「背中の右側が痛む」原因とは?肩甲骨の下が痛む症状も解説!
背中の右側が痛む時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
梅村 将成(医師)
消化器外科・総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患を診療。小児から高齢者まで、健康に悩みを抱えるすべての患者さんが納得した医療を受けられるよう、専門医と総合医の視点をもって日夜診療に努めている。
「背中の右側が痛む」症状で考えられる病気と対処法
背中の痛みは、骨や筋肉の疲労による痛みを考えがちですが、その他にも臓器が関わる病気の可能性もあります。今回は、内科的疾患による背中の右側が痛む症状を中心にお話ししたいと思います。
背中の右側が痛む症状で考えられる原因と治し方
背中の右側が痛む症状で考えられる病気には、さまざまあります。もちろんその疾患により痛みの程度や治療法は全く異なります。
なかには、背中の痛みが急激に起こり我慢できない場合には急性膵炎など、息苦しさや呼吸困難感・胸の痛みがある場合には気胸など、緊急性の高い病気も考えられます。もし痛み症状が強ければ早めに医療機関を受診し適切な検査を受けるようにしてください。
背中の右側がズキズキ・チクチク痛む症状で考えられる原因と治し方
背中の右側がズキズキ・チクチク痛む症状で考えられる頻度の高い原因には、十二指腸潰瘍があります。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは、十二指腸壁が何らかの原因で損傷される病気で、発症原因の多くはピロリ菌感染が関与しています。また非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる痛み止めの頻用も発症リスクになると考えられています。
十二指腸潰瘍に伴う背中の痛みや腹痛は、特に空腹時や夜間に増悪する(悪化する)ことが特徴です。
治療にはピロリ菌除菌や制酸薬の内服が有効ですので、消化器内科を受診し相談してみてください。
急に背中の右側が痛む症状で考えられる原因と治し方
急に背中の右側が痛む症状で考えられる頻度の高い原因には、尿路結石があります。
尿路結石
尿路結石とは、腎臓で作られた尿の通り道である尿管などに石ができることです。結石は腎臓でできることが多いですが、その結石が落ち尿管にひっかかると激しい痛みが出現します。
尿検査で尿潜血を認めることや腹部CTで結石の存在を認めることで診断します。専門科は泌尿器科ですので、心配な方は受診し相談してみてください。
背中の右側で肩甲骨の下が痛む症状で考えられる原因と治し方
背中の右側で肩甲骨の下が痛む症状で考えられる頻度の高い原因には、胸膜炎があります。
胸膜炎
胸膜炎は、胸膜という肺の表面を覆う薄い膜に炎症が起きる病気を指します。細菌感染症や悪性腫瘍が原因となることが多く、背中の痛みや発熱、咳といった症状が現れます。
細菌感染ならば抗生剤治療など原因に対する治療を中心に行います。症状が気になる場合には、内科を受診し検査を受けることをお勧めします。
背中の右側と真ん中が痛む症状で考えられる原因と治し方
背中の右側と真ん中が痛む症状で考えられる頻度の高い原因には、急性膵炎があります。
急性膵炎
急性膵炎とは、膵臓の急性炎症性疾患で、その原因はアルコールと胆石が大多数です。
症状は背中の痛みや上腹部痛ですが、嘔吐、発熱などをきたすこともあります。血液検査と造影CTにより診断、重症度判定が行われます。
急性膵炎は入院治療が必要な疾患で、絶飲食による膵臓の安静と十分な量の輸液投与を行います。命に関わる緊急性の高い疾患の一つとして知られています。
背中の右側と腰の上が痛む症状で考えられる原因と治し方
背中の右側と腰の上が痛む症状で考えられる頻度の高い原因には、急性腎盂腎炎があります。
急性腎盂腎炎(きゅうせいじんうじんえん)
急性腎盂腎炎とは、腎臓に細菌が感染する病気で、背中の痛みや発熱などが出現します。
尿検査・血液検査・CT検査などで診断し、治療には細菌感染を前提に抗生剤投与を行います。全身に細菌感染の影響が波及しやすく特に重症化するため、多くの場合は入院加療(治療)が必要になります。発熱や背部痛がある場合には、内科や泌尿器科に相談してみてください。
背中の右側が痛み、息苦しさを感じる症状で考えられる原因と治し方
背中の右側が痛み、息苦しさを感じる症状で考えられる頻度の高い原因には、気胸があります。
気胸
気胸とは、何かしらの原因で肺から空気が漏れた結果、漏れた空気によって肺が潰されてしまう病気のことです。特に、明らかな原因がなく発症するものを自然気胸といい、背中の痛みや息苦しさ症状が出現します。
気胸の診断は比較的容易で胸部レントゲンで診断できますが、治療には胸腔ドレナージや手術といった侵襲度(体への負担)の高い治療が必要になる場合が多い疾患です。
重症化すると命に関わるため、疑わしい症状がある場合には早急に呼吸器内科・外科を受診しましょう。
女性で背中の右側が痛む症状で考えられる原因と治し方
女性、特に高齢女性で背中の右側が体動時にズキズキ痛む場合、寝起きの動作がしにくい場合は骨粗鬆症による圧迫骨折の可能性があります。圧迫骨折の痛みは体動時に出現するため、安静にして痛みがでる動作を控えましょう。
専門科は整形外科です。代表的な発症契機に、重いものを持ってから痛みが出現した、転倒して尻もちをついてから痛くて動けないなどがあります。命にかかわることはなく緊急性には乏しいですが、時に脊髄損傷などをきたす可能性もあります。早めに受診をしてください。
妊娠前期・中期・後期に背中の右側が痛む症状で考えられる原因と治し方
妊娠中に背中の右側に痛みが出現する時には、妊娠中のホルモンの影響が考えられます。
妊娠したときに分泌されるホルモンのリラキシンには、赤ちゃんが産道を通りやすくするために筋肉や靭帯を弛緩させる作用があります。
その影響で、背中の筋肉をゆるませ負担をかけるため痛みが出現すると考えられます。そのほかにも妊娠が進むにつれて前傾姿勢になるなどの姿勢の変化も疼痛の一因です。
まずは産婦人科に相談しながら、うまく痛みと付き合っていく方法を考えましょう。
更年期に背中の右側が痛む症状で考えられる原因と治し方
更年期の女性で背中の右側が痛む場合には、腰痛症が考えられます。明らかな筋骨格系の異常がなくても背部痛の症状が主体の腰痛症が出現することはあります。
対症療法は安静や鎮痛剤の内服です。ただし日常生活が送れないような重度の背部痛がある、足のしびれなどがある場合は椎間板ヘルニアや腰椎すべり症などが隠れている場合もあります。緊急性はありませんので、診療時間内に整形外科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「背中の右側が痛む」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
背中の強烈な痛みや、呼吸困難感を伴う症状の場合は、救急科へ
背中の痛みの原因になる病気の中で、急激な強い痛みに襲われ我慢できない、意識消失してしまった、息苦しさや呼吸困難感がある場合は緊急性が高いと認識してください。
気胸や急性膵炎などの重症疾患以外にも、急性大動脈解離など心臓や大血管などが関与する疾患が原因である場合もあります。夜間休日でも我慢せず、早めに医療機関を受診し適切な検査・治療を受ける必要があります。
「背中の右側が痛む」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「背中の右側が痛む」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃から食道内に胃酸が逆流することで起こる疾患です。背中の痛みや、胸やけやなどの症状が出現します。
逆流性食道炎は命に関わるような病気ではありませんが、生活の質が低下する原因となる一方で、内服治療によって改善しやすいという特徴があります。
内視鏡検査で診断できますので、早めに消化器内科を受診し相談してみてください。
胃潰瘍
胃潰瘍は、何かしらの原因で胃壁が損傷されクレーター状の胃壁欠損が出来てしまう病気です。
主な原因にピロリ菌感染と解熱鎮痛剤があり、背中の痛みや、胃痛、嘔吐、食思不振などの症状が出現します。内視鏡検査が必要な場合が多く、治療には制酸薬などが有効です。
心配な方は消化器内科を受診し相談してみてください。
膵炎
急性膵炎とは膵臓の急性炎症性疾患で、その原因はアルコールと胆石が大多数です。
急性膵炎の最も多い症状は上腹部痛ですが、背部痛や嘔吐・発熱などの症状が出現することがあります。そして痛みは激痛と表現される強い痛みが特徴です。
重症膵炎といわれる状態では、意識障害やショック状態になり命に関わることもある緊急性の高い疾患です。急性膵炎には入院治療が必要で、絶飲食による膵臓の安静と十分な量の輸液投与を行います。
専門科は消化器内科ですが、夜間では救急科を受診するなど早急な対応が必要です。
腎盂腎炎(じんうじんえん)
腎盂腎炎とは、腎臓が細菌感染により炎症を起こしている疾患です。細菌は尿道・膀胱から逆行性に侵入し感染します。
多くは急性腎盂腎炎と呼ばれる状態で、急激に発症し非常に強い炎症が生じるため、高熱や悪寒戦慄と呼ばれる震え、背部痛が生じます。抗生剤による適切な治療が必要で、放置すると敗血症という重症感染症にまで進行する場合もありますので、早めに内科や泌尿器科を受診するようにしてください。
尿路結石
尿路結石とは、尿の通り道である腎臓・膀胱・尿道に結石ができることを言います。
特にその結石が尿管に挟まる尿管結石の場合に激しい背部痛が出現します。
結石ができる原因は、体内のシュウ酸、リン酸、カルシウム、尿酸などが結晶化することによるもので、日々の食生活や代謝異常などが関与します。
結石が膀胱にまで自然に落ちてしまえば痛みは消失しますが、時に石を取り除くための外科的治療が必要になる場合もあります。心配な方は泌尿器科へ相談してみてください。
「背中の右側が痛む」ときに市販薬は使用してもいい?
代表的な市販の痛み止めである非ステロイド性消炎鎮痛剤(ロキソニン)などは、胃潰瘍や膵炎、尿管結石には一時的には有効です。しかし原因が取り除かれない限り痛みが消えることはなく、痛み止めで誤魔化している間に重症化する場合もあります。
痛み止めを服用して1-2日しても痛みが消失しない場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
「背中の右側が痛む」ときの正しい対処法は?マッサージは有効?
背中の右側が痛む場合で、筋肉などが原因の場合はストレッチやマッサージが有効です。しかし、当然ながら内科的疾患の場合にはマッサージは効果的ではありません。背中の右側が痛む原因に、打撲などの外傷性変化が疑われる場合は湿布や冷やすことが効果的です。そのような場合はある程度思い当たることがあるはずで、整形外科を受診することをお勧めします。それ以外の場合で、痛みを最短で消すためには、内科を受診して検査を受けることが必要です。
「背中の右側が痛む」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「背中の右側が痛む」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
背中の右側が痛む症状のセルフチェック方法を教えて下さい。
梅村 将成 医師
アルコール多飲があるか、脂っこいものを食べ過ぎていないかなどの日々の生活習慣の異常が胃潰瘍・膵炎・尿路結石などの疾患につながる場合もあります。
日々の生活習慣を見直すことが必要です。
深く息を吸うと背中の右側が痛いときは何科にかかるべきですか?
梅村 将成 医師
気胸の可能性があり、内科や呼吸器内科を受診することをお勧めします。
背中の右側が痛むのは、運動不足や骨による異常が原因でしょうか?
梅村 将成 医師
その可能性もありますが、それだけとは限りません。
ご飯を食べると背中の右側が痛みます。胃の不調でしょうか?
梅村 将成 医師
その場合は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の可能性がありますので、消化器内科を受診してみてください。
背中の右側が痛む時に、ストレッチをしても良いでしょうか?
梅村 将成 医師
ストレッチ自体を制限する理由はないですが、対象疾患が多いので個別の事例については主治医の先生と相談していただければと思います。
まとめ
背中の右側が痛む場合には、筋肉などの痛みだけではなく多数の内科疾患が関与している可能性もあります。時に命に関わる場合もあるため、痛みが強い場合などはすぐに医療機関を受診するようにしてくださいね。
「背中の右側が痛む」で考えられる病気と特徴
「背中の右側が痛む」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
背中の痛みの原因には、胃や腸の痛みもありますが、大動脈や胸膜といった胸部臓器や、腎臓などの後腹膜臓器の症状が疑われやすくなります。
「背中の右側が痛む」と関連のある症状
「背中の右側が痛む」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「背中の右側が痛む」他に、これらの症状が見られる際は、「逆流性食道炎」「腎盂腎炎」「急性膵炎」「大動脈解離」「尿路結石」などの病気の存在が疑われます。
複数の症状がある場合やなかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。
・急性膵炎と慢性膵炎(一般社団法人 肝胆膵外科学会)