「憂鬱な気分から抜け出せない」のは「うつ病」が原因?医師が対処法も解説!
憂鬱な気分から抜け出せないときの対処法は?Medical DOC監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「憂鬱な気分から抜け出せない」症状で考えられる病気と対処法
些細なことで憂鬱になってしまって、毎日気分が晴れないという悩みには、人によってさまざまな原因や事情があります。
仕事の負担や職場での人間関係に起因することもあれば、不規則な生活や漠然とした不安から憂鬱さが改善しない場合も想定されます。
今回は、憂鬱な気分から抜け出せない症状で考えられる病気や対処策を解説していきます。
憂鬱な気分から抜け出せない症状で考えられる原因と対処法
憂鬱な気分から抜け出せない症状で考えられる原因疾患として、「うつ病」が挙げられます。
うつ病は、日常的に過ごす社会生活に想像以上に強い影響が出る程気分の落胆が続いたり、何事に対しても喜びや嬉しさを持ったりすることが困難になる病気を言います。
うつ病の明確な発症メカニズムは現在でも詳細に解明されていません。
うつ病では遺伝的要因も関与していると考えられていますが、実際にうつ病の罹患するリスクを高める強い効果を示す遺伝子異常タイプは同定されていません。
しかし、うつ病患者の中には情動行動を制御する神経伝達に関する物質のなかのセロトニンやドパミンの機能低下が関連している可能性が示唆されています。
単純な抗うつ薬に反応しない場合には、主に抗精神病薬が使われることもありますし、うつ病によって引き起こされる周辺症状を軽減させるために同時に睡眠薬や抗不安薬などが処方されることもあります。
心配であれば、早急に精神科など専門医療機関を受診しましょう。
憂鬱な気分から抜け出せず心身の不調が起きる症状で考えられる原因と対処法
憂鬱な気分から抜け出せず心身の不調が起きる症状で考えられる原因疾患として、「自律神経失調症」が挙げられます。
自律神経失調症とは自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れることによって引き起こされる症状の総称であり、主に眠れない、疲れが取れにくい、頭痛、便秘、下痢などの症状が現れるほか、情緒不安定や不安感など精神的な症状も認められることがあります。
自律神経失調症は自律神経の乱れによって引き起こされると考えられていますが、実際には検査を行っても明らかな異常や確固たる原因が見つかりません。
基本的には、本疾患を発症した場合には、普段の生活習慣の改善やストレスを効率的に発散するなど自己管理する手段も非常に重要とされています。
そして、個々によって治療法が異なる事もあるために自力だけで治すことは難しく、自律神経失調症の疑いがある場合はまず精神科など専門医療機関を受診してください。
憂鬱な気分から抜け出せず気分が沈む理由がわからない原因と対処法
憂鬱な気分から抜け出せず、気分が沈む理由がわからない症状で考えられる原因疾患として、「女性に多い更年期障害」が挙げられます。
特に、女性は年齢を重ねると生理が来なくなる閉経を迎えます。閉経の前後それぞれ5年間が更年期です。閉経に向けて女性ホルモンの分泌量が大きく変化しながら低下していくため、更年期には心身の不調が現れやすくなっています。
更年期に、女性ホルモン分泌量が大きく揺らぎながら減少することで日常生活に支障が及ぶ心身の症状がある状態を更年期障害と呼んでいます。
更年期障害における代表的な症状にホットフラッシュがあり、突然のほてり、気温が低いのに滝のような汗が出る、のぼせなどを起こします。これらの症状以外にも、イライラや落ち込み、頭痛・肩こり、睡眠障害など幅広い症状が起こります。症状の内容や強さには個人差が大きく、環境の変化などに影響を受けて強くなることもあります。
更年期の女性は、社会的にも責任のある立場になることが多く、介護や子どもの自立など家庭でも変化が起こりやすい時期ですから、更年期障害でつらい症状があると心身への負担が大きくなってしまいます。
更年期障害は健康保険適用の治療で症状を改善・緩和することができ、ホルモン補充、漢方、対症療法、エクエル(エクオール)、サプリメントなど有効的な治療の選択肢も多いため、症状やライフスタイルなどに応じた治療が可能です。
心配であれば、婦人科など専門医療機関を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「憂鬱な気分から抜け出せない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
希死念慮の症状がある場合は、精神科・心療内科へ
うつ病の特徴的な症状は、強い悲しみや気分の落ち込みなど、いわゆる抑うつ気分やあらゆる意欲や喜びなどの感情低下が現れることです。
うつ症状が進行すると様々な感情を感じにくくなり、生きている実感が湧かないといったこともあり、さらに悪化した暁には“死にたい”と考えるようになります。
最悪の場合には、実際に自殺企図や自殺を遂げるという結果になることもあります。
そうした希死念慮の症状がある際には、早急に精神科など専門医療機関を受診してください。絶望感や自己否定感など理想的な状況にふさわしくない感情が強く芽生えているときには、その考えと現実との歪みを修正する効果を発揮する認知行動療法が望ましいとされています。
受診・予防の目安となる「憂鬱な気分から抜け出せない」ときのセルフチェック法
- ・憂鬱な気分から抜け出せない以外に希死念慮の症状がある場合
- ・憂鬱な気分から抜け出せない以外に頭痛やめまいの症状がある場合
- ・憂鬱な気分から抜け出せない以外に興奮症状がある場合
「憂鬱な気分から抜け出せない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「憂鬱な気分から抜け出せない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
うつ病
うつ病とは、日常生活に強い影響が出るレベルで気分の落ち込みが続いたり、何事にも意欲や喜びを持つことができなくなる疾患です。
うつ病の場合にはそれらの悲しみの元となる出来事やイベントがはっきりしない、または誘因が判明していたとしてもその体験に対する心的な反応として予測される状態よりはるかに強くて重い症状が引き起こされます。
また、その症状の程度が仕事や日常生活に支障をきたすほど強くひどい様式で現れるのもうつ病の特徴と言えます。
ストレスを誘因にして発症することが多いため、過度なストレスがかからない居住環境において心の休養を十分にさせることが重要です。
たとえば、仕事量が急激に増加したことがきっかけでうつ病を発症した場合には仕事量の軽減や自宅療養して安静を保つなどの措置が行なわれます。
そして、うつ病治療の主体となるのは薬物療法です。
近年、主に頻繁に用いられるのは脳内のセロトニン濃度を高めることができる作用を持つ選択的セロトニン再取り込み阻害薬です。
心配であれば、精神科や心療内科など専門医療機関を受診しましょう。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることでさまざまな症状を引き起こす病気の総称です。
日々のストレスや不安などからくる軽症のうつ病や、いわゆる不安神経症や気分障害などの症状が一部含まれると考えられます。
自律神経失調症が呈する症状は個々によってさまざまであり、身体的な症状としてはだるい、眠れないなどの全身症状と、頭痛、動悸、息切れなどの部分的な症状がありますし、精神的な症状としては情緒不安定、いらいら、不安感などがあります。
日常生活において睡眠不足や運動不足は自律神経やホルモンバランスの乱れにつながるため、体の不調を引き起こしやすくなりますので、規則的な睡眠と食事、適度な運動を心がけることが重要であり、生活習慣が整っていると、ストレスに対しても柔軟に向き合えるようになります。
自律神経失調症を治すためには一定の専門的な知識が必要であり、自力で治すのは難しいこともあるため、症状から自律神経失調症を疑う場合には精神科や心療内科などの専門医に相談しましょう。
双極性障害
双極性障害は、躁状態(躁病のエピソード)、軽い躁状態(軽い躁病のエピソード)、そしてうつ状態(大うつ病エピソード)を繰り返して反復する精神疾患であり、気分障害の一種とも言われています。
問診にて1週間以上にわたって比較的長期に持続する躁状態(躁病エピソード)や軽い躁状態(軽躁病エピソード)が認められると共に、うつ様の気分に襲われてあらゆる物事に対する興味や関心が薄れてしまう抑うつ状態も出現している場合には双極性障害を疑います。
双極性障害の薬物治療の基本は、気分安定薬による維持療法を実践することで躁うつ病相を予防することが重要であり、その気分安定薬の中心となる薬は炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなどが挙げられます。
心配であれば、精神科や心療内科など専門医療機関を受診しましょう。
統合失調症
統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気であると言われています。
統合失調症は主に思春期から青年期という時期に発症しやすく、様々な症状をきたすことによって生活の広範囲に及んで種々の障害を引き起こす精神疾患です。
医療機関における問診などによって、周囲に誰もいないのにも関わらず他人の声が聞こえてくる幻聴を自覚する、あるいはその幻聴内容がその患者さんを攻撃的に批判するような内容であり威嚇的に脅すような主旨である場合には統合失調症を疑うことになります。
統合失調症の基本的な治療方針は、主として薬物療法や作業的なリハビリテーションを行う心理社会療法などを中心に展開されることが多く見受けられます。心配であれば、適切なタイミングで精神科や心療内科の専門医にコンサルテーションを行って相談することが重要なポイントとなります。
「憂鬱な気分から抜け出せない」ときの正しい対処法は?
憂鬱な気分から抜け出せない症状の落ち着かせ方として、例えば自律神経失調症は、ストレスや生活習慣の乱れによって引き起こされると言われているため、これらを改善することで自然と症状が軽快することがあります。
ストレスを解消し生活習慣を整えることは、自律神経失調症を改善するもっとも重要な行動であり、これらを優先的に心がけるだけでも不快な症状が大きく改善することもあります。
また、自律神経失調症を抱えた方では散歩や体操、入浴など気軽にできるストレス解消法からまずは始めてみましょう。
少しでも自分がリラックスできる、楽しい、心地よいと思えるような時間を意識的に設けたり、趣味を持ったりすることでストレスをコントロールできることがありますし、積極的に交友関係を広げることも効果的とされています。
ビタミン剤のサプリメントなど市販薬を飲んで短期間様子を見ることもありますが、一定期間市販薬を正しく服用しても症状が改善しない際には、早急に精神科など専門医療機関を受診するように心がけましょう。
憂鬱な気分から抜け出せない場合には、基本的に体を温めて白湯などを摂取すると多少なりとも血流が良くなって症状が緩和する可能性があります。
果物、野菜、全粒穀物、低脂肪タンパク質を豊富に含む健康的な食事には、お腹を満たして、身体に活力を与える効果も期待できます。
また、憂鬱な気分から抜け出せない場合には、基本的に睡眠は5~6時間以上取るとよいとされていますし、1日のはじめに規則正しく朝食を取って毎日3食をある程度決まった時間に摂取することで自律神経の切り替えがスムーズになるといわれます。
うつ病は様々なストレスが誘因になることが多いので、本人が受けるストレスが過度にならないように、無理な仕事は引き受けずに、信頼できる相談相手をもつなどの保健衛生上の配慮を有しておくことが肝要です。
原則的には適度な運動と十分な睡眠を心がけ、バランスのよい食事を取るようにしましょうね。
夜間にインターネットやゲームにたくさんの時間を費やさないなど基本的なライフスタイルの取り組みがうつ病の予防に有効的です。
早く治したい時、あるいは応急処置をしても症状が収まらない場合は、できるだけ速やかに精神科や心療内科など専門医療機関を受診するように心がけましょう。
「憂鬱な気分から抜け出せない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「憂鬱な気分から抜け出せない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
気持ちが沈んで憂鬱な気分から抜け出すにはどんな方法がありますか?
甲斐沼 孟(医師)
ウォーキングなど、適度な運動で体を動かすと気分が晴れやすくなりますし、早起きして日光を浴びながら行う運動には体内時計を整える効果も期待されるため、心身の調子が安定する可能性があります。また、友人や家族などと話をすることで憂鬱感が改善される場合も散見されます。
精神的に弱って憂うつな気分が続く症状は心療内科で治療できますか?
甲斐沼 孟(医師)
精神的に消耗して憂鬱な気分から抜け出せない場合には、うつ病や自律神経失調症などが考えられますので、精神科や心療内科など専門医療機関を受診しましょう。
憂鬱な気分から抜け出せないのはストレスが原因ですか?
甲斐沼 孟(医師)
憂鬱な気分から抜け出せない原因として、上司や部下との軋轢、顧客とのトラブルなどに関連して仕事の疲労感がとれずストレスが溜まっていることが挙げられます。また、職場や家族間での人間関係に疲れてしまい、憂鬱な気分が継続する場合もあります。
憂鬱な気分が続くのは心が疲れているときのサインでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
普段の疲労を十分な休息をせずにため込むと、身体面だけでなく精神面の疲れがとれず、憂鬱な気分から抜け出せなくなってしまいます。仕事や家事などに追われていると多少なりとも無理をしてしまうこともありますが、自分なりに休む時間を確保した生活を送ることで心身ともに状態が改善する効果が期待できます。
まとめ
誰しもが社会生活を送るうえでは、悲しいことや不快な体験を完全に避けて通ることはできません。
そういった時に、人並みに悲しくなって気分が落ち込む、あるいはやる気が起こらなくなるといった状態になることは通常では誰にでも経験されることです。
仕事や家庭、プライベートなど、さまざまな場面で憂鬱な気分から抜け出せないと感じる場合には、憂鬱な気分のままでいると元気がなくなるだけでなく、集中力も落ちてしまい仕事に影響が出る可能性もありますので、適切に対処する必要があります。
なぜ憂鬱な気分から抜け出せないのか、その原因を探求して、日々のセルフケアを行うと共に、自分の力ではどうにもならない際には病気が隠れている可能性もありますので、可及的速やかに専門医療機関を受診しましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「憂鬱な気分から抜け出せない」症状で考えられる病気
「憂鬱な気分から抜け出せない」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
日頃のセルフケアを行い、自力で解決することに時間がかかりそうな場合には専門家に相談をすることをお勧めいたします。
「憂鬱な気分から抜け出せない」に似ている症状・関連する症状
「憂鬱な気分から抜け出せない」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「憂鬱な気分から抜け出せない」症状の他にこれらの症状がある場合でも「うつ病」「自律神経失調症」「双極性障害」「統合失調症」などの疾患の可能性が考えられます。症状がなかなか改善しない場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
・統合失調症(こころの情報サイト)