「下痢の時に食べてはいけないもの」はご存知ですか?医師が徹底解説!

下痢の時に食べてはいけないものとは?Medical DOC監修医が下痢を催す原因・下痢の時に食べてはいけないもの・下痢を催した際におすすめの食べ物・注意点や対処法などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
「下痢を催す」原因と対処法
下痢とは軟便や水様便で排便回数が増加する状態のことです。急性下痢症と慢性下痢症に分けられます。急性下痢症は突然発症し、慢性下痢症は下痢の症状が4週間以上続いている状態です。
下痢を催すメカニズムは腸の働きが関与しています。腸は収縮と弛緩を繰り返す、ぜん動運動をして腸の内容物を移動させます。このぜん動運動が異常になったり、腸内での水分調節の働きが異常になることが原因です。メカニズムによる分類はぜん動運動性下痢・滲出性下痢・分泌性下痢・浸透圧性下痢などです。
急性下痢症は食生活や腸管感染症が原因となることが多く、慢性下痢症は炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などが原因で起こります。
急性下痢症の場合は自然に治癒することが多いですが、慢性下痢症の場合は原因疾患の治療が必要になります。
感染性腸炎
感染性腸炎は細菌やウィルスの感染により発症し、ほとんどの場合下痢症状が起こります。
主な感染源は食品や水・人から人への接触感染です。
症状は細菌やウィルスの下痢・発熱・腹痛・嘔吐などの症状が現れる場合が多いです。
止瀉剤(下痢止め)は病原菌が排出されず、体内に留まり症状の悪化や治りが遅くなるため使用しません。整腸剤などの投与で腸内環境を回復させます。
ノロウィルス腸炎・ロタウィルス腸炎・カンピロバクター腸炎・腸管出血性大腸炎(O157腸炎)などが代表的な腸炎です。
多くの場合、数日で症状は治まり自然治癒しますが、症状が強い場合は一般内科や消化器科を受診しましょう。
乳糖不耐症
乳糖不耐症とは牛乳や乳製品に含まれる乳糖を体内で分解できないために下痢や腹痛や腹部膨満を起こします。
牛乳の摂取を控える、普通牛乳から乳糖を減らした牛乳に変えることをおすすめします。
牛乳や乳製品を摂った後に下痢や腹痛や腹部膨満の症状がある場合は消化器科を受診しましょう。
食物起因性
適量であれば問題がない食べ物でも、大量に摂取することで下痢を催す原因となる食べ物があります。
カフェインやアルコール・キシリトールやソルビトールなどの甘味料の大量摂取や・高脂肪食は下痢を起こす場合があります。過剰に摂取しないように注意しましょう。
摂取を控えても下痢の症状が続く場合は消化器科を受診しましょう。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は慢性的に下痢・便秘・腹痛などの症状が繰り返す病気です。通常、大腸や小腸に異常はありません。
原因は不安や緊張などの精神的ストレスや腸内細菌が関わっています。また、感染性腸炎発症後で、過敏性腸症候群を発症するリスクが高まります。感染性腸炎発症後に過敏性腸症候群を発症する危険因子は、ストレス・うつ・女性・喫煙・感染性腸炎の罹患期間が長いことなどです。
食事や生活習慣の改善で症状の軽減が期待できます。欠食せず、規則正しく食事を摂取し、過敏性腸症候群の症状を起こしやすいものの摂取を控えましょう。
症状を起こしやすいものは、脂質が多い食べ物・カフェイン・香辛料・牛乳などの乳製品です。
欧米では「FODMAP」を多く含む食品を避けることが症状を軽減すると報告されています。
生活に支障をきたすほどの慢性的な下痢がある場合は、早めに消化器科を受診しましょう。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は慢性的に繰り返し消化管に炎症や潰瘍が発生する病気の総称です。
一般的に潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。
再燃と寛解を繰り返す慢性疾患です。
原因は解明されていませんが、遺伝的な因子・環境因子・腸内環境などが関わっているといわれています。
症状があるときは食べ物の選び方や生活習慣にも気をつけましょう。
食生活では、脂質が少ない・刺激が少ない・繊維が少ないものを選び、アルコールなどを避け、バランスよく食べることがおすすめです。
ストレスをためないようにし、十分な睡眠や休養をとりましょう。喫煙はクローン病のリスク因子になるといわれているため、禁煙をしましょう。
下痢・腹痛・血便などの消化器症状や発熱・倦怠感や体重減少などの症状があれば早めに消化器科を受診しましょう。
下痢の時に食べてはいけないもの
下痢の時に食べてはいけないものは、腸に負担がかかる食べ物です。刺激物や脂質が多いものや繊維の多いものは控えましょう。アルコールやカフェインの大量摂取も下痢の原因になるため、症状がある場合は摂取を控えることをおすすめします。
刺激物
香辛料・酸味が強いもの・濃い味・炭酸飲料などは胃腸を刺激し負担がかかります。
胡椒・わさび・辛子などの香辛料、酢の物・レモンなどの柑橘類などの酸味が強いもの、食塩や醤油などの調味料、炭酸水やジュースなどの炭酸飲料を控えましょう。
脂質が多いもの
脂質が多いものは消化吸収に時間がかかり、胃腸に負担がかかります。
揚げ物・脂質が多いバラ肉やうなぎ・カレーやラーメンや菓子類などを控えましょう。
腸内で発酵するもの
過敏性腸症候群では腸内で発酵する食べ物は下痢を催しやすいです。
小麦・豆類・とうもろこし・たまねぎ・牛乳・ヨーグルトなどを控えましょう。
アルコールやカフェイン
アルコールやカフェインの大量摂取は下痢を催す原因になります。
日本酒やビールなどのアルコール飲料やコーヒーやエナジードリンクなどカフェインを多く含む飲み物を控えましょう。
消化に時間がかかるもの
食物繊維が多いものや固いものは消化に時間がかかり、胃腸に負担をかけます。
ごぼうやたけのこなどの野菜・海藻・きのこ・玄米などを控えましょう。
下痢を催した際におすすめの食べ物
下痢の際におすすめの食べ物は、胃腸に負担がかかりにくい消化のよいものです。脂質や繊維が少なく、柔らかく調理したものがおすすめです。下痢をした際は栄養価の高いものをバランスよく食べるようにして、栄養素が不足しないように食べることをおすすめします。
お粥やうどん
お粥やうどんは消化がよく、糖質を多く含むためエネルギー補給ができます。
煮込みうどんなど加熱時間を長くすると食材が柔らかくなります。
白身魚
白身魚は脂質が少なく、良質のたんぱく質やエネルギーが補給できます。
たらやカレイなどの煮魚や鍋料理などがおすすめです。
ささみや皮なしの鶏肉
ささみや皮なしの鶏肉は脂質が少なく、良質のたんぱく質やエネルギーが補給できます。
ささみや皮なしの鶏肉などの煮物や鍋料理などがおすすめです。
卵
卵は繊維がなく、良質のたんぱく質やエネルギーが補給できます。卵豆腐や茶碗蒸しは口当たりがよく、食べやすくなるためおすすめです。
豆腐などの大豆製品
豆腐などの大豆製品は良質のたんぱく質やエネルギーが補給でき、口当たりがよく食べやすい食品です。煮奴や湯豆腐など加熱調理がおすすめです。
下痢の際に食事面で気を付けるべきこと
下痢の際に食事面で気をつけることは下痢を催しやすい食品を控えること、柔らかく煮るなど調理法を工夫し、胃腸に負担をかけないようにすることです。下痢を催すと脱水症になる可能性があります。こまめに水分を補給しましょう。
食べ過ぎないようにしましょう
食べ過ぎや飲み過ぎは胃腸に負担がかかり下痢を催す原因になります。
食べ過ぎや飲み過ぎで下痢を催しやすい人は注意しましょう。
消化のよいものを食べましょう
脂質や繊維が少ない食品を選び、煮物や鍋物など加熱して柔らかく調理することで、消化しやすく胃腸に負担がかかりにくくなります。
胃腸を刺激するものは控えましょう
香辛料や濃い味付けや酸味の強いものや炭酸などは、胃腸を刺激し負担をかけます。下痢の症状がある場合は摂取を控えましょう。
ゆっくりよく噛んで食べましょう
ゆっくりよく噛んで食べることで、消化されやすくなり、胃腸への負担が軽減します。食べ過ぎの予防もできます。
カフェインやアルコール控えましょう
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カフェインやアルコールの多量摂取は下痢を催す原因になります。多量に摂取しないようにしましょう。下痢の症状がある時は摂取を控えましょう。
「下痢を催した」際の正しい対処法は?
下痢を催した際の正しい対処法は、下痢の原因や症状により異なります。
感染性腸炎では、止瀉剤の服用はしないようにしましょう。病原菌が抽出されず、体内に留まってしまうことで症状が悪化したり、治癒が遅れたりするためです。
市販薬の止瀉剤・整腸剤などを内服することで下痢の症状が緩和する場合があります。
漢方薬では、五苓散・胃苓湯など、下痢の症状を緩和する、腸の働きを正常に戻す効果があるといわれています。
運動不足や不規則な食習慣は下痢のリスク因子です。運動不足を解消し、規則正しい食生活にしましょう。
喫煙はクローン病発症の危険因子であるといわれているため、禁煙することがおすすめです。
過敏性腸症候群は身体的・精神的ストレスで起こる場合があるため、ストレスを軽減できる環境作りをしましょう。
早く治したい時はこまめに水分補給をし、胃腸に負担がかかりにくい食事を摂り、安静に過ごすことがおすすめです。
下痢以外に発熱や嘔吐などの症状がある場合は早めに消化器科を医療機関を受診しましょう。
下痢の症状が繰り返し4週間以上続く場合は慢性下痢症が疑われます。炎症性腸疾患などの病気が原因の場合があるため、消化器科を受診しましょう。
「下痢の時に食べてはいけないもの」についてよくある質問
ここまで胃の調子を整える食べ物などを紹介しました。ここでは「胃に穴が開く」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
下痢の時にヨーグルトを食べてもいいのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
ヨーグルトは腸内環境を整える作用があるといわれていますが、過敏性腸症候群では下痢を催しやすい食品であるといわれています。
ヨーグルトを食べて下痢が続いたり、症状が悪化するようならヨーグルトを食べないようにしましょう。
下痢の際は食事を控えた方がいいのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
下痢を催すと体力の消耗や栄養不足を招く可能性があります。刺激が少なく・消化がよいもの・栄養価が高いものをバランスよく食べましょう。下痢を催すと水分も排出されるため、脱水になる可能性があります。こまめに水分を補給しましょう。
まとめ 下痢を催した時は刺激物を控え、消化が早い食べ物の摂取がおすすめです
アルコールの多飲や脂肪が多い食事や炎症性腸疾患などの病気が原因で下痢を催す場合があります。
下痢を催した時は、胃腸に負担をかけないように刺激物や脂質が多い食事を控え、消化が早い食べ物を摂取しましょう。下痢の症状が慢性化している場合は、消化器科など医療機関を受診することをおすすめします。
「下痢」で考えられる病気
「下痢」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
内分泌科の病気
感染性腸炎など急性下痢症は自然治癒することが多いですが、慢性下痢症では下痢の原因となる病気を発症している場合があります。繰り返す下痢が継続する場合は、早めに消化器科など医療機関を受診しましょう。
「下痢」に似ている症状・関連する症状
「下痢」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
下痢を起こす原因の病気は、下痢と併せて似ている症状が現れる場合があります。気になる症状があれば早めに消化器科など医療機関を受診しましょう。