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「幻覚が見える」原因・考えられる病気はご存知ですか?医師が徹底解説!

「幻覚が見える」原因・考えられる病気はご存知ですか?医師が徹底解説!

幻覚が見えるとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

杉本 裕子

監修医師
杉本 裕子(医師)

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滋賀医科大学医学部を卒業後、愛知県内の大学病院や単科病院にて精神科医として勤務。
日本精神神経学会精神科専門医、日本医師会認定産業医。

「幻覚が見える」症状で考えられる病気と対処法

幻覚とは、実際には存在しない感覚を体験することを指します。五感のそれぞれに対応して、幻視、幻聴、幻臭、幻味、幻触があるほか、身体内部の感覚に関連した体感幻覚も含まれます。ここでは「幻覚が見える」、つまり「幻視」について説明していきましょう。

幻覚が見える症状で考えられる原因と対処法

幻視とは、実際にはいないものが見えるという症状のことを指します。
人や動物、虫が見えることが多く、「窓際に白い服を着た人が立って、じっと自分を見ている」「床を大量の小さい虫が這っている」という具体的なものから、「ぼんやりした黒い影が見える」などさまざまです。
考えられる原因は下記に示すようにたくさんありますが、健康な人でも睡眠不足が続いたりストレスが重なったりすると、一時的に幻視を生じることがあります。

<考えられる原因>

  • レビー小体型認知症
  • 脳腫瘍
  • 片頭痛
  • アルコール離脱
  • てんかん
  • ナルコレプシー
  • せん妄
  • 解離性障害
  • 統合失調症

など

幻覚で虫が見える症状で考えられる原因と対処法

幻覚で虫が見えるのは、アルコールの離脱症状で特徴的な症状であり、アルコール多飲後に急に中止すると起こる可能性があります。アルコール離脱症状は放置すると命に関わる場合があるため、症状が出現した場合はできるだけ早く精神科への受診をお勧めします。

薬を飲んだ時に幻覚が見える症状で考えられる原因と対処法

薬により幻覚が誘発されることがあります。例えば、睡眠薬の副作用に幻覚があり、それ自体に影響されなければ問題ありませんが、幻覚により日常生活に支障がでる場合は、精神科へ相談しましょう。

ストレスで幻覚が見える症状で考えられる原因と対処法

過度なストレスで幻覚がみえることがあります。一時的なものであれば心配いりませんが、持続する場合は精神科への受診を検討しましょう。

高齢者で幻覚が見える症状で考えられる原因と対処法

高齢となり、脳機能が低下し幻覚を見るようになる場合があります。この場合、脳そのものの機能低下によるものなので根本的な治療は難しいです。しかし、幻覚に行動が影響され日常生活に支障をきたす場合には、しばしば精神科で対症的に治療が行われます。

すぐに病院へ行くべき「幻覚が見える」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

幻覚が見える症状が続く場合は、精神科または神経内科へ

一時的な幻視であれば、睡眠不足やストレスからくることもあるため特に心配はいりません。しかし、症状が続く場合には精神科もしくは脳神経内科を受診するようにしてください。

受診・予防の目安となる「幻覚が見える」ときのセルフチェック法

  • 幻覚が見える以外に歩き方が小刻みになり、よく転ぶ場合
  • 幻覚が見える以外に就寝中に突然大声をあげたり、手足をばたつかせたりする場合
  • 幻覚が見える以外に誰もいないはずなのに声が聞こえる場合
  • 幻覚が見える以外に誰かに監視されたり、嫌がらせをされたりしている気がする場合
  • 幻覚が見える以外に生活の中で記憶が抜け落ちていることがある場合
  • 幻覚が見える以外に気がつくと眠ってしまう場合
  • 幻覚が見える以外に笑うと脱力する場合
  • 幻覚が見える以外に起床時に頭痛や吐き気がする場合

「幻覚が見える」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「幻覚が見える」症状に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、血管型認知症に次いで患者数が多いと言われている認知症です。
代表的な症状には、パーキンソン症状、幻視、認知機能の変動、レム睡眠行動異常があります。アルツハイマー型認知症と比べて、物忘れなどの記憶障害は軽度です。
幻視はレビー小体型認知症と診断された患者さんの80%以上にみられると言われており、特に発症早期に見られることが多い症状です。ありありとした幻視が特徴的で、具体的な人物(亡くなった配偶者、両親など)が見えることが多いですが、動物や虫が見えることもあります。
また幻視だけでなく、「床に水が流れている」「カーテンのところに女の幽霊がいる」などの錯覚(錯視)や、「家の2階に人が住んでいる」と訴える<幻の同居人>と呼ばれる現象が起こることもあります。
疑った場合は脳神経内科または精神科を受診してください。

統合失調症

統合失調症は、人口の約1%に発症すると言われている、考えや行動をまとめる能力が徐々に低下する精神疾患です。
幻覚や妄想といった陽性症状や、意欲低下や無為自閉などの陰性症状が主な症状として知られています。
統合失調症では幻覚の中でも、周りに人がいないにも関わらず声が聞こえるという幻聴が出現することが多いですが、稀に幻視を認める場合もあります。
特に児童期に発症する統合失調症は、成人発症のものと比べて幻視の出現割合が多いと言われています。
疑った場合は、精神科において抗精神病薬を用いて治療を行います。

脳腫瘍

脳腫瘍は、脳やその周囲の組織に発生する腫瘍の総称です。
身体の片側の麻痺や痺れ、ふらつき、呂律が回らない、起床時の頭痛や吐き気などが主な症状ですが、特に後頭葉という視覚を司る領域に腫瘍がある場合に幻視が生じることがあります。また、視野が欠けたり物が二重に見えたりすることもあります。
疑った場合は脳神経内科や脳神経外科を受診してください。

てんかん

てんかんとは、脳内で過剰な電気活動が生じることによりさまざまな発作を起こす病気です。
特に後頭葉てんかんでは、白色の閃光、赤や青などさまざまな色をした楕円や曲線、多彩な色が混ざり合った虹などの幻視がもっとも代表的な症状となります。
また、光による刺激がてんかん発作を誘発することがあります。
疑った場合は脳神経内科や脳神経外科、またはてんかんを扱う精神科を受診してください。
基本的には抗てんかん薬の内服で治療を行います。

解離性障害

解離とは、簡単に言うと「自分が自分であるという感覚が失われている状態」のことで、記憶・知覚・意識といった通常は連続して持っている精神機能が途切れている状態です。
解離症状を呈する病気のことをまとめて解離性障害と呼び、以前はヒステリーとも呼ばれていました。
大きなストレスに見舞われたときに自身の心を守るため起こることがあり、部分的に記憶を無くす(解離性健忘)、現実感を感じなくなる(離人・現実感喪失)、自身の中に別の人格が生まれる(多重人格)等、さまざまな症状があります。この解離症状のひとつに、解離性幻覚といって幻視や幻聴をきたすものも含まれます。
疑った場合は精神科を受診してください。
同じく幻聴をきたす統合失調症とは異なり、ストレスなど心的な負荷が原因で生じる疾患のため薬は効果がないことが多く、治療のメインはカウンセリングになります。

アルコール離脱

アルコール離脱は、長期にわたって大量の飲酒をしている人が突然飲酒をやめたり、飲酒量を減らしたりした時に起こります。手の震えや自律神経症状(発汗や頻脈など)、不眠や吐き気・嘔吐などが出現します。
また精神症状として興奮や幻覚、妄想が生じることもあり、「床にたくさんの虫が這っている」などの小動物幻視が特徴的です。
急性期のアルコール離脱は、通常大量飲酒の後だけに発症します。断酒後2日目に最も強く出現し、4~5日間続きます。急性症状が治まった後も、3~6カ月にわたって不安、不眠、自律神経機能異常などが続く人もいます。
症状が出現している場合は内科または精神科を受診してください。
ベンゾジアゼピン系の薬を用いて症状を抑制します。

ナルコレプシー

ナルコレプシーは非常に強い眠気が出現し、試験中や対面での会話中といった場面でも実際に眠ってしまうのが特徴の病気です。
また入眠時もしくは覚醒時に「人や動物がそばにいる、体に触れる」と感じたり、「怪しい人影や、化け物などが寝室に侵入してきて危害を加える」といったような鮮明で現実感のある怖い幻覚を見ることがあります。
その他、笑ったり驚いたりした時に身体の力が抜ける情動脱力発作や、睡眠麻痺(金縛り)といった症状も出現します。
疑った場合は睡眠科または精神科を受診してください。
根本的な治療法は存在しませんが、薬を使用して症状のコントロールを行うことは可能です。

片頭痛

片頭痛に伴う幻覚は、片頭痛の典型的な前兆です。
片頭痛と診断された患者さんの約30%に前兆がみられ、その場合はほぼ全員に何らかの視覚症状が出現すると言われています。
その中でも有名なものが「閃輝暗点」で、突然視野の中に稲妻のようなギザギザの光の波が現れ、徐々に四方に広がり、その場所が暗くはっきり見えなくなる現象です。約20分以内に消失することが多く、大抵その後にズキズキと脈打つような(拍動性)片頭痛が起こります。 このような発作が2回以上出現する場合は、脳神経内科や脳神経外科を受診しましょう。
治療としては症状出現時の内服に加えて、予防薬も使用することができます。

「幻覚が見える」ときの正しい対処法は?

レビー小体型認知症による幻覚は暗い場所で見えることが多いため、部屋を明るく保つことが大切です。また「錯視」といって壁のシミや傷、カーテンの揺れなどが人の顔や模様に見えることがあるため、それらを隠す、また窓は閉めておき本人がいない時に空気を入れ替えるなどの工夫も有用です。

「幻覚が見える」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「幻覚が見える」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

幻覚で人が見えた時はどうすれば良いですか?

杉本 裕子医師杉本 裕子医師

若年~中年の方に起こる一時的な幻覚であれば、ストレスや睡眠不足などが原因で起こっていることが多いため様子をみることができますが、高齢者の方で幻覚が繰り返し起こる場合や、幻覚以外にも何か症状がある場合は、一度脳神経内科や精神科を受診することをおすすめします。

健康な人でも幻覚が見えることはありますか?

杉本 裕子医師杉本 裕子医師

一般的に「金縛り」と呼ばれる睡眠麻痺では、レム睡眠中に覚醒してしまうことによって入眠時幻覚をきたすことがあります。身体を動かせないだけでなく、誰かが部屋に入ってくるのが見えたり、場合によっては自分の上にのしかかってくるという怖い体験を伴うこともあります。睡眠不足やストレス、疲労などが原因で起こることが多いため、生活リズムを見直すことが重要です。

まとめ

幻視を生じる疾患には、脳が原因のものから心が原因のものまでさまざまです。
治療法も疾患ごとに変わってくるため、まずは一度お近くの精神科や脳神経内科でご相談いただき、しっかりと原因を調べていくことが大切になります。

「幻覚が見える」症状で考えられる病気

「幻覚が見える」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

精神科の病気

脳神経内科・脳神経外科の病気

幻覚が見える症状にはさまざまな病気があります。日常生活に支障をきたすような幻覚がある場合は医療機関への受診を検討しましょう。

「幻覚が見える」に似ている症状・関連する症状

「幻覚が見える」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 錯視(見間違い)
  • 幻聴
  • 幻臭
  • 体感幻覚

幻覚には見えるもの=幻視だけでなくさまざまな種類があります。一時的なものであれば心配いらない場合もありますが、症状が持続したり日常生活に支障をきたしたりする場合は医療機関への受診を検討しましょう。

この記事の監修医師