「足がしびれる」原因は?片足だけしびれる場合や治し方【医師解説】
足のしびれの症状でMedical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・治し方などを解説します。足が痺れが続いて「何かの病気?」と不安なときは迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。
「足のしびれ」の症状で考えられる病気と対処法
足がしびれたり、感覚が鈍くなったりしたら不安になりますよね。しびれは、力が入らなくなるような「麻痺」と、びりびりとしびれるような「異常感覚」のどちらの意味でも使われますが、ここでは「異常感覚」を中心に解説します。
足のしびれは、末梢神経から脳に至るまでの神経の異常で出現しますが、血流障害や局所の圧迫、ビタミン欠乏などと原因はさまざまです。対処法や早急な受診の必要性は病気ごとで異なりますので、どのような症状でどのような病気が考えられるのかを解説いたします。
足のしびれがずっと続く症状で考えられる原因と治し方
足のしびれがだんだんと強くなる、姿勢に関わらず常にしびれがあるなどの症状を指します。このような場合、糖尿病やビタミンの欠乏などによる末梢神経障害(ニューロパチー)が疑われます。
糖尿病性ニューロパチー
糖尿病性ニューロパチーは、主に手足の先(特に足先)にしびれや感覚の鈍さが出現し、数か月以上かけて徐々に広がってくる病気です。糖尿病のコントロールが悪いことや、糖尿病を長期間患っていることが原因です。治すことは難しく、予防することが重要であるため、糖尿病である場合にはしっかりと治療を受けましょう。
ビタミン欠乏性ニューロパチー
ビタミン欠乏性ニューロパチーは、特にビタミンB1の欠乏で多く、昔から脚気(かっけ)などとして知られています。偏食、食欲不振、日常的な大量飲酒、胃切除などが要因となり、手足のしびれや脱力感が出現し、数週間~数か月の経過で悪化します。欠乏した栄養素の補充により症状の進行はとまり、症状もやや改善するため、バランスの取れた食事、節酒を行いましょう。
緊急性はありませんが、しびれが広がるなど症状の悪化がある場合には脳神経内科を受診してください。
左足・右足など片足のしびれ症状で考えられる原因と治し方
片足のしびれだけに突然しびれが出現した場合には、脳卒中(脳梗塞/脳出血)や閉塞性動脈硬化症の可能性があります。
脳卒中・閉塞性動脈硬化症
脳卒中では足と同側の顔や手などにもしびれが出ることが多く、しびれに加えて脱力を伴うこともあります。また、脳出血では頭痛や嘔吐を伴うこともあります。
閉塞性動脈硬化症は足に向かう動脈が狭くなったり、閉塞してしまうことで足の血流が不足してしびれや痛みがでる病気です。症状のある足が冷たくなったり、動かした時に痛みが出現して悪化したり、足の血管で脈が触れなくなるなどの症状が出現します。
どちらも再発や悪化のリスクがある緊急性の高い病気であるため、すぐに脳神経内科を受診してください。
圧迫性ニューロパチー
足の裏だけなど片足の局所の痺れで体勢の変化や安静などで症状が良くなったり悪くなったりする場合には圧迫性ニューロパチー(足根管症候群、モートン病など)の疑いがあります。足に合わない靴の使用やハイヒールの常用など、足を締め付けるような原因がある場合には原因を取り除いてください。原因をなくしても症状が強い場合には、手術で圧迫を解除する方法などもあるため整形外科で相談してください。
手と足のしびれ症状で考えられる原因と治し方
手と足のしびれが数時間~数日かけて急激に出現したり悪化したりすることがあります。このような場合、ギラン・バレー症候群が疑われます。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群は、上気道炎や腸炎などの何かしらの感染をきっかけに、自身の免疫が神経を破壊してしまうことで発症する病気です。感染症に罹患した1-2週間後に手足にしびれや脱力が出現します。数日~1週間の経過で急激に悪化して、手足が全く動かなくなったり、呼吸が弱くなって人工呼吸器に頼ることが必要になったりします。しびれが数時間~数日の経過で悪くなる場合には、すぐに脳神経内科を受診してください。
就寝時の足のしびれで考えられる症状の原因と治し方
就寝時に足がむずむずとするような違和感や痺れるような不快感が出現して、起き上がったり足を動かしたりすると症状が良くなることがあります。このような場合、レストレスレッグス症候群などが疑われます。
レストレスレッグス症候群
レストレスレッグス症候群は、安静にして他に刺激のないような状況になると足に違和感や不快感が出現する病気で、鉄不足や、カフェイン・アルコールの過剰摂取などが原因に考えられています。
そのため、鉄分の補給やカフェインやアルコールを控える、生活リズムを整えることから始めてみましょう。緊急性はありませんが、症状に困っている場合は脳神経内科を受診してください。
足がしびれて腰痛を伴う症状で考えられる原因と治し方
足がしびれて腰痛もある場合、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさく)や腰椎椎間板ヘルニアが疑われます。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、背骨の変形や靱帯の肥厚により、脊髄が走行する脊椎の中の空間である脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が圧迫を受けることで足に痛みやしびれがでる病気です。
悪化の予防には日常生活で姿勢を正しく保つことが重要です。前傾姿勢により症状が改善するため、杖を使う、自転車移動するなどにより症状を抑えることができます。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは、脊椎と脊椎の間でクッションのような役割をしている椎間板が、変性して脊柱管側に飛び出すことで脊髄を圧迫する病気です。転倒などの外傷だけではなく、重いものを担ぐ、猫背など、日常的に脊椎に負担がかかっている場合には、明らかな誘因なく発症することもあります。安静を心がけてコルセットなどを使用して腰への負担を減らすことで症状を抑えることができます。
転倒などをきっかけに、急激に痺れや麻痺が悪化した場合には、緊急で脊椎の除圧するための手術を要する可能性もあるため、すぐに整形外科を受診しましょう。また、腰の痛みが強い場合や下肢の痺れや脱力で日常生活への支障が大きい場合にも、整形外科を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「足のしびれ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
突然片足がしびれる場合は、脳神経内科科へ
片足のみに強いしびれが突然出現した場合には、閉塞性動脈硬化症や脳卒中の可能性があります。閉塞性動脈硬化症では、症状のある足が冷たくなったり、動かすと痛みが強くなったりします。
脳卒中では、症状のある足と同側の顔や手にもしびれが出現することがあります。どちらも緊急性が高い病気であるため、休日夜間問わず、すぐに脳神経内科または救急外来を受診してください。
「足のしびれ」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「足のしびれ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の動脈が閉塞することで、脳細胞への血流が不足することで発症します。動脈硬化や不整脈などが原因です。原因に応じて生活習慣の改善や抗血栓薬の内服の治療を行います。再発リスクが高い病気であり、発症した場合にはすぐに脳神経内科への受診が必要です。
変形性頸椎症(へんけいせいけいついしょう)
首のあたりでの背骨の変形により脊髄が圧迫される病気です。肩を慣らす、首を急に回す、日常的に長時間携帯電話を見るなどで首を下に向けていることなどが要因となります。頸椎への負担の少ない姿勢や動き方を心がけ、首への負担を軽くすることで症状は軽減します。首の痛みが強い場合やしびれが広がってくる場合は整形外科を受診してください。
椎間板ヘルニア
脊椎と脊椎の間でクッションのような役割をしている椎間板が変性して脊柱管側に飛び出すことで脊髄を圧迫する病気です。転倒などの外傷や、猫背などの日常的に脊椎に負担がかかっている場合には明らかな誘因なく発症することもあります。腰の痛みが強い場合や下肢のしびれが強い場合には整形外科に受診してください。
坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)
坐骨神経が梨状筋などの筋肉に挟まれるなどの要因により坐骨神経が障害を受ける病気です。ストレッチなどで症状の改善が得られることも多いのですが、症状の改善が得られないまたは悪化することもあるため、症状が改善しない場合には整形外科を受診してください。
「足のしびれ」を和らげる、予防するストレッチ • マッサージ法を紹介!
坐骨神経痛や脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)ではお尻や腰の筋肉を伸ばすようなストレッチが有効な場合があります。腰椎椎間板ヘルニアでは症状が悪化する可能性が高いので行わないでください。
ストレッチの方法としては体操座りのような膝抱えの姿勢や座った状態で症状のある足を反対の膝の上にのせて、前傾姿勢となるようなストレッチなどがあります。水分などはしっかりとりつつストレッチを行ってください。症状は1か月程度で改善してきますが、症状の悪化がある場合には整形外科に受診してください。
ただし、ストレッチは有効な病気と逆に症状を悪くしてしまう病気があるため、注意は必要です。悪化した場合には、すぐに医療機関に相談するようにしてください。
「足のしびれ」で飲んでも良い市販薬は?
もともと常用薬で飲んでいる薬との相互作用の問題がなければ、市販薬は飲んでもよいでしょう。しびれの症状に対してはあまり有効な市販薬がありません。しかし、痛みに対してはロキソニン(ロキソニンS®︎)などの鎮痛薬が有効で、しびれに対しても一定の効果が得られる場合があります。
「足のしびれ」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「足のしびれ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
足のしびれを予防するために、生活習慣で何か気をつけることはありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
腰や首に負担のかからない正しい姿勢で生活をすることと、バランスの取れた食事、適度な運動、節酒を心がけましょう。
足のしびれと更年期障害に相関関係はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
更年期症状でも手足のしびれが出ることがあります。
足のしびれと冷えに相関関係はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
足の血流低下がしびれの原因となっていることがあります。
足のしびれと腰痛に相関関係はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどでは腰痛と足のしびれが出ます。
足のしびれがある場合、立ちっぱなし、座りっぱなしは良くないですか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
しびれの出ない姿勢での安静が好ましいです。立ちっぱなし、座りっぱなしは避けたほうがいいですが、やむを得ない場合にはコルセットを使って負担を減らしたり、時々ストレッチを行いましょう。
就寝時に足のしびれを感じることがありますが何科を受診したらよいでしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
レストレスレッグス症候群などの可能性があり、脳神経内科をまず受診してください。
まとめ
足の痺れの代表的な病気として腰部脊柱管狭窄症や坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなどの神経圧迫を原因とした病気がよく知られていますが、脳梗塞やギラン・バレー症候群、急性下肢動脈閉塞症などの緊急性の高い他の疾患が隠れている場合があります。突然に発症する、または、急激に悪化するしびれの場合には、緊急治療が必要な疾患が隠れていることが多いため、すぐに救急病院を受診してください。
「足のしびれ」で考えられる病気と特徴
「足のしびれ」から医師が考えられる病気は22個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
脳神経外科・脳神経内科の病気
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳卒中
- ギラン・バレー症候群
- 糖尿病性ニューロパチー
- アルコール性ニューロパチー
- 葉酸欠乏性ニューロパチー
- ビタミン欠乏性ニューロパチー
- 慢性炎症性脱髄性神経障害
- 多発性硬化症
循環器科の病気
しびれの症状が出現してしまうと治ることはない病気もいくつか存在するため、症状が出現したら早めに受診することや、日頃からの生活習慣の見直しが重要です。
「足のしびれ」と関連のある症状
「足のしびれ」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
「足のしびれ」症状の他に、これらの症状がある場合「脳梗塞」「閉塞性動脈硬化症」「糖尿病性ニューロパチー」「腰椎椎間板ヘルニア」「坐骨神経痛」などの疾患の可能性が考えられます。
複数の症状が見られる場合や突然症状が出現した場合は、早く医療機関への受診をおすすめします。