「飲み込むと喉が痛い」原因はご存知ですか?考えられる病気も医師が解説!


監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
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慶應義塾大学医学部卒。医師、医学博士。専門は耳科、聴覚。大学病院および地域の基幹病院で耳鼻咽喉科医として15年以上勤務。2年間米国で基礎研究に従事の経験あり。耳鼻咽喉科一般の臨床に従事し、専門の耳科のみならず広く鼻科、喉頭、および頭頸部腫瘍疾患の診療を行っている。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医。日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本耳鼻咽喉科臨床学会の各種会員。補聴器適合判定医、補聴器相談医。
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「飲み込むと喉が痛い」原因と対処法
飲み込むと喉が痛いという症状を経験したことがある方は多いのではないのでしょうか。 飲み込んだ際に、喉の左だけ、あるいは右だけ痛いということや、耳も痛いといった症状が伴うケースもあります。また、中には放置しておくと危険な喉の痛みもあります。 今回の記事では、そうした症状の原因と対処法について解説します。飲み込むと喉が痛い原因と対処法
飲み込むと喉が痛い原因として、急性咽頭炎や急性扁桃炎があります。咽頭炎と扁桃炎は炎症が起こった部位によって診断をつけます。 急性咽頭炎とは、喉の粘膜にウイルスや細菌による感染を起こしている状態です。咽頭炎ではウイルスによる感染が圧倒的に多いです。これに対し、喉の左右には口蓋扁桃(扁桃・扁桃腺)という免疫組織があります。扁桃がウイルス感染や細菌感染などで強い炎症を起こしたものが急性扁桃炎です。 症状が軽い場合には、痛み止めやトローチなどの内服で様子をみていきます。一方、A群β溶連菌などの細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬の内服などの治療が必要となる場合もあります。 喉の痛みに加えて、38℃以上の発熱や、咳症状がない、首のリンパ節が腫れる、喉に白い膿がついているといった場合には、A群β溶連菌感染の疑いが強まります。早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。 喉の痛みと熱、咳などの風邪症状がある場合、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ感染症であることも多いです。特に2021年末にオミクロン株が流行を始めてから、熱と喉の痛みを訴えて受診された方のなかで、新型コロナウイルス感染症と診断がつくケースが急増しています。ご家族にこういった病気と診断がついている方がいらっしゃったり、流行期であったりした場合、これらの感染症である可能性が高まります。 また、注意すべき病気として急性喉頭蓋炎があります。これは、喉頭蓋という喉のフタのような構造が、細菌感染などによって強い炎症を起こし、腫れてしまう病気です。強い喉の痛みと発熱に加え、呼吸困難感、食事や水が飲み込めず、声がくぐもっておかしいなどの症状が現れます。放置しておくと命に関わることもあるので、こうした症状が現れた場合には早急に耳鼻咽喉科を受診しましょう。特に座っていないと苦しくなってしまうというような症状がある場合、救急車を呼ぶことも必要かもしれません。 また、整形外科的な病気である、石灰沈着性頚長筋腱炎という病気でも、飲み込む時の喉の痛みが現れます。その他の症状として、激しい首の痛みや首の動かしづらさ、発熱などがあります。CT検査で、頚椎(首の骨)の前側に石灰化がみられます。痛み止めと安静で自然に良くなることが多いです。飲み込むと喉の右だけ痛い原因と対処法
飲み込むと喉の右だけが痛い場合、右側の急性扁桃炎といった感染症の他、右側の舌咽神経痛の可能性があります。 急性扁桃炎の場合には、軽い場合はうがいや痛み止めで症状が治ることもあります。しかし、痛みが強く食事が取れない、口が開きづらいなどの症状が現れた際には、扁桃周囲膿瘍という状態になっているかもしれません。扁桃周囲膿瘍は、強い細菌感染によって口蓋扁桃の周りに膿瘍(膿のたまり)ができてしまう病気です。膿瘍ができてしまった場合は、切開によって膿を排出するほうが治りが早いと考えられています。飲み込む際に片側の喉に強い痛みがある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。 舌咽神経痛は神経に関連する状態で、左右どちらかの喉や耳の痛みが生じます。感染症ではないので発熱や咳、呼吸困難といった症状は伴いません。まれに、喉に発症する帯状疱疹の初期症状である場合がありますので、やはり耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。飲み込むと喉の左だけ痛い原因と対処
飲み込むと喉の左だけ痛い場合、基本的には扁桃周囲膿瘍など、右側の痛みと同様の原因が考えられます。 しかし、舌咽神経痛については、若干ですが左側が多いという報告もみられます。 また、左の喉の痛みと発熱を繰り返す場合、下咽頭梨状窩瘻という病気の場合があります。下咽頭梨状窩瘻は胎生期(母親のお腹の中にいる時期)に喉の器官が形成される途中で、本来吸収されるはずの管のような構造が残ったままになることによる病気です。この病気は90%以上が左側に生じることが知られています。飲み込むと喉と耳が痛い原因と対処
喉の炎症がある場合、飲み込む運動により炎症を起こした部位が擦れ、痛みを生じます。炎症が高度である場合、舌咽神経という神経を通じ、耳に痛みが走ることがあります。この場合、耳自体には炎症がないにも関わらず痛みだけ感じてしまうのです。こういった神経を通じた痛みを放散痛と呼びます。 その他、飲み込むと喉と耳が痛い原因としては、舌咽神経痛の可能性が挙げられます。すぐに病院へ行くべき「飲み込むと喉が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。息苦しさも伴う症状の場合は耳鼻咽喉科へ
飲み込む時に息苦しさも伴っている場合や、座っていないと息苦しくなってしまう場合には、急性喉頭蓋炎などの救急対応が必要な疾患のこともあります。 息苦しさが現れた場合には、早急に耳鼻咽喉科受診をおすすめします。痛みで水分も飲み込めない場合は耳鼻咽喉科へ
飲み込むときの痛みで水分も飲み込めない場合、急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍など重度の炎症を起こしていることがあります。水が飲めない場合、脱水症状から意識朦朧となってしまう可能性もありますので、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。「飲み込むと喉が痛い」症状の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「飲み込むと喉が痛い」症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。急性扁桃炎
急性扁桃炎は、喉にある扁桃という免疫組織が感染によって炎症を起こしてしまう病気のことです。軽症であれば痛み止めの内服やうがいなどで自然に良くなることもあります。しかし、細菌感染が疑われる場合には、抗菌剤の内服が必要となるケースも多いです。 また、急性扁桃炎が重症化し扁桃周囲膿瘍になると、膿を出すための切開や抗菌薬の点滴や内服が必要になる場合があります。扁桃周囲膿瘍の治療のためには、入院を要することも多いです。 激しい喉の痛みがあり、飲み込むこともつらい、食事や水が飲めない場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。急性喉頭蓋炎
急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋が炎症によって腫れてしまう病気のことです。 喉頭蓋は、喉の奥の方にあります。食べ物が空気の通り道に入らないよう、食事や飲水の際にフタをするような役割を果たします。 急性喉頭蓋炎は、日本では、成人例が多く、男性にやや多くみられます。喫煙がリスクとなるのではないかと考えられています。 最初は風邪のような症状から始まり、急速な強い喉の痛みが出現します。喉の痛みの程度に比して、外から見える喉の所見として、それほど炎症は強くはありません。 しかし、水も飲み込めなくなり、呼吸困難感を訴える場合もあります。重症化すると、空気の通り道が狭まってしまうため、気道確保が必要なケースもあります。 喉の痛みに加えて、水も飲み込めない場合や息苦しさがある場合には、早急に医療機関を受診しましょう。舌咽神経痛
舌咽神経は、喉の運動や喉の奥の方や耳の感覚、味覚の一部を司っています。神経が走っている部分の近くには血管があるのですが、神経を血管が圧迫することで起こるのではないかと考えられています。 症状として、ものを噛んだ時や飲み込んだ時に、左右どちらかの舌の奥や耳が短時間に鋭い電撃的な痛みが走るということがあります。比較的稀な疾患で、女性がやや多く、50歳前後が多いとされています。舌咽神経痛では発熱を伴うことは稀ですので、他の病気とは区別が可能です。 治療としては、最初に抗けいれん剤のテグレトールが有効とされています。しかし、薬物治療で効果が乏しい際には、外科的な手術が検討されます。 飲み込んだ時に、喉や耳に鋭く僅かな時間の痛みが起こる症状がある場合には、耳鼻咽喉科を受診しましょう。「飲み込むと喉が痛い」症状の正しい対処法は?
飲み込むと喉が痛い場合、軽症であれば市販の痛み止めやうがい薬で様子をみることもできるでしょう。タバコを吸っている方は、刺激を避けるために一旦喫煙をやめましょう。また、乾燥しないように加湿し、十分に水分や栄養をとって休養するようにしましょう。 しかし、高熱が出たり、首のリンパ節が腫れてきたりする場合には、細菌感染などの可能性があります。あるいは口が開けにくい・ものが飲み込みづらい・息苦しいなどの症状がみられる場合は、早急に耳鼻咽喉科を受診しましょう。「飲み込むと喉が痛い」についてよくある質問
ここまで飲み込むと喉が痛い症状について紹介しました。ここでは「飲み込むと喉が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
飲み込むと喉が痛い時は、何科を受診したらいいですか?
小島 敬史(医師)
飲み込む時の喉が痛い症状がある場合、耳鼻咽喉科の受診が望ましいです。難しい場合は、内科を受診しましょう。
飲み込むと喉が痛い症状が何日続いたら、病院を受診した方がいいですか?
小島 敬史(医師)
ウイルス感染による咽頭炎の場合には、痛み止めなどの対症療法で改善することも多いと考えられます。 しかし、咽頭痛などの風邪症状が始まってから4〜6日間経っても症状が良くならない場合には、細菌感染の可能性が高くなることも報告されています。そのため、5日間ほど市販薬の内服などで様子をみても症状が良くならない時には、医療機関を受診すると良いでしょう。
まとめ
今回の記事では、飲み込むと喉が痛い原因や対策について解説しました。 原因は、ウイルスや細菌などの感染から神経に関係するもの、整形外科的な病気までさまざまです。 様子をみても治らない場合は医療機関を受診しましょう。また、息苦しさなどがみられる場合は、早急な受診をしてください。「飲み込むと喉が痛い」で考えられる病気
「飲み込むと喉が痛い」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。整形外科の病気
- 石灰沈着性頚長筋腱炎
「飲み込むと喉が痛い」に似ている症状・関連する症状
「飲み込むと喉が痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 咳
- 痰
- 喉の痛み
- 耳の痛み
- 首のリンパ節の腫れ
- 飲み込み辛さ
- 息苦しさ
- 高熱
【参考文献】
・口腔・咽頭の病気(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
・耳鼻咽喉科領域の痛みを考える総説




