性器にできたブツブツ、もしコンジローマだったら? 「いずれ肥大化やパックリと切れてしまうことになりかねない」
性感染症は性器に生じるため、恥ずかしさもあって受診しようという気にならないこともあるでしょう。また、いつの間にか消えてしまうこともあるようです。しかし、だからといって「しばらく様子を見てみよう」という考え方が通用するものでしょうか。この質問に「新宿駅前クリニック」の蓮池先生が回答します。
監修医師:
蓮池 林太郎(新宿駅前クリニック 院長)
帝京大学医学部卒業。国立精神神経センター国府台病院(現・国立国際医療研究センター国府台病院)臨床研修、国際医療福祉大学三田病院勤務を経た2009年、東京都新宿区に「新宿駅前クリニック」を開院。2121年には法人化に伴い医療法人社団「SEC」理事長就任。「働く人を応援するクリニック」のコンセプトの元、皮膚科・内科・泌尿器科の各診療を提供している。
ブツブツが切り傷を生むことも
編集部
性器にできたブツブツって、性病なのでしょうか?
蓮池先生
その可能性は考えられます。また、一言で「ブツブツ」と言っても、ヘルペスや尖圭(せんけい)コンジローマのような性感染症が複数考えられます。インターネット上に症例写真がありますので、参考にしてみてください。ただし、最終的な診断は医師がおこないます。
編集部
性器以外にブツブツができることはありますか?
蓮池先生
はい。陰毛付近や肛門、それから口にもできる場合もあります。もし、口のみに症状が出たとしたら「フォアダイス」かもしれないです。なお、フォアダイスは生理的な現象で、他人には感染しないとされています。性感染症とは別のアプローチになりますが、それでも医師の診断・治療が必要です。
編集部
頭では受診の必要性がわかっているのですが、やはり恥ずかしいのが本音です……。
蓮池先生
その気持ちも理解できます。しかし、治しておかないと、性感染症の症状がずっと続きかねません。「恥は一瞬、治療の効果は一生」くらいの意識をもっていただきたいです。それに加えて、尖圭コンジローマというブツブツの場合、「手の施しようがないほど重篤化してしまう」可能性があります。
自己免疫力で治すことと放置することの違い
編集部
尖圭コンジローマって「菌」なのですか?
蓮池先生
菌よりも小さなウイルスによる感染症です。ウイルスは菌と違って抗生物質が効かないので、基本的には「自己免疫力」で治していくしかありません。ただし、薬などで「自己免疫力を高める」とともに、「ウイルスの増殖を抑える」工夫は可能です。外科処置を併用することもありますが、ウイルスが残っている限り「完治」とは言えません。
編集部
コンジローマウイルスという固有株なのでしょうか?
蓮池先生
いいえ、HPV(ヒトパピローマウイルス)という150種類以上あるウイルスの中のいくつかが関係しています。ですが、尖圭コンジローマの診断を付ける際は、ウイルスの有無というより「見た目」で判断します。性感染症の専門家でも鑑別が難しい病気です。
編集部
治療期間はどれくらいかかるのでしょうか?
蓮池先生
最終的には自己免疫力で治すため、どうしても個人差が生じます。仮に塗り薬だけで治りそうなら、2週間分の専用クリームを処方しますので、一定期間ごとに様子を見ましょう。冷凍凝固療法などの外科処置を併用するか否かは、ケース・バイ・ケースです。例えば、尿道の中には塗り薬が使えないので、冷凍凝固療法の適応になります。治りが悪い場合は、10回以上冷凍凝固法を繰り返すこともあります。
編集部
治療の費用体系はどうなっていますか?
蓮池先生
尖圭コンジローマの塗り薬には保険の適用が可能で、3割負担だとすると2週間分の薬価で3000円前後です。同じく冷凍凝固療法にも保険が使えて、3割負担で1回あたり1500円前後です。このほかに、処方箋料や診察代がかかる場合もあります。
球の見えないピンポン感染
編集部
性感染症は、相手にうつして、その相手からまた“もらう”ことも考えられますよね?
蓮池先生
はい。性感染症においてはありがちで、「ピンポン感染」とも呼ばれています。なお、尖圭コンジローマに限って言えば、「潜伏期間が長い」という傾向があります。見た目でブツブツが引いたとしても、どこかにウイルスが残っていれば、再発しかねません。したがって、受診する際はパートナーの自覚症状を問わず、一緒に受診してください。
編集部
コンドームの着用は有効でしょうか?
蓮池先生
完全には防ぎきれない印象です。加えて、コンドームだと口からの感染には無防備です。やはり、パートナーともに、ウイルスを完全になくす治療が優先されるべきだと思います。わからないことがあったら皮膚科や泌尿器科へ、女性だったら産婦人科へご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
蓮池先生
繰り返しになりますが、尖圭コンジローマは潜伏期間が長く、「かかっていることに気づきにくい病気」でもあります。一度、発症したら、ピンポン感染の可能性も含めて定期的にチェックしていきたいですね。そのきっかけは、ご自身でブツブツを発見することです。自己免疫力が高ければ自然に治ることもありますが、そのことに期待するよりも確立されている治療方法でウイルスを退治しきってしまいましょう。
編集部まとめ
ウイルス感染に起因した性感染症は、ウイルスの力より自己免疫力の方が高ければ、自然に治る道理です。しかし、ピンポン感染の可能性があるため、性感染症を自分の体だけで考えるのは危険です。したがって、「尖圭コンジローマを放置して自然に治ることもあるが、それと同時に相手から再びもらうことも考えられる」という結論になります。もちろん、放置している間に重篤化することだって考えられます。どちらをとっても、放置は好ましい状態とはいえません。
医院情報
所在地 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-11 山銀ビル5F |
アクセス | JR「新宿駅」 2分 |
診療科目 | 内科、皮膚科、アレルギー科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、性感染症内科 |