「生理前におなら」が出る原因はご存じですか?対処法についても医師が徹底解説!


監修医師:
阿部 一也(医師)
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医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。
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「生理前におならが出る」原因と対処法
生理前になるとおならが出る、増える、止まらない、くさい、といった悩みはありませんか。この記事では、生理前におならが出やすくなる原因や考えられる病気、対処法を解説します。受診の目安や市販薬の使用についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。生理前におならが出る原因と対処法
まずは生理(月経)について簡単に説明しましょう。生理は、「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」のことです。生理周期は、月経期・卵胞期・排卵期・黄体期の4つの時期に分けられています。そして、生理に伴う精神的・身体的な症状として、月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)が知られています。これは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が黄体期の後半に急激に減ることが原因ではないかと考えられています。 生理前は黄体期にあたりますが、この時期にはプロゲステロンの分泌量が多くなります。そして、プロゲステロンは、コレシストキニンという消化管ホルモンの働きを抑えるという報告があります。その影響で、腸の蠕動(ぜんどう)運動が抑えられ、便が腸にとどまる時間が長くなります。結果として、便の水分の吸収が増え、便が硬くなり便秘につながる可能性があります。腸の運動が抑えられるため、ガスも溜まりやすくなることがあります。すると、おならが増えるという機序が考えられます。対策としては、軽いストレッチやウォーキングなどで腸の動きを促すことがあります。また、水分を多くとる、ヨーグルトなどの乳酸菌食品の摂取も良いでしょう。生理前のおならがくさい原因と対処法
生理前のおならがくさい原因として、ホルモンの影響で便秘になることが挙げられます。 便の臭いのもとは、スカトールやインドールといった、腸内細菌がタンパク質を分解することで作られる物質です。腸内に便がとどまる時間が長くなると、こうした物質が多くなり、臭いが強くなります。対策としては、先ほど述べたような便秘対策をまずとりましょう。また、お肉を食べる量が多いと、腐敗臭の原因になることもあります。生理前にはお肉を食べすぎないように気をつけましょう。 おならの症状に加えて、生理前の気分の落ち込みやイライラなどのPMS症状が強い場合には、一度産婦人科を受診しましょう。生理前のおならが止まらない・増える原因と対処法
食後や夜間には、とくにガスが多く出ると感じることもあるでしょう。そのため、ガスのもとになりやすい炭酸飲料は飲みすぎないようにすると良いかもしれません。また、ガスの産生を起こしやすい糖類として果糖や乳糖などが知られています。こうした糖類を含む食品の摂取を控えてみてもよいでしょう。しかし、おならがとまらない、下痢や便秘など排便の不調が続く場合には、過敏性腸症候群などの可能性もあります。気になる場合には、消化器内科の受診を検討しましょう。妊娠の可能性と生理前におならが出る関係性
妊娠すると、黄体ホルモン(プロゲステロン)が盛んに作られるようになります。この産生は、妊娠10週ごろまで、主に黄体で産生されます。プロゲステロンは、妊娠を維持するために必要と考えられています。黄体ホルモンは、生理前の黄体期に腸の運動を抑制したように、妊娠初期においても同様の作用を持つ可能性があります。そのため、妊娠の可能性と生理前におならが出る原因は、ほぼ同様な場合があります。 しかし、おならが出るからといって妊娠したとは言えません。日頃から自分の生理周期を記録して、何日前が最終月経だったかわかるようにしましょう。すぐに病院へ行くべき「生理前におならが出る」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。便に血が混じる場合は、消化器内科へ
生理前におならが増えることはしばしばありますが、病的なものではない場合が多いです。しかし、血便や激しい腹痛、発熱などもある場合には、サルモネラ菌感染や腸管出血性大腸菌の感染によるものの可能性があります。 これらの症状が見られる場合には、早めに消化器内科を受診しましょう。受診・予防の目安となる「生理前におならが出る」症状のセルフチェック法
- 生理のたびにおならの回数が著しく増える場合
- おならに加えて強い腹痛や下痢・便秘が続く場合
- おならに加えて便に血が混じったり黒っぽい便が出たりする症状が続く場合
- おならが止まらず、日常生活に支障が出る場合
「生理前におならが出る」症状の正しい対処法は?
生理前におならが多く出るという症状は、プロゲステロンというホルモンの働きが関係していると考えられます。腸管の動きが抑えられるため、ガスが溜まりやすくなることがあるのです。症状を和らげるためには、便秘症の改善策を参考にしてみるとよいでしょう。 例えば、お米や豆類などを積極的にとり、ヨーグルトなどの乳酸菌食品が有効である場合があります。おならが多く出る原因として便秘があるのであれば、市販薬の内服を検討してもよいでしょう。酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤は、腸の内容物を柔らかくすることで便を排出しやすくする働きがあります。しかし、腎臓の機能が低下している場合には酸化マグネシウムの内服は避けましょう。 一方で、他のPMSの症状が強く出ていて精神的につらい場合には産婦人科を受診しましょう。また、血便や黒色便などの便の異常も見られる際には、消化器内科受診をおすすめします。おならが臭くなる原因や対策
おならの臭いは、食事内容や腸の状態あるいは病気によって変わってきます。臭いのもととなる物質は前述のように、スカトールやインドールという腸内細菌が分解したタンパク質が元となります。便秘の際には臭いが強くなります。さらに、肉食が多いと、腐敗臭が強くなるケースがあります。おならの臭いが気になる場合には、まずは食生活を見直してみましょう。生理前にお腹に不快感を感じたらどうすればいい?
PMSの症状として、生理前にお腹が張ったり、便秘になったりすることがあります。PMSの対策としては、リラックスや気分転換などの自分なりのセルフケアをみつけるようにしましょう。辛い時期には、仕事の負担を減らすことも良いでしょう。 食生活では、玄米や全粒粉のパンなどの穀物や野菜など、食物繊維が豊富に含まれる炭水化物をとる、カルシウムや亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6の積極的な摂取も勧められています。砂糖やアルコール、喫煙は控えるようにしましょう。こうした対策をしていても症状が辛い場合には、産婦人科を受診しましょう。 低用量ピルや選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、漢方薬など、症状に合わせた薬の処方が検討されます。「生理前におならが出る」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「生理前におならが出る」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
生理前に快便になる原因について教えてください。
阿部 一也医師
生理前の黄体期には、プロゲステロンの働きで便秘がちになる方が多いです。しかし、一部の人では、生理前に腸の動きが活発になり、便通が良くなることがあります。これは自律神経の変動やホルモンバランスの個人差、食事やストレスの影響などが関係していると考えられます。
まとめ
生理前におならが増える、止まらない、臭くなるという症状は、多くの女性が経験することかもしれません。主にホルモンバランスの影響で腸の働きが変化することが原因と考えられますが、放っておくべきでない症状もあります。 生活習慣の見直しや市販薬の使用で改善することも多いですが、症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。自分の体のサインを見逃さず、心身の健康を大切にしてください。「生理前におならが出る」で考えられる病気
「生理前におならが出る」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。産婦人科系の病気
- 月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)