「膝に水が溜まる」原因や初期症状はご存知ですか?対処法も医師が徹底解説!
膝に水が溜まった時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
佐藤 裕介(医師)
日本整形外科学会認定 専門医
その他資格
日本医師会認定産業医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、骨粗鬆症認定医、日本小児整形外科学会認定医
膝に水が溜まるとは?
一般的に膝に水が溜まる状態とは、膝の関節内に過剰な液体が貯留することを指します。
この液体は通常、関節液と呼ばれており、関節が滑らかに動くのを助ける役割をしています。しかし、怪我や炎症、感染症などによって、関節液が過剰に生成されたり、あるいは排出がうまくいかなかったりすると、関節液が溜まったことが理由で、膝の痛みを引き起こすことがあります。そのため、膝関節に何らかの異常があると、初期症状として、膝の痛みの症状が出ることがあります。
ただし、膝が腫れることが必ずしも関節液が溜まっているということだけを指すわけではありません。実際には、関節の中の液体が溜まっていること以外に、関節の外の軟部組織が腫れていることもあります。また膝の後ろが腫れている場合などは、ベーカー嚢腫といって袋に水がたまっている疾患の場合があります。あるいは、外傷や関節の手術後、または血液が固まりにくい病気などがあり、関節の中に血液が溜まる「関節出血」が起こることもあります。
そのため腫れている場所によっては、膝の中(関節)以外に原因があることや起こりやすい疾患に違いがあります。
膝に水が溜まる原因
それでは、ここからは膝に水が溜まる原因を解説していきます。
炎症
膝の変形や関節リウマチなどの炎症により、関節液の産生が過多となり関節液が貯留することがあります。関節液の産生と吸収のバランスがアンバランスとなり、関節の中の水が溜まった状態になります。関節の中の水が溜まり、見た目にも膝が腫れてきます。
痛みの症状が強い場合や腫れが強い場合は整形外科を受診し、膝のレントゲンや血液検査などを行うことをお勧めします。
感染
膝に限らず、関節の中は本来無菌状態です。しかし、なんらかの原因により細菌が入ると化膿性膝関節炎(かのうせいしつかんせつえん)という状態になることがあります。発熱がある場合や、膝の手術後に今まで落ち着いていたのに腫れてきたり膝が熱を持っている感じが出てきたりした場合は注意が必要です。化膿性膝関節炎の場合は緊急性が高いため、緊急の手術を行うこともあります。また関節の外の軟部組織が腫れることがあり、その場合は蜂窩織炎(ほうかしきえん)という関節の外の皮膚組織の感染が起こっていることもあります。いずれも血液検査や膝関節穿刺(しつかんせつせんし:関節の中に注射器を刺し、実際に関節の中に溜まっている液体などを調べること)などを行い判断します。
外傷
膝をぶつけたあとや転んだあとなどに膝が腫れる場合は、膝の関節の中に血液が溜まっていることがあります。膝の関節の中に及ぶ骨折などがある場合は、膝の関節の中に血液が溜まり腫れてきます。その場合は膝関節のレントゲン撮影などを行ない、骨折があるかどうかを調べます。またMRIを撮影して靭帯の損傷などを詳しく調べ、確認する必要があります。
膝に水が溜まる状態の初期症状
正常な人でも、膝の関節の中には少量の関節液が存在します。関節液は滑膜という組織が産生し、吸収しています。そのバランスが崩れると、関節液が過剰に溜まり、いわゆる膝に水が溜まるという状態になります。そして、関節液の量が多くなった場合は、関節の中の圧が高まり、初期症状として膝の痛みの症状としてでることがあります。ここからは、膝に水が溜まる状態における初期症状について述べていきます。
膝の腫れや膨らみ
膝周辺が膨らみ、触ると柔らかい感じがします。
まずは膝を高くして安静に保ち、冷却パックを当てることで腫れを抑えることができます。
腫れが長引く場合や痛みが強い場合は早めに整形外科を受診しましょう。
歩行時や膝の曲げ伸ばし時の痛み
膝に水が溜まると、動かすたびに痛みを感じることがあります。
無理な運動は避け、安静にすることが大切です。痛みがひどい場合は、市販の痛み止めを使用することも検討してください。このような症状がある場合には、整形外科を受診しましょう。痛みが続く場合は診察を受け、原因を特定する必要があります。
膝の動きの制限
膝の腫れにより、曲げたり伸ばしたりする動きが制限されることがあります。
膝を無理に動かさず、適度な休息を取ることが重要です。
動きの制限が続く場合は、早めに整形外科専門医の診断を受けましょう。
「膝に水が溜まる」症状の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「膝に水が溜まる」に関する病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
変形性膝関節症
主に加齢による膝の変形で、軟骨や半月板などがすり減ることより起こります。滑膜を刺激することによる炎症で膝に水がたまります。膝に水が溜まる原因として多くみられ、レントゲンを行うことで診断できます。必要な場合はMRI検査なども行います。
変形性膝関節症に対する治療法には、保存治療(手術をしない方法)と手術があります。痛みの程度やレントゲン上での変形の程度によって治療方針が決まります。
自分で治すことを目指したいという場合は、大腿四頭筋という太ももの筋肉をつけることや、肥満の方はまず減量することも良いでしょう。医療機関では、内服加療や湿布、膝関節のヒアルロン酸注射などを行うことが一般的です。手術加療は、関節鏡手術や、骨切り術、人工関節置換術などを行います
疼痛が強い場合や、O脚が強く悩んでいる場合などは病院に受診し、レントゲンを撮影することで診断がつくことが多いです。整形外科に受診することをお勧めします。
半月板損傷
半月板は、膝関節の中でクッションの役割を果たしています。運動などをきっかけに膝の半月板が傷ついたり、加齢により半月板が損傷したりすることがあり、これを半月板損傷といいます。
損傷(断裂)の程度や断裂の仕方により、手術加療か保存加療かが選択されます。レントゲンでは半月板は写らないため、診断のためにMRIを撮影します。
疼痛が強い場合や、膝が固まって動かなくなってしまった(ロッキング)場合には、早めに整形外科に受診することをお勧めします。
関節リウマチ
関節リウマチは自己免疫性疾患による疾患で、自己抗体が滑膜を刺激して関節液を生じます。
膝の腫れだけでなく、さまざまな関節が腫れることがあり、指の関節が腫れることなどが特徴です。全身の病気のため、貧血症状がでたり、体がだるくなったりすることがあります。重症の場合は関節が変形したり、固まったりしてしまいます。
治療法では、関節リウマチ自体の治療が必要です。内服や注射製剤によるリウマチの治療を行います。血液検査や、超音波検査などを行い診断します。
さまざまな関節に疼痛がある場合、指の関節が腫れている場合などは、整形外科、リウマチ科(内科)に受診し、血液検査などを行うことが重要です。
早期発見により、薬物治療の介入を早期に行うことが重要です。薬物治療も昔と比べさまざまな薬が開発されたので、治療の選択肢が増えました。
痛風
痛風は尿酸という成分がたまることにより、尿酸の結晶成分が滑膜を刺激し関節液を生じます。暴飲暴食や肥満、激しい運動などによって血液中の尿酸値が高まってしまうことで、関節の中に尿酸の決勝が溜まります。すると、関節液が溜まったり、足の指などが腫れたり痛くなったりします。
似たような名前で偽痛風(ぎつうふう)というものもあります。これはピロリン酸カルシウムという成分が関節の中に溜まることにより引き起こされます。診断の際には関節穿刺を行い、結晶成分の確認を行います。偽痛風の場合は、炎症を抑える内服薬で改善することが多いと言われています。
血液検査を行い、尿酸値の測定をします。また関節の水を抜いて検査を行うこともあります。痛風の診断となった場合は、食生活の見なおしや、尿酸値を下げるお薬で治療を行います。
関節が腫れたり、赤くなったりしており、いわゆる痛風発作を起こしてしまった際には、早めに整形外科を受診しましょう。また、健診などで尿酸値が異常高値であったときは、症状がなくても整形外科、内科に受診し、診察を受けることをお勧めします。
膝に水が溜まった状態の治療法
関節穿刺
関節の中に水が溜まっている場合は関節の中に針をさして、液体を抜いて液体成分を確認する方法があります。これを関節穿刺といい、整形外科のクリニックや病院で行います。見た目の色で、通常の関節液なのか、血液なのか、膿瘍(のうよう;膿のこと)なのかなどを判断します。必要に応じて追加の検査で結晶成分があるかどうかや細胞数が増えていないかなどを確認します。
関節穿刺は一般的には外来で行います。関節穿刺の際に膿瘍を疑う見た目であった場合は、化膿生関節炎の疑いがあるため、即入院になることがあります。水が溜まっている状態が続く場合は定期通院が必要となります。また原因によって、薬物治療や手術などが必要になります。
膝に水が溜まるときはなにか原因があるので、それぞれの原因に対して前述したような治療を行います。
物理療法
炎症を抑え、膝の機能を改善するために、冷却療法、温熱療法、電気刺激療法などの物理療法が行われることがあります。整形外科やリハビリテーション科が主体となります。
通常、外来治療が中心ですが、状態によっては入院治療が必要な場合もあります。また、通院は必要となることが多いと考えられ、定期的なリハビリテーションや経過観察が必要となります。
手術
膝の状態によっては、関節鏡を用いた手術が必要な場合があります。これは、小さな切開からカメラと器具を挿入し、関節内の問題を直接視覚化しながら治療を行う方法です。整形外科で行います。変形性膝関節症が原因の場合は、人工関節置換術を行うこともあります。
手術が必要な場合、入院が必要です。退院までの期間は手術の内容や患者さんの回復状態によって異なりますが、一般的には数日から2週間程度です。手術後は通院が必要です。定期的な診察やリハビリテーションが行われます。
治療法は膝の状態や原因によって異なりますので、専門医の診断と指導のもとで適切な治療を受けることが重要です。
膝に水が溜まる状態の対処法
冷やす
すぐに自宅でできることとしては、急性期の腫れの場合は冷やすことで、腫れを落ち着かせることができます。アイス枕や、タオルなどで覆った氷嚢などで冷やしましょう。
腫れが強い場合や、赤く腫れている場合、疼痛が強い場合は整形外科など病院に受診してください。
安静
炎症が強い状態で関節に水が溜まっていることがあるため、腫れの程度が強いときは安静にしましょう。炎症が強く出ている時期はマッサージなどで刺激することも控え、安静にしましょう。
圧迫
弾性包帯を使用して膝を圧迫し、腫れを抑えましょう。ただし、包帯を巻きすぎると血流が悪くなる可能性があるため、締め付けが強すぎないよう注意することが大切です。また、必要に応じて市販の痛み止め(例: 非ステロイド性抗炎症薬)を使用しても良いでしょう。ただし、長期間の使用や過剰な使用は副作用のリスクを高めるため、用法・用量を守ることが重要です。
膝に水が溜まる状態の予防法
減量
膝の変形を予防する方法として、減量が重要です。体重が重いことにより、膝関節に負担がかかり膝の変形や炎症を引き起こすことがあります。
そのため減量することにより、膝関節への負担を和らげることができます。
筋トレ
大腿四頭筋という太ももの筋肉を鍛えることにより膝関節への負担を減らすことができます。水中運動やエアロビックエクササイズなどを含めた運動療法は、ガイドラインでも推奨されています。
高尿酸血症に注意
尿酸値が高くなると起こる痛風により関節液が貯留することがあります。尿酸値が高い状態をそのままにしていくと、痛風発作という痛みがでてしまうことがあります。菜食を中心とした食生活にきりかえプリン体の多い食品は避けることが重要です。特にビールやレバー、アジの干物などがプリン体の多い食品といわれています。
「膝に水が溜まる」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「膝に水が溜まる」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膝に水が溜まった場合、自然と治りますか?
佐藤 裕介医師
もともと膝の関節の中にはだれしも関節液があります。常に産生と吸収を繰り返していて、自然に吸収されることもあります。
どれくらいで治るかは、個人差があります。痛みが強く困っている場合は、病院を受診し検査をすることをお勧めします。
膝に水が溜まった場合、水を抜いたほうがいいですか?
佐藤 裕介医師
水が多く溜まっていることにより、疼痛の症状がでている場合は抜いたほうがいいと考えます。また水を抜いて、それを検査することにより水が溜まっている原因が分かることがあります。水を抜くことにより関節の中の圧が下がり、痛み症状の緩和につながります。
膝に水が溜まった症状を治療した場合、どれくらいで治りますか?
佐藤 裕介医師
水が溜まった原因によります。水を抜くことにより一時的に、疼痛の軽減や関節内の液体の減少が期待できます。どれくらいで治るかは原因により差があります。原因を治療することが大事です。水を抜くと癖になるとよく言われますね。しかし、抜いたから水が溜まりやすくなるのではなく、水がたまる原因があるからまた水が溜まってしまうのです。
膝に水が溜まった状態で運動を行っても大丈夫でしょうか?
佐藤 裕介医師
水がたくさん溜まった状態や疼痛がある状態では、運動は控えたほうが良いでしょう。運動により炎症が悪化し、さらに水が溜まる恐れがあります。疼痛が強くない場合や症状が落ち着いてきた場合は、ウォーキングなどの軽い運動から始めましょう。急に激しい運動などを行うと、落ち着いていた炎症が悪化することがあります。
まとめ
膝の水が溜まるというと膝の関節の中に水が溜まっていることがほとんどです。しかし、膝の関節の外が腫れていて、一見膝の水がたまっているかのように見えることもあります。なぜ膝に水が溜まってしまうのかが大事であり、その原因を見つけることが重要です。その原因に対して行う検査は、血液検査やレントゲン、MRI、関節液の検査などさまざまです。膝に水が溜まっていて膝の曲げ伸ばしが不自由になっていたり、疼痛で困っていたりする場合は病院を受診し原因を調べ、そして治療していくことが重要です。
「膝に水が溜まる」で考えられる病気
「膝に水が溜まる」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
膝に水が溜まる原因としては、関節に炎症が起こったり、外傷によって半月板などが傷ついていたりすることが挙げられます。整形外科的な疾患が多いので、気になる症状があればまずは整形外科を受診してみましょう。
「膝に水が溜まる」に似ている症状・関連する症状
「膝に水が溜まる」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 膝が腫れる
- 膝が曲がらなくなる
- 膝に痛みが生じる
- 膝が赤くなる