「耳の穴が臭い」のは「外耳炎」や「急性中耳炎」が原因?医師が徹底解説!
耳の穴が臭いのを治すには?Medical DOC監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「耳の穴が臭い」症状で考えられる病気と対処法
普段の生活では、あまり「耳のにおい」というものを意識することはないでしょう。ただし、耳が臭い、耳掃除をすると綿棒が黄ばむ、耳垂れがあり不快なにおいがするという場合には、耳の病気が潜在化しているサインである可能性が考えられるので、注意が必要です。
今回は、耳の穴が臭い症状で考えられる病気とその対処法について解説していきます。
耳の穴が臭い症状で考えられる原因と対処法
耳の穴が臭い症状で考えられる原因疾患として、「急性中耳炎」が挙げられます。
急性中耳炎とは、鼓膜より内側の中耳腔(ちゅうじくう)という部位で起こる感染症であり、通常では細菌やウイルスが喉の奥と中耳腔を交通する耳管を介して感染して発症します。
急性中耳炎を発症すると、耳が痛くなり、耳閉感や発熱が起こることもあります。
小さなお子さんが耳を痛がって、発熱する時には注意が必要であり、症状が増悪する場合には、抗菌薬を服用する治療が行われます。
鼓膜が発赤して膿が貯留する場合には、5日間の抗菌薬内服に加えて、鼓膜に麻酔した後に鼓膜を切開して膿を排出させる鼓膜切開の治療実施が推奨されています。
鼓膜を切開して穴があいた後や、自然に鼓膜が破れたときは、抗菌薬の点耳液を耳の中に入れる治療が実施されることもあります。
急性中耳炎を疑う際には、耳鼻咽喉科など専門医療機関に相談してください。
片方の耳の穴が臭い症状で考えられる原因と対処法
片方の耳の穴が臭い症状で考えられる原因疾患として、「外耳炎」が挙げられます。
外耳炎は、外耳(外耳道)に何らかの原因で傷ができ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、真菌(いわゆるカビ)などの病原体が感染することによって起こります。
耳かきや耳の内部を爪でひっかくなどの行為、水泳活動をして水が耳に入ること、整髪料やヘアカラーなどの刺激物が耳に入る、耳栓や補聴器を使用している場合なども外耳炎を発症するリスクが上昇します。
急性外耳炎の主な症状は耳の痛みであり、耳たぶを引っ張ったり、耳を抑えたり、口を開けたりしたときに症状が強く出現しますし、外耳道が腫れると耳が聞こえにくくなることもあります。外耳炎の治療には、外耳道処置と治療薬の処方があります。
心配であれば耳鼻咽喉科を受診しましょう。
耳の穴が臭く耳垂れ(液体や汁)が出る症状で考えられる原因と対処法
耳の穴が臭く耳垂れが出る症状で考えられる原因疾患として、「先天性耳瘻孔」が挙げられます。
先天性耳瘻孔とは、耳の生え際に存在する小さな穴のことであり、その皮下には管腔構造が埋まっていて、その管腔内部にたまった角質成分が感染してきつい臭いを発することがあります。
通常は無症状ですが、白色の分泌物(垢や皮脂腺分泌液)が排出されることがあります。
先天性耳瘻孔は自然に閉鎖することはありませんが、特に症状がない場合には積極的に治療せずに経過観察としますが、感染症を合併した場合は、抗生物質を用いて前向きに治療を行いますし、場合によっては膿成分をドレナージするため切開処置を併用することもあります。
何度も感染症を繰り返す場合もありますので、耳瘻孔を認める際には適切なタイミングで耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診しましょう。
耳の穴が臭う・かゆい症状で考えられる原因と対処法
耳の穴が臭ってかゆい症状で考えられる原因疾患として、「耳垢塞栓」が挙げられます。
一般的に、外耳道にある分泌腺から生じた分泌物やほこりなどが混在して耳垢(耳あか)となります。
通常であれば、外耳道には自浄作用があるために耳垢は自然に排出されますが、耳掃除をして耳垢を奥まで押し込んでしまったり、耳垢が大量に蓄積したりすると、外耳道の閉鎖をきたして、耳垢塞栓(耳垢が詰まった状態)に繋がります。
耳垢塞栓になれば、耳閉感が生じることもありますが、無症状のことも少なくありません。
ただし、入浴や水泳を行って耳垢自体が水分を含んで膨張すると、急激な疼痛や難聴をきたすこともありますので、心配であれば耳鼻咽喉科を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「耳の穴が臭い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
耳から膿が出る場合は、耳鼻咽喉科へ
自浄作用が衰えている場合や耳の持病がある方、あるいは耳から膿が出て発熱症状を伴う場合、最近耳の聞こえが悪くなってきたと感じる方は耳の病気が原因のこともあります。迅速に耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診することが重要です。
受診・予防の目安となる「耳の穴が臭い」ときのセルフチェック法
- ・耳の穴が臭い以外に耳から膿が出る症状がある場合
- ・耳の穴が臭い以外に聞こえにくい症状がある場合
- ・耳の穴が臭い以外に耳が痛い症状がある場合
「耳の穴が臭い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「耳の穴が臭い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
外耳炎
外耳炎とは、鼓膜の手前を指す外耳(外耳道)と呼ばれる部位に炎症が起こる病気のことです。耳かきや指で耳の中をかくことなどで外耳に傷ができ、細菌が感染することで発症し、主な症状は耳の痛み、赤み、耳だれなどが挙げられます。
耳の痛みは耳の入り口を押したり、耳たぶを引っ張ったりした時に強くなることがありますし、耳の中が腫れて耳が聞こえにくく難聴になることもあります。
専門医療機関における外耳炎に対する外耳道の処置として、外耳道を清掃して外耳道にたまった膿や痂皮(かさぶた)を丁寧に取り除きます。
それ以外にも、抗菌薬、消炎鎮痛薬、ステロイド薬などの治療薬が用いられます。
先天性耳瘻孔
先天性耳瘻孔では、皮下に埋まった管腔構造には垢や埃などが溜まって、同部に菌が付着すると感染すると、発赤、腫脹、熱感、疼痛、排膿などの所見を認めます。
感染の遷延や再発が起こると、自壊して本来の開口部と別の部位に二次性の開口部を作ったり、瘻管が分岐したりしますので、早期的に専門医療機関を受診しましょう。
感染時には、抗生剤や鎮痛剤の内服を行い、膿が出ている場合には、局所麻酔をした後に切開し、膿を排出する処置が必要になることがあります。
無症状では経過観察することも多いですが、痔瘻孔に対する根治的な治療は、手術で瘻管を完全に摘出する方法があります。
急性中耳炎
急性中耳炎は、中耳に細菌やウイルスなどの病原体が侵入することで引き起こされます。
風邪を引いた時の喉のウイルスや細菌が耳管を介して中耳腔に侵入して、耳痛、発熱、耳閉感(耳が詰まった感じ)、耳漏(耳の穴から膿成分が出る状態)、難聴などの症状が出現します。
一般的に、耳痛や発熱などの急性症状出現後48時間以内に受診した場合は、急性中耳炎と診断されます1)。
症状が軽い場合は自然に回復することも多いため、3日間程度は抗菌薬を使用せずに様子をみることもありますが、症状が継続或いは悪化すれば耳鼻咽喉科など医療機関を受診しましょう。耳の痛みや発熱に対しては、解熱鎮痛薬で症状を和らげることが期待できます。
耳垢栓塞
本来は自然に排出されるはずの耳垢ですが、耳掃除で耳垢を奥に押しやってしまった、水が入って耳垢が膨らんでしまった場合に、外耳道を塞いでしまう「耳垢栓塞」という状態に陥ることがあります。
この場合には、難聴や耳閉感などの症状をきたしますが、詰まってしまった耳垢を取り除くことですぐに症状が治まることが多いです。
自分で処置すると、耳垢をさらに奥へと押し込んでしまって症状が増悪することもありますので、必ず耳鼻科を受診して専用器具を用いて、取り除いてもらいましょう。
「耳の穴が臭い」ときの正しい対処法は?
耳の穴が臭くて、外耳炎を発症した際には、治療薬として抗菌薬やステロイドの軟膏剤、点耳薬、内服薬などの種類があり、耳の症状の重症度によってどの薬を用いるかが専門医によって決定されます。
また、耳の臭いが気になると感じている方の中には、臭いのもとが実は耳の中ではなく、耳周りにあることも想定されます。
耳の周りは洗いにくいので、お手入れ不足になりやすい傾向がありますし、特に耳の後ろは皮脂腺や汗腺が多く、普段から意識してお手入れしておかないと分泌された皮脂や汗が皮膚に残って細菌が繁殖してきつい臭いにつながります。
耳の穴の中だけでなく、耳周りの臭いも気になる場合は、細菌が繁殖して炎症を起こしている可能性も考えられるので、念のため耳鼻咽喉科など医療機関を受診しておくと安心です。
耳が臭くてかゆみに困っている方は、かゆみ止めや炎症止めの成分が含まれた市販薬を使用するのが良いでしょう。
耳の症状を緩和させる市販薬の例として、ムヒERが挙げられます。
本剤は綿棒に含ませて患部にぬるタイプの薬であり、メントールの爽快感が耳周りのかゆみ症状をおさえてくれますし、弱めのステロイドも含まれていて、炎症自体もおさえてくれる効果も期待できます。
外耳炎の引き金になるのは、頻回な耳掃除など物理的な刺激ですし、特に仕事中や移動中などにイヤホンを使う機会の多い若い世代やビジネスパーソンなどは、イヤホンによる外耳道への刺激を極力少なくするように注意しましょう。
耳の症状を早く治したい時や応急処置をしても症状が収まらない場合は、症状をいつまでも放置していると病気を繰り返したり、悪化すると難聴の原因になるため、速やかに耳鼻咽喉科など医療機関で治療を受けることが重要なポイントです。
「耳の穴が臭い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「耳の穴が臭い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
耳掃除をすると綿棒が臭いのは耳鼻科を受診すべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
耳掃除をすると綿棒が臭くなるのは、耳垢栓塞や外耳炎などの可能性があります。自然に良くなることもありますが、早期的に治癒を目指したい際には耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診してください。
耳の穴が臭いときの正しい耳掃除の仕方・洗い方を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
耳掃除は基本的に必要ないものですが、仮に耳掃除をしたい場合には綿棒ではなく竹の耳かきを使用して、回数は月1回程度にとどめましょう。外耳道にかゆみがあると、どうしても耳かきでかきたくなるものですが、強く耳かきをすることによって外耳道が傷つき、さらに炎症が悪化する懸念があるので控えましょう。
耳の穴が臭いのですがアルコールで消毒してもいいですか?
甲斐沼 孟(医師)
耳が臭くて耳の中を消毒する際には、エタノールなどのアルコールが含まれたタイプであれば、清涼感もあって耳の中がすっきりして耳掃除に適しています。一定の刺激はあるので、万が一皮膚がもともと弱い人や耳の中に傷がある場合はアルコールの使用を避けましょう。
気になる耳の穴の臭いに効く薬はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
パピナリンという市販薬は、耳の穴が臭い際に耳内に直接塗ることにより耳漏、耳痛、耳そう痒、中耳炎などを改善する液剤として期待されています。希望すれば試してみて、それでも症状が改善しなければ専門医療機関を受診しましょう。
耳の穴が臭いのは加齢臭が原因でしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
耳の中には皮脂腺や耳垢腺が集中しており、加齢臭に混じって汗やゴミ、はがれた表皮や皮脂腺、耳垢腺などからの分泌液が混じり合った耳垢がたまりやすく、これらの汚れを取り除かないと、細菌や真菌が繁殖して臭うことになります。 加齢だけでなく、ワキガの原因にもなるアポクリン汗線が多い体質の人は、耳垢もにおいがちな傾向が見受けられます。
乳児の耳の穴が臭いのですが病気なのでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
正常の耳垢の可能性もありますが、耳垂れの程度や聞こえにくさに明らかな左右差がある場合は専門医療機関の受診をお勧めしますし、急性中耳炎などの病気を否定する為にも心配であれば耳鼻咽喉科を受診しましょう。
まとめ
耳の中の臭いを普段から気にしている方は少ないかもしれませんが、実は耳の中が臭いのは耳の病気のサインである可能性があります。
耳が臭い、耳垂れがおこる場合に考えられる病気としては、急性中耳炎や外耳炎、先天性耳瘻孔など様々なものが挙げられます。症状を放置すれば状態が悪化する可能性もありますので、セルフケアを実践しながら適切なタイミングで耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診して、確実に診断や治療に繋げられるように認識しておきましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「耳の穴が臭い」症状で考えられる病気
「耳の穴が臭い」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
耳の中が臭いのは耳の病気のサインである可能性があります。
「耳の穴が臭い」に似ている症状・関連する症状
「耳の穴が臭い」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「耳の穴が臭い」症状の他にこれらの症状がある場合でも「急性中耳炎」「外耳炎」「耳垢塞栓」「先天性耳瘻孔」などの疾患の可能性が考えられます。発熱していたり膿が出ている場合には、早めに医療機関を受診しましょう。