したらよいか悩みますよね。陰部のできものやしこりの原因は様々で、中には医療機関での治療が必要なものもあります。今回は陰部にできものやしこりがある場合に考えられる原因と対処法について解説していきます。
陰部にできものやしこりがある症状で考えられる原因と治し方
陰部のできものやしこりで頻度の高い疾患は、毛嚢炎や粉瘤で、いわゆる”おでき“です。毛嚢炎は毛穴の奥の方が炎症を起こしている状態で、毛穴に一致した赤みのあるしこりとして触れます。外陰部が蒸れたり、カミソリで毛を自己処理したことをきっかけに発症します。このようなおできは通常数日で治りますが、膿がでたり痛みがある場合には、抗生剤による治療が必要となる可能性がありますので、皮膚科を受診しましょう。
粉瘤は皮下にしこりとして触れるできる良性のできもので、外陰部では特に下着のラインに沿って股の付け根にできることが多いです。できものの中央に黒い点があることが多く、そこからにおいのある角質や垢の塊が出てくることがあります。通常、痛くない場合が多いですが、炎症がおきていると赤みや痛みを伴います。その場合、抗生剤を内服したり切開などの外科処置が必要ですので、皮膚科を受診しましょう。
陰部に痛みのあるできものやしこりがある症状で考えられる原因と治し方
陰部に痛みのあるできものがある場合、性器ヘルペスの可能性があります。性器ヘルペスは性感染症のひとつですが、ウイルスが付着した便座やタオルの共有でうつることもあり、男女ともに発症します。主な症状は、外陰部やおしり周りの痛みと水ぶくれ、浅いびらんです。性器ヘルペスは一度感染すると生涯にわたり体内(神経節)に潜伏し、疲労や風邪などでご自身の免疫力が低下したときに、くり返し同じ場所に再発します。症状が出ている時に抗ウイルス薬を飲むことで早く治すことができます。また再発を繰り返す場合には、毎日お薬を飲む方法やあらかじめお薬をお渡ししておく方法もありますので、皮膚科や泌尿器科、婦人科を受診しましょう。
陰部に痛くないできものやしこりがある症状で考えられる原因と治し方
陰部に痛みのないできものがある場合、尖圭コンジローマの可能性があります。尖圭コンジローマは性感染症で男女ともに発症します。初めは小さないぼが外陰部やおしり周りにでき、かゆみや痛みなどの症状はないため、気付かないこともあります。放置すると徐々にいぼの先がとがるように大きくなり、カリフラワーや鶏のとさかなどと表現される独特の形状になります。また、大きくなると下着でこすれて出血や痛みを伴う場合もあります。治療は、塗り薬や外科的切除がありますが再発率の高い疾患です。女性の場合は子宮頸癌との関連も報告されていますので、早めに泌尿器科や婦人科、皮膚科で治療を行いましょう。
陰部にかゆみのあるできものやしこりある症状で考えられる原因と治し方
陰部にかゆみを伴うできものがある場合、硬化性萎縮性苔癬の可能性があります。主に女性のデリケートゾーンに多くみられる疾患で、強いかゆみが特徴です。初期は水ぶくれやびらん、出血といった症状から、徐々に強いかゆみのあるぶつぶつや皮膚の表面が分厚く硬くなり、白色~象牙色に変化していきます。この病気の原因はまだはっきりわかっていませんが、放置すると性交渉や排せつに影響がでたり、外陰にできる皮膚癌の発生墓地になります。治療はステロイドの塗り薬や外科治療による切除がありますが、難治なことも多いため、このような症状があれば皮膚科や婦人科などの医療機関を受診しましょう。
男性の陰部にできものやしこりがある症状で考えられる主な原因と治し方
陰部のできものやしこりのうち、男性に特徴的なものとしてフォアダイスがあります。フォアダイスは成人男性の半数以上にみられる陰茎の白い小さなぶつぶつのことで、皮膚にある皮脂腺が表面に透けてみえている状態です。フォアダイスは病気ではなく生理現象で、女性の小陰唇にみられる場合もあります。性病に間違えられることもあり整容面で気になる場合には、レーザーや電気メスでの治療ができますので、泌尿器科で相談しましょう。
女性の陰部にできものやしこりがある症状で考えられる主な原因と治し方
女性のデリケートゾーンにできるできものやしこりのひとつに、バルトリン腺嚢胞があります。バルトリン腺とは、膣の入り口付近にあるごく小さい腺のことで、性交時に潤滑液を分泌しており、通常はしこりとして触れることはありません。しかし、バルトリン腺につながる管がなんらかの原因でつまることで、分泌液がたまってバルトリン腺嚢胞となります。バルトリン腺嚢胞は、通常はしこりを触れるだけで痛みはありませんが、座る動作や下着の圧迫で大きく腫れたり、感染して膿がでたりすることがあります。治療は炎症が軽度であれば、抗生剤を内服します。大きく腫れたり炎症を繰り返す場合には、外科的な治療が必要になりますので、婦人科や泌尿器科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「陰部にできものやしこりがある」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
できものの腫れや痛みが数日続く場合や膿が出る場合、水脹れと痛みを繰り返す場合、イボが増えたり大きくなる場合は、皮膚科・泌尿器科・婦人科へ
できものの腫れや痛みが数日続く、膿が出てくる場合には、毛嚢炎や粉瘤、バルトリン腺嚢胞が感染を起こし、切開などの処置や抗生物質の内服が必要な場合がありますので、皮膚科や泌尿器科、婦人科を受診しましょう。
水ぶくれと痛みを繰り返す場合には、性器ヘルペスの可能性がありますので、皮膚科や泌尿器科、婦人科を受診しましょう。
痛くないいぼが増える、大きくなる場合には尖圭コンジローマの可能性がありますので、泌尿器科や婦人科を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「陰部にできものやしこりがある」のセルフチェック法
- ・陰部にできものやしこりがある以外に赤みや腫れの症状がある場合
- ・陰部にできものやしこりがある以外に水ぶくれや痛みの症状がある場合
- ・陰部にできものやしこりがある以外にどんどん増える、大きくなるなどの症状がある場合
- ・陰部にできものやしこりがある以外に強いかゆみや皮膚が硬くなる症状がある場合
「陰部にできものやしこりがある」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「陰部にできものやしこりがある」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
粉瘤
皮膚の下にできる袋状のできもので、日常診療で最も遭遇する良性の皮膚腫瘍のひとつです。できものの中央に黒い点があることが多く、袋の中身は角質や皮脂なのでにおいのある粥状物が出てくることがあります。陰部では下着のラインに沿って股の付け根にできることが多いです。良性のできものであり、気にならなければ治療は不要ですが、外科的に切除することもできます。赤く腫れたり膿がでる場合には、できものの一部を切って膿を出すような処置や抗生物質の内服が必要ですので、皮膚科を受診しましょう。
外陰がん
外陰がんは外陰部にできる悪性のできものの総称のことで、さまざまな種類があります。外陰癌の初期症状はかゆみや痛み、出血、皮膚の色が部分的に白く抜ける白斑などの症状で
、徐々にしこりや膨らみになることもあります。できものの一部を採取し顕微鏡で詳しく調べることで診断できます。進行すると、股の付け根のリンパ節が腫れたり他の臓器に転移することもありますので、気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
尖圭コンジローマ
性感染症のひとつで、ヒトパピローマウイルスが皮膚や粘膜に感染して、陰部や肛門周囲に小さないぼができる病気です。初期はいぼが小さいため自覚症状はありませんが、放置していると徐々に先が尖るように増大し、カリフラワー様や鶏のとさか様といった独特の形状をとります。パートナーにうつす可能性があり、再発もしやすい病気のため、いぼに気づいたら泌尿器科や皮膚科、婦人科などの医療機関を受診しましょう。治療は、液体窒素による冷凍凝固を繰り返し行ったり、イミキモドなどの塗り薬、電気メスやレーザーによる外科的切除があります。
毛嚢炎
毛嚢炎は毛穴の奥の方が炎症を起こしている状態です。陰部だと毛の生えている部位にできやすく、毛穴に一致した赤みのあるしこりとして触れます。外陰部が蒸れた環境で、皮膚表面に小さいひっかき傷ができたり、カミソリで毛を自己処理したことをきっかけに発症することがあります。多くの場合、治療を特にしなくても自然に治ることが多いですが、市販の抗生物質が配合されているOTC医薬品を用いてみるのも良いでしょう。ただし、痛みが強い場合や膿がでている場合は、皮膚科など専門の医療機関を受診しましょう。
「陰部にできものやしこりがある」ときの正しい対処法は?
毛嚢炎などで症状が軽度の場合は、抗生物質が含有された市販の塗り薬で経過をみても構いません。ただし、数日経っても軽快しない場合には医療機関を受診しましょう。
押すとぶよぶよする、強い痛みがある、膿が出ている場合には、切開などの外科的処置や抗生物質の内服が必要ですので、皮膚科や泌尿器科などの医療機関を受診しましょう。
陰部のできものが赤く腫れていたい場合には、入浴は控えてシャワー浴にしましょう。また、タオルを共有することでうつる感染症の可能性もありますので、注意してください。
早く治したい時や症状が治まらない場合、原因により対処法も変わってきます。まずは診断を付けるために早めに医療機関を受診しましょう。
「陰部にできものやしこりがある」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「陰部にできものやしこりがある」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
デリケートゾーンにできたおでき・しこりは何科で相談できますか?
森田 知世(医師)
婦人科や泌尿器科、皮膚科で相談できます。
陰部にできものやしこりが繰り返しできるのは何が原因でしょうか。
森田 知世(医師)
頻度の多い疾患として、毛嚢炎や粉瘤があります。しかし、治療が必要な疾患の可能性もありますので、繰り返す場合には医療機関を受診しましょう。
陰部のできもの・しこりは治れば病院に行かず放置で問題ないですか?
森田 知世(医師)
できものやしこりが消えてしまった場合には自宅で様子をみても良いですが、小さくなったがまだ残っている場合には感染症や悪性のできものの可能性もありますので、一度医療機関を受診してください。
女性で陰部にしこりがあり、押すと痛いのは病気でしょうか?
森田 知世(医師)
押すと痛みがある場合、最も考えられるのはバルトリン腺嚢胞や毛嚢炎、粉瘤といったできものの感染です。感染による炎症であかみを伴うことが多いです。軽度の場合は数日で治まることもありますが、悪化する場合には切開など外科的な処置や抗生物質の内服が必要になりますので、婦人科や皮膚科などの医療機関を受診しましょう。
妊娠中で陰部にできものやしこりがあります。原因は何でしょうか。
森田 知世(医師)
妊娠中は免疫力が低下していることが多く、バルトリン腺嚢胞や毛嚢炎、粉瘤などのできものが感染を起こしやすいです。また、妊娠中に性器ヘルペスの再発や尖圭コンジローマの場合、生まれてくる赤ちゃんに感染する場合もありますので、必ずかかりつけの産婦人科で相談してください。
まとめ
今回は陰部にしこりやできものがある原因について解説しました。たいしたことないと思っていても、実は治療が必要な病気の可能性があります。陰部に気になるしこりやできものがあれば医療機関を受診しましょう。
「陰部にできものやしこりがある」で考えられる病気と特徴
「陰部にできものやしこりがある」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
泌尿器科系の病気
婦人科系の病気
- バルトリン腺嚢胞
- 性器ヘルペス
皮膚科と婦人科、泌尿器科のどちらでも治療を行うことが可能です。
「陰部にできものやしこりがある」と関連のある症状
「陰部にできものやしこりがある」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 陰部の痛くないできもの
- おしりにできもの
- おしり ぶつぶつ
- 陰部のかゆみ
- 陰部がヒリヒリする
- 陰部が赤くなっている
「陰部にできものやしこりがある」症状の他に、これらの症状がある場合も「毛嚢炎」「粉瘤」「尖圭コンジローマ」「バルトリン腺嚢胞」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。
・皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(日本皮膚科学会)