「耳の奥が痛い」原因とは?リンパ節も痛い場合も医師が解説!
耳の奥が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
田中 志真 医師
「耳の奥が痛い」症状で考えられる病気と対処法
「耳の奥が痛い」と言って受診される方の多くは、耳そのものに原因があります。しかし、日々診療している中で、耳以外の器官が原因で耳の痛みを生じている場合も決して少なくありません。耳の奥が痛くなる病気を診断するのには、耳の痛みの程度、耳の痛み以外の症状が非常に大切です。その例を見ていきましょう。
耳の奥が痛い症状で考えられる原因と治し方
耳の奥が痛い場合には、大人では「耳掃除をした後に耳の奥が痛い」「はなや喉の風邪を引いた後に耳の奥が痛い」という訴えが大部分をしめます。一方で、痛みを訴えられない乳幼児などの子供の多くは「風邪を引いた後に耳を触られるのを異常に嫌がる」「熱がありなんとなく不機嫌」という状態を親御さんが訴えます。
このような場合には、急性中耳炎・鼓膜炎・外耳炎、鼻や喉の炎症に伴う耳管狭窄症などの可能性があります。
すぐできる対処法は、ロキソニンやアセトアミノフェンなど、痛みや炎症を抑える薬を飲んで症状の改善を一時的に図ることです。
緊急性はそれほど高くはありませんが、原因となる病気の多くは抗菌薬を使わないと治らないので、なるべく早めに耳鼻科を受診しましょう。
耳の奥が強く痛む症状で考えられる原因と治し方
耳の奥だけではなく、耳全体が強く痛むことがしばしばあり、耳に水疱(水ぶくれ)ができることもあります。
このような場合には、水痘・帯状疱疹ウイルス感染によるもの(水ぼうそうや帯状疱疹)の可能性があります。
水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染は、痛みが強い場合や他の症状を伴っている頻度が高く、抗ウイルス薬の使用が必要ですので、すぐに耳鼻科を受診してください。また、水痘・帯状疱疹ウイルスは免疫力の低下している高齢者などに感染しやすいので、ご家族へ感染しないように十分注意をしてください。
耳の奥とリンパ節が痛い症状で考えられる原因と治し方
耳は正常であるにもかかわらず、耳の周りの臓器やリンパ節に炎症が存在することで、あたかも耳自体が痛むように感じることがあります。これを耳への「放散痛(ほうさんつう)」といいます。
このような場合には、耳下腺炎や頸部リンパ節炎によるものの可能性があります。
すぐできる対処法は、ロキソニンやアセトアミノフェンなどの痛みや炎症を抑える薬を飲んで症状の改善を一時的に図ることですが、抗菌薬やステロイドを使わないと治らないこともあるので、なるべく早めに耳鼻科を受診してください。
唾を飲み込むと耳の奥が痛む症状で考えられる原因と治し方
唾液を飲み込むと喉の奥が物理的に刺激され痛み、耳への「放散痛」として耳が痛むように感じます。
このような場合には、急性咽頭炎、急性扁桃炎の可能性があります。
扁桃炎の場合は、炎症が強くなると扁桃がかなり大きく腫れ、声が出なくなったり口が開けられなくなったり、ひどい場合は呼吸困難感を自覚するようになったりします。治療には入院を要することもある病気なので、すぐに耳鼻科を受診してください。
顎を動かすと耳の奥や周りが痛む症状で考えられる原因と治し方
顎を動かすと耳が痛むように感じる時がありますが、これも「放散痛」です。痛みのほかに「口が開けにくい」「顎を動かすと関節音がする」ことも特徴的です。
このような場合には、顎関節症などの可能性があります。
顎関節症は耳鼻科では治療ができないので、歯科・口腔外科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「耳の奥が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
虫などの動物や異物が入ってしまい、耳が激しく痛い場合は、耳鼻科・救急科へ
「外耳」という鼓膜より外の細い空間に昆虫や異物が入ってしまうと、外耳の壁や鼓膜が傷ついてしまう可能性があり、強い痛みが出てくるようになります。また、鼓膜が傷つくと一時的に聞こえが悪くなったり、続発的に(関連して二次的に)中耳炎になったりします。
また、鼓膜より奥の「中耳」という空間に異物が入ると、取り出すのがとても難しくなるため、なるべく早く耳の中の異物を取り出さなければなりません。耳鼻科・救急科を速やかに受診してください。
耳の奥の痛みに加えて、「顔面の動きが左右で異なる」「耳の痛みがある方だけ聞こえがかなり悪い」「立っていられないほど強いめまいする」場合は、耳鼻科・救急科へ
鼓膜より内側の空間を「中耳」といいますが、ここには「顔面神経」という顔の動きを支配する神経があります。また「中耳」よりも、さらに奥には「内耳」という部分には聴力や平衡感覚(体のバランスのことを指します)をつかさどる器官があります。
「耳の痛み」に加え、「顔面の動きが左右で異なる」顔面の麻痺症状がある場合、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染が強く疑われます。顔面麻痺の程度にもよりますが、入院下でのステロイド投与による強度な治療が早急に必要な場合があります。治療が遅れると麻痺が残ってしまう場合もありますので、耳鼻科・救急科を速やかに受診してください。
「耳の痛み」に加え、「耳の痛みがある方だけ聞こえがかなり悪い」・「立っていられないほど強いめまいする」症状がある場合、「内耳」も障害されている可能性が高いです。
原因としては、耳の腫瘍の増大や、中耳炎の急性増悪(悪化)が考えられます。耳の腫瘍や中耳炎などの炎症はさらに奥へ進み、脳へ進展してしまうことがありますので、すぐにCTやMRIのとれる大きな病院にある耳鼻科・救急科へ行きましょう。めまいがひどく歩けない場合は最悪の場合、救急車を呼んでもいいかもしれません。
「耳の奥が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「耳の奥が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
急性中耳炎
鼓膜より奥の「中耳」で炎症がおきたものを「中耳炎」といいます。中耳炎にはいくつかありますが、その中でも最も多いのが「急性中耳炎」です。
鼻と中耳は「耳管」という管でつながっていますが、鼻の中にいる病原体の細菌やウイルスがこの「耳管」を通して耳の中に感染すると膿がたまるために、中耳炎が起こります。
症状としては、耳の奥の痛みに加え、難聴と耳がつまる感じがします。乳児では痛みを訴えられないので、機嫌が悪くなり耳を触られるのを嫌がります。
治療は、抗菌薬の内服が基本ですが、必要に応じて鼓膜を切開して膿を出します。
中耳炎は放置すると治りにくくなるので、早めに耳鼻科を受診しましょう。
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)
「急性中耳炎」がなかなか治癒せず、膿が長期間たまっている状態をさします。子供に多い病気であり、子供は順応性が高いので難聴などの症状があまり出ないことがあり、耳鼻科に他の症状で受診して偶発的に見つかったり学校健診で指摘されたりして初めて診断に至ることもあります。治療としては、鼓膜を切開したりチューブをいれたりして膿を出します。治療には1~2年かかる場合も少なくないです。
「急性中耳炎」や「滲出性中耳炎」は治らないと「慢性中耳炎」に移行します。慢性中耳炎になると、炎症により鼓膜に穴が開き難聴にあり、耳だれが頻回に(繰り返し)起こってしまうことがよくあります。慢性中耳炎は全身麻酔での手術が必要になることがあります。
外耳炎
鼓膜の手前までの細い部分を「外耳」といい、この部位での炎症を「外耳炎」といいます。
頻回な耳かきをした場合や指のつめなどで耳の中をかいて傷を作った場合に細菌が入り、炎症を起こし発症します。高齢の方や、糖尿病などで免疫力が低下している方は、カビの感染が原因のことがしばしばあります。
症状は、耳の手前~奥が痛くなることです。ひどくはれる場合もあり、聞こえが悪くなることもあります。耳を引っ張ると痛みが強くなります。
治療としては、液体状の抗菌薬を耳に入れます。ひどい場合は抗菌薬の飲み薬を使うこともあり、高齢者や免疫力の低下している方ですとなかなか治りにくいこともあるので、耳を洗浄するのにしばらく通院を要することがあります。
耳の奥の痛みがでてきたら、なるべく早めに耳鼻科を受診しましょう。
外耳道異物
耳の穴から鼓膜の手前までの細い部分を「外耳」といい、ここに昆虫や小さなおもちゃなどが迷入してしまうものです。
症状は、耳の手前から奥が痛くなることです。昆虫など動物が入ると中で動いて鼓膜を傷つけることもあり、強い痛みや難聴が出てきたりします。
耳鼻科や救急外来で速やかに異物を除去することが大切です。
耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)
「耳管」は、通常いつもは閉じていますが、嚥下やあくび、耳抜きなどによって一瞬開放します。しかし、この一瞬の開放ができずに、常に耳管が閉じたままになってしまうのが耳管狭窄症です。
高層エレベーターや飛行機に乗っているときにおこりやすいのですが、耳管狭窄はすぐに改善することがほとんどです。耳管狭窄が持続する原因として、鼻や喉の炎症があげられ、この部分の炎症が耳管に波及することで耳管が閉じたままになってしまいます。
主な症状は、耳が詰まった感じがすることで、耳の痛みが起こることがあります。
高層エレベーターや飛行機に乗った際におこる耳の詰まりや耳の痛みは嚥下や耳抜きをすることですぐに治ります。一方で、鼻や喉の炎症のある方は数日持続してしまうこともあるので、鼻や喉の炎症の治療することで耳管狭窄は改善します。
鼻や喉の炎症(鼻水・鼻づまり・喉の痛み等)を伴っているときは耳鼻科を受診してください。
「耳の奥が痛い」ときに市販薬は使用しても良い?
痛みが軽い場合は「ロキソニン」などの市販の痛み止めを内服してもいいかもしれません。また、耳掃除をしすぎて明らかに「外耳炎」である場合は、「クロマイ」などの抗生剤の含まれた市販の軟膏を塗布してもいいかもしれません。
痛みが強い場合や原因がわからない場合、不安な場合は、早急に耳鼻科で治療を開始すべきものも中にはありますので、早めの耳鼻科受診をお願いします。
「耳の奥が痛い」ときの正しい対処法は?
早く治したい場合や上記のような市販薬で症状が収まらない場合は、速やかに耳鼻科を受診してください。
イヤホンや耳栓や耳かきは、治療が終了するまでは基本的には避けてください。
「耳の奥が痛い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「耳の奥が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
耳の奥が痛く、肩こりやめまいがする症状の原因と対処方法を教えて下さい。
田中 志真医師
めまいの程度にもよりますが、耳の痛みに伴って、立っていられないほどのつよいめまいですと「内耳炎」を来している(発症している)可能性が高いので、すぐに耳鼻科や救急科の受診をしてください。耳の痛みやめまいが軽い場合は少し様子をみてもいいかもしれませんが、重症化する可能性もあるので、なるべく早めに耳鼻科を受診してください。
耳の奥が痛い症状は、イヤホンやヘッドホンによる影響は考えられますか?
田中 志真医師
耳の穴の中にいれるタイプのイヤホンを長時間いれてしまうと「外耳」が痛くなることもありますが、それほど大きな影響はないかと思われます。
長時間のヘッドホンやイヤホンの装着で音楽を聴いていると、「ヘッドホン難聴」という難聴がおこしてしまう場合もあるので、難聴にならないよう、長時間装用はさけてください。
一瞬耳の奥を刺すような痛みがあります。何科にかかるべきでしょうか?
田中 志真医師
一瞬の痛みが反復しなければ(繰り返し起こらなければ)様子をみてみましょう。あまりにも反復するようでしたら(繰り返すようでしたら)、まずは耳鼻科を受診してください。鼻の風邪や喉の風邪がひどくなると耳に炎症が及ぶことが多いので、鼻や喉も一緒に診察してもらいましょう。
噛むと耳の奥がズキンと痛むのは、歯医者に行くべきでしょうか?
田中 志真医師
噛むと耳の奥がズキンとするのは、「顎関節症」という顎関節の病気です。耳鼻科では治療することができないので、歯科・口腔外科を受診してください。
まとめ
耳の痛みは、大部分が耳自体に炎症があることがほとんどですが、重大な病気が隠れていることがあります。耳には聴力や平衡感覚(体のバランスのこと)など重要器官が存在するので、重症化する前になるべく早めに耳鼻科を受診しましょう!
「耳の奥が痛い」で考えられる病気と特徴
「耳の奥が痛い」から医師が考えられる病気は27個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
耳鼻科の病気
多くの場合には耳の病気によって耳の奥が痛みますが、感染症など全身の病気に伴って症状が出現することもありますので、耳の奥の痛み以外にも他に気になる症状があるかどうかを確認し、医師にも伝えてください。
「耳の奥が痛い」と関連のある症状
「耳の奥が痛い」と関連している、似ている症状は12個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 耳が痛い
- 奥歯から耳にかけて痛い
- 耳の後ろが痛い
- 聞こえが悪い
- 顔面の麻痺がある
- めまいがする
- 耳鳴りがする
- 口が痛い
- 喉が痛い
- 鼻水がでる
- 耳の周りのリンパ節が腫れている
- 顎を動かすと耳の周りがいたい、音がする
「耳の奥が痛い」他に、これらの症状が見られる際は、「急性中耳炎」「耳管狭窄症」「帯状疱疹」「外耳道異物」「顎関節症」などの病気の存在が疑われます。
複数の症状がある場合やなかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。