「手首がズキズキ」する時の対処法はご存じですか?主な原因も医師が解説!

手首がズキズキを治すには?メディカルドック監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
岩佐 沙弥(医師)
山口大学医学部卒業。初期研修医終了後、整形外科医として勤務。現在はリハビリテーション医学を専門とし、幅広い疾患による障害の治療を行っている。地域の医療に携わってきた経験が長く、現在も地域のクリニックに勤務。一人一人の生活に合った運動や食事の提案を行えるよう心がけている。
【資格】
医学博士、整形外科専門医、リハビリテーション科専門医・指導医、日本医師会認定産業医、障害者スポーツ医
目次 -INDEX-
手首がズキズキする症状で考えられる病気と対処法
手首に感じる「ズキズキ」という痛みは、日常生活のさまざまな場面で多くの人が経験する症状です。単純な使いすぎによるものから、時には何らかの病気が隠れていることもあります。その痛み方や発生した状況によって、原因が大きく異なります。まずは、ご自身の痛みがどのようなものか、注意深く観察してみましょう。ここでは、整形外科専門医の視点から、手首の痛みで考えられる原因や、ご自身でできる対処法、そして病院へ行くべき目安について解説します。
急に手首がズキズキして痛む症状で考えられる原因と対処法
急に鋭い痛みが走る場合は、捻挫(ねんざ)や骨折、TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)といった外傷性の原因が疑われます。患部を安静にし、冷やし、弾性包帯などで適度に圧迫し、心臓より高く上げる「RICE処置」を試みてください。特に、強い痛みや腫れ、手首の変形が見られる場合は、骨折の可能性もあるため、直ちに整形外科を受診してください。
片方の手首がズキズキ痛む症状で考えられる原因と治し方
左右どちらかの手首だけ痛む場合、よく使う手に偏って負担がかかっていることが多いです。片手で荷物を持つ習慣や、スポーツで特定の手を使う動作が原因になることもあります。 患側の手首を使いすぎないように工夫し、痛む動作を避ける必要があります。どうしても使わなければいけない時はサポーターで固定するのが有効です。長引く場合は、腱鞘炎の悪化やガングリオンの可能性もあるため医師の診察を受けましょう。
手首を曲げるとズキズキ痛む症状で考えられる原因と治し方
手首を曲げたときに痛む場合は、腱鞘炎あるいは手根管症候群の初期症状が考えられます。特にタイピングやスマホ操作で痛みが出やすいのが特徴です。 手首を反らす・曲げる動作を控え、作業の合間にストレッチや休憩を入れると改善する場合があります。炎症が強い時期は湿布や痛み止めを併用するのが良いでしょう。
手首の内側がズキズキして痛む症状で考えられる原因と対処法
手首の内側(掌側)の痛みは、手根管症候群の進行や屈筋腱の腱鞘炎が疑われます。手首を酷使しないこと、サポーターで固定するのが有効です。夜間痛を伴ったり、指や手のしびれや握力低下を伴う場合は手根管症候群がひどくなってきている可能性があるため、早めに整形外科を受診しましょう。
手首の真ん中・血管がズキズキして痛む症状で考えられる原因と対処法
手首の中央部や血管のあたりが痛む場合、血行障害や神経の圧迫に加えて、ガングリオンが血管を圧迫しているケースもあります。動脈炎や心臓・循環器系の問題が背景にあることもまれにあります。脈打つような痛みが続く、しびれや手の色調変化を伴う場合は、整形外科だけでなく血管外科・内科の受診も検討が必要です。
すぐに病院へ行くべき「手首のズキズキ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
手首がズキズキして動かせない場合は、整形外科へ
応急処置をして症状が落ち着いても、放置してはいけない症状がいくつかあります。
強い痛みで手首を動かせない、手首の形が変形している、腫れがひどいといった症状がある場合は、骨折や脱臼の可能性があるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
痛みが数日経っても引かない、または悪化する場合も、自己判断せず、一度専門医に診てもらうことが大切です。
病院受診・予防の目安となる「手首がズキズキ」するときのセルフチェック法
手首の痛みは、ご自身の動作や痛みの特徴を注意深く観察することで、ある程度原因を絞り込むことができます。以下のチェック法を試してみて、当てはまる項目がないか確認してみましょう。
・手首を反らせる、または内側に曲げると痛む:この動作で痛みが生じる場合、関節や腱、軟骨に問題が起きている可能性があります 。特に、手首をひねる動作で痛みが強くなる場合は、TFCC損傷や手関節滑膜炎の可能性も考えられます。
・親指を内側に曲げて握り、手首を小指側に倒すと痛む:この動作は、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の代表的な診断法の一つです。痛みが強くなる場合は、この病気が疑われます。
・手首の掌側、特に親指・人差し指・中指にしびれや痛みを伴う:夜間や明け方に痛みが強くなる場合は、手根管症候群が疑われます。
・手首を動かすと、腱が擦れるような音や感覚がある:腱鞘炎など、腱の炎症が原因の場合、ギシギシとした音や感覚を伴うことがあります。
・左右対称の関節に痛みや腫れがある:特に朝起きたときに手首や指がこわばって動かしにくい「朝のこわばり」が数週間以上続く場合は、関節リウマチの可能性があります。
「手首がズキズキ」する症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「手首のズキズキ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
腱鞘炎・ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
腱鞘炎は、手首や指を動かすための腱が通るトンネル(腱鞘)に炎症が起きる病気です。パソコンやスマートフォンの長時間使用、育児での抱っこ、家事、スポーツなど、手や指を酷使することが原因となります。まずは手首の安静、湿布や塗り薬、サポーターなどで保存的治療を行い、改善が見られない場合は手術を検討することもあります。安静にしても痛みが引かない、日常生活に支障が出る場合は整形外科を受診してください。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常により、関節に炎症が起こる自己免疫疾患です。進行すると関節が破壊され、変形してしまうことがあります。薬物療法が中心となりますが、早期に治療を開始することが非常に重要です。手首や指の関節に左右対称の痛みや腫れがある、朝起きたときに手首や指がこわばって動かしにくい「朝のこわばり」といった症状が数週間以上続く場合は、整形外科やリウマチ科を受診してください。
TFCC損傷
TFCC損傷は、手首の小指側にある軟骨や靭帯からなる組織が損傷する病気です。転倒して手をついたときや、スポーツで手首をひねる動作を繰り返すことで起こります。まずはサポーターなどで手首を固定し、安静にすることが大切です。痛みが強い場合や保存的治療で改善しない場合は、手術を検討します。手首の小指側に常に痛みがある、ひねる動作で痛みが強くなる場合は、整形外科を受診しましょう。
手関節滑膜炎
手関節滑膜炎は、関節を包む滑膜に炎症が起こる病気で、繰り返しの負荷や外傷、関節リウマチなどが原因となります。手首の腫れや熱感があり、安静にしていても痛みが続く場合は、整形外科を受診し、安静や抗炎症薬などによる治療が必要です。
ガングリオン
手首の関節や腱のそばにゼリー状の袋ができる良性腫瘤に、ガングリオンと呼ばれるものがあります。神経や血管を圧迫するとズキズキ痛みやしびれを引き起こします。処置や手術が必要な場合もあるため、整形外科を受診しましょう。
手根管症候群
手首の真ん中にある「手根管」というトンネルで神経が圧迫される病気です。ズキズキする痛みに加えて、しびれや夜間の手の痛みが特徴です。ひどくなると筋肉が萎縮したり、手の力が入りにくくなるため、しびれが気になる場合は早めに整形外科を受診しましょう。
「手首がズキズキ」するときの正しい対処法は?
早く治したい時はどうしたら良いのか
「早く治したい」と思うなら、何よりもまず痛みの原因となっている動作を休止し、安静にすることです。痛みが出始めた急性期には冷やしたりや冷却効果のあるスプレーを使い、慢性期には温めることで血行を良くすることが効果的な場合もあります。
スマホを持つときの注意点
スマートフォンの使いすぎによる手首の痛みは、片手操作を避ける、手首を不自然に反らせない、30分に1回は休憩を取るといった対策が重要です。
腱鞘炎用のサポーターなどをするべきか
腱鞘炎用のサポーターを使用することで手首の動きを制限し、負担を軽減する効果があります。しかし、サポーターはあくまで補助的な役割と捉え、必要な時だけ適切に使うことが重要です。根本的な解決のためには、安静にすることや、痛みの原因となっている動作を見直すことが最も大切になります 。
「手首がズキズキ」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「手首がズキズキ」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
スマホやマウスの使い過ぎで右手首がズキンと痛みます。腱鞘炎なのでしょうか?
岩佐 沙弥
その可能性は非常に高いです。スマホやマウスの使いすぎは、手首や指の腱に繰り返し負担をかけ、腱鞘炎を引き起こす典型的な原因です。痛みが一時的なものでも、放置すると慢性化することがあります。まずは、使用時間を減らす、持ち方を変えるなどの対策を試み、それでも痛みが続くようであれば整形外科を受診してください。
手首がズキズキ痛むのは何が原因でしょうか?
岩佐 沙弥
原因は多岐にわたります。最も多いのは、腱鞘炎や関節炎といった「炎症」です。その他、外傷による捻挫や骨折、神経の圧迫による手根管症候群、良性腫瘍であるガングリオン、さらには関節リウマチのような全身の病気が原因となっていることもあります。痛みの特徴や、他にどんな症状があるかによって原因を絞り込むことができます。
手首がズキズキ痛むのは関節リウマチの初期症状でしょうか?
岩佐 沙弥
関節リウマチの初期症状として、手首の痛みや腫れが見られることは少なくありません。特に、朝起きたときに手や指のこわばりが1時間以上続く場合や、左右対称の関節に痛みがある場合は、関節リウマチの疑いがあります。自己判断せず、早めにリウマチ科や整形外科を受診し、専門医の診察を受けることが重要です。
手首を反らせたり内側に曲げるとズキズキするのは不健康な状態ですか?
岩佐 沙弥
特定の動作で痛みが生じる場合、関節や腱、軟骨に何らかの問題が起きている可能性があります。これは、正常な状態とは言えません。特に、手首をひねる動作で痛む場合はTFCC損傷も考えられます。無理に動かし続けず、医療機関で正確な診断を受けることをお勧めします。
まとめ 手首のズキズキが気になるときは整形外科を受診
「手首のズキズキ」は、日々の生活習慣が原因であることが多い一方で、時には見過ごせない病気のサインであることもあります。少しの痛みだからと放置せず、まずは安静にすることが第一の対処法です。しかし、痛みが数日経っても引かない、腫れやしびれを伴う、といった場合は、迷わず整形外科を受診してください。
早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、スムーズな日常生活を取り戻すことができます。ご自身の身体の声に耳を傾け、無理のない範囲でケアを続けましょう。
「手首のズキズキ」症状で考えられる病気
「手首のズキズキ」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
単純な使いすぎによる症状もありますが、上記に挙げるような何らかの病気が隠れていることもあります。その痛み方や発生した状況によって、原因が異なるため改善しない場合には整形外科を受診するようにしてください。
「手首のズキズキ」に似ている症状・関連する症状
「手首のズキズキ」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 指の痛み・痺れ
- 腕の痛み・だるさ
- 首・肩の痛み
- 力が入りにくい
- 関節の腫れや熱感
上記のような症状がある場合や、痛みが数日経っても引かない、腫れやしびれを伴う、といった場合は早めに整形外科を受診してください。