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「耳かきのやりすぎ」は外耳炎や鼓膜穿孔に? 医師がリスクと正しいやり方・適切な頻度を解説

 更新日:2023/06/08
耳掃除のやりすぎ注意! 医師がリスクや正しい耳掃除の方法を解説

耳かきをすると気持ちいいので、ついこまめにやりたくなりますよね。しかし、耳かきが原因でトラブルを起こして耳鼻科を受診される人は意外と少なくないのです。一体、耳かきが原因の耳の疾患にはどのようなものがあり、どのような症状を起こしてしまうのでしょうか。また、適切な耳かきの頻度や方法も気になるところです。今回は、耳鼻咽喉科の磯野先生に解説していただきました。

磯野 志真

監修医師
磯野 志真(医師)

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東京慈恵会医科大学医学部卒業。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医師。東京医科歯科大学医学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)、横浜市立みなと赤十字病院、賛育会病院などでの勤務経験あり。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会所属。小児の難聴・中耳炎から、成人の頭頸部がんまで幅広く診療している。

「耳かきのやりすぎはよくない」は本当?

「耳かきのやりすぎはよくない」は本当?

編集部編集部

まず、耳垢がたまる原因について教えてください。

磯野志真先生磯野先生

耳垢は、耳の中の細い通り道である「外耳道(がいじどう)」にある皮脂腺や耳垢腺から出る分泌物に、古くなった皮膚やほこりなどが混ざったもののことを指します。人間には耳垢を自然に排泄する機能が備わっており、これを「自浄作用」と言います。自浄作用によって聞こえが悪くなるくらい耳垢がひどくたまることはほとんどありませんが、多少の耳垢はたまることもあります。子どもの場合は、大人に比べて外耳道が狭いため耳垢がたまりやすく、また、高齢者の場合は加齢に伴い耳の自浄作用が低下するので耳垢がたまりやすくなる傾向にあります。

編集部編集部

そこで本題です。「耳かきのやりすぎはよくない」と聞いたことがありますが、これは本当ですか?

磯野志真先生磯野先生

そうですね。ヒトには耳垢を自然に排泄する機能が備わっているため、多少の耳垢であれば家庭で無理に取る必要はありません。綿棒や耳かき棒で習慣的に耳かきをしている人もいらっしゃると思いますが、入浴後に濡れた耳を軽く拭う程度で十分です。むしろ耳かきのやりすぎは、耳のトラブルを引き起こす可能性があることを認識してほしいと思います。どうしても耳垢が気になるときは耳鼻科を受診してみましょう。

編集部編集部

耳かきをやりすぎると、どのような問題が起こりますか?

磯野志真先生磯野先生

強く耳をかきすぎると、外耳道を傷つけて「外耳炎(がいじえん)」を引き起こすことがあります。また、耳かきの際に奥まで綿棒などで触ってしまうと、耳垢を奥にさらに押し込んでしまう可能性があり「耳垢栓塞(じこうせんそく)」になってしまいます。ほかにも、耳かきをしているときに他人と接触して、耳かき棒などを誤って奥に入れすぎて鼓膜を破ってしまう「鼓膜穿孔(こまくせんこう)」が起こることもあります。とくに子どもは想定外の動きをするため、トラブルが起こりやすいので注意が必要です。

耳かきのやりすぎで、どんな症状を引き起こす?

耳かきのやりすぎで、どんな症状を引き起こす?

編集部編集部

外耳炎について、もう少し詳しく教えてください。

磯野志真先生磯野先生

外耳炎は、強く頻回な耳かきや指の爪などで耳の中を引っ掻いて傷を作った場合などに細菌が入り、炎症を起こし発症します。症状としては耳の炎症を起こしている部分が痛くなります。炎症部分が強く腫れた場合、聞こえが悪くなることもあります。

編集部編集部

耳垢栓塞についてはいかがでしょうか?

磯野志真先生磯野先生

耳かきの際に奥まで綿棒などで触ってしまうと、耳垢を奥にさらに押し込んでしまい外耳道を塞いでしまう耳垢栓塞が起こることもあります。症状がない場合もありますが、聞こえが悪くなったり耳の圧迫感を感じたりすることもあります。

編集部編集部

最後、鼓膜穿孔について教えてください。

磯野志真先生磯野先生

耳かきをしている時に他人と接触し、耳かき棒などを誤って奥に入れすぎて鼓膜を破ってしまう鼓膜穿孔を起こすこともあります。症状としては聞こえが悪くなります。

編集部編集部

耳かきのやりすぎによって症状が出たときの対処法は?

磯野志真先生磯野先生

まずは、いずれの疾患でも耳を触らないようにしましょう。気になって綿棒などで触りたくなるかもしれませんが、症状や病態がひどくなることがありますので、触らないようにしてください。外耳炎は痛みがごく軽い場合は自宅で数日様子を見てもいいかもしれませんが、痛みが強かったり持続していたりする場合は耳鼻科を受診し、処置をしてもらったり薬を処方してもらったりしましょう。耳垢栓塞は耳鼻科で耳垢を除去する必要があるので、早めに病院を受診しましょう。鼓膜穿孔は鼓膜に空いた穴の大きさによって対応が変わる場合があるので、早めに耳鼻科を受診してください。

正しい耳かきのやり方・頻度・注意点をご紹介

正しい耳かきのやり方・頻度・注意点をご紹介

編集部編集部

耳かきをするときは、どのような点に注意すればいいですか? 耳かきの正しいやり方が知りたいです。

磯野志真先生磯野先生

耳かきで大切な点は、「頻回におこなわないこと」と「優しくおこなうこと」です。耳かきは「気持ちいい」と感じやすいので、こまめにおこなってしまう人もいらっしゃいますが、外耳炎などのトラブルの原因になります。どうしても耳垢が気になる場合やかゆみがある場合などは、耳鼻科で処置してもらいましょう。また、子どもは外耳道が狭く耳垢が大人よりたまりやすい特徴があり、ご家庭にて耳かきが必要な場合もありますが、耳かきを嫌がったりじっとしていられなかったりすることがあります。ご家庭での耳かきは無理をせず、こちらも耳鼻科で処置してもらいましょう。

編集部編集部

耳かきをする適切な頻度について教えてください。

磯野志真先生磯野先生

耳の自浄作用により自然に耳垢は外に排泄されるので、耳かきは月に1回程度にしましょう。また、人によって全く必要がない場合もあります。

編集部編集部

耳かきをするときにおすすめの道具やグッズはありますか?

磯野志真先生磯野先生

耳かきの際は、固い耳かき棒ではなく柔らかい綿棒を使い、そっとやさしく拭う程度にしましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

磯野志真先生磯野先生

耳かきをすると気持ちいいのでつい頻回にやりすぎてしまうこともありますが、耳のトラブルを繰り返して耳鼻科を受診される人がいらっしゃいます。耳垢は自然に排泄されるものなので、月1回程度、綿棒を使って優しく耳かきをしましょう。

編集部まとめ

耳かきのやりすぎが原因でおきる病気の1つに外耳炎があるとのことでした。耳の痛みが出て、腫れも伴う場合は聞こえが悪くなる場合もあるので、耳鼻科での受診をおすすめします。ほかにも、耳かきのしすぎによって耳垢栓塞や鼓膜穿孔を引き起こすこともあり、これらの疾患も耳鼻科での処置が必要になることが多いので早めに病院を受診しましょう。耳のトラブルを起こさないよう、耳かきは月1回程度の頻度で、綿棒を使って優しく適切におこないましょう。

この記事の監修医師