「おならが硫黄臭い」のは「大腸がん」が原因?正しい対処法も医師が徹底解説!
おならが硫黄臭い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
「おならが硫黄臭い」症状で考えられる原因と対処法
硫黄は腐った卵のような悪臭を放ちます。温泉地に漂う独特なにおい、と言えば何となく想像できるかもしれません。
健康的なおならは二酸化炭素が多く、あまり匂いません。しかし不摂生な食事や便秘、病気などが原因で、おならが臭くなることがあります。特に生のにんにく、ニラなど流加アリルを含む食品をたくさん食べると、おならが硫黄臭くなることがあります。
しかし、食事が原因になる異臭は一過性です。長期間おならが硫黄臭いときは大腸がんなど、重い疾患が隠れているかもしれません。いつまでも改善しないときは恥ずかしがらず、消化器内科にご相談ください。
おならが硫黄臭い症状で考えられる原因と対処法
硫黄臭いおならが出る原因は、食事と大腸の病気の2つが考えられます。
食べ放題の焼肉店で満腹になるまで肉を食べた、ゆで卵や卵料理をたくさん食べた、生のニラやにんにくを多く食べた後は、一時的に硫黄臭いおならが出ることがあります。
人の腸には約100兆個もの腸内細菌が生息しています。腸内細菌には主に3種類あり、人体に役立つ細菌を善玉菌、悪さをする悪玉菌、どちらでもない中間の菌がいます。健康な腸では善玉菌が優勢ですが、肉、卵などたんぱく質を過剰摂取すると悪玉菌が活性化します。悪玉菌がたんぱく質を分解するときに放つ硫化水素が、硫黄臭いおならが発生する原因です。
さらに、悪玉菌が優勢になると、大腸がんや炎症性腸疾患のリスクを上げます。大腸がんや腸疾患の方の腸内は健康な方に比べて悪玉菌が多く、環境が乱れています。
硫黄臭いおならは、これらの症状のサインかもしれません。
おならが硫黄臭く、下痢や便秘も伴う症状で考えられる原因と対処法
下痢や便秘を伴う場合、注意深く観察する必要があります。単なる食べ過ぎや野菜不足で起こることもありますが、続く場合は病気が潜んでいるかもしれません。
大腸がんやクローン病などの病気では、腸内に腫瘍ができることがあります。腫瘍で大腸が圧迫されると便秘を起こしやすくなります。ただの便秘だからと放置していると、命を落とすことになりかねません。ただちに医療機関を受診しましょう。
過敏性腸症候群でも下痢や便秘が続くことがあります。
おならが硫黄臭く、腹痛も伴う症状で考えられる原因と対処法
おならが硫黄臭く、激しい腹痛が続く場合は、腸に何らかの疾患がある可能性があります。
突然激しい腹痛に襲われ、排便すると楽になる症状が1か月以上続くなら、過敏性腸症候群の可能性が否定できません。大腸がん、潰瘍性大腸炎などでも同様の症状が出ることがあります。
子どものおならが硫黄臭い症状で考えられる原因と対処法
子どもの場合も、食生活が乱れると同じ症状が現れます。たんぱく質が多すぎる食事、乳糖不耐で牛乳が消化できない、便秘などで大便が腸に残ると、おならが硫黄臭くなることがあります。子どもが大好きな卵料理も、食べ過ぎると同様の症状が出やすくなります。
野菜や果物など食物繊維をしっかり食べて、腸内環境を整えてあげることが、改善の近道です。しかし子どもは味覚が鋭く、野菜の苦味を本能的に嫌がります。無理やり食べさせるとますます野菜嫌いになりかねません。野菜は煮込んでスープにする、細かく刻んで料理に混ぜるなど、苦味を感じにくい調理をするのも効果的です。
善玉菌のエサになるオリゴ糖を、適量摂取させるのも効果があります。しかしオリゴ糖は食べ過ぎると下痢を起こしやすいので、お腹の調子を見ながら量を増減しましょう。オリゴ糖の一日の有効摂取量は2~10gですが、適正量や効果には個人差があります。
すぐに病院へ行くべき「おならが硫黄臭い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
1週間以上おならが硫黄臭い場合は、消化器内科か肛門科へ
食事の影響で、一時的に硫黄臭いおならが出ることはあります。しかし食事を改善しても治らず、1週間以上続く場合は深刻な病気が隠れている可能性があります。
特に血便や下痢、腹痛が続く場合は緊急を要します。
病気が原因の場合は、食生活を改善させるだけでは治りません。できるだけ早く消化器内科を受診しましょう。
「おならが硫黄臭い」症状の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「おならが硫黄臭い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
大腸がん
大腸がんは日本で多く見られるがんで、臓器別がん死亡者数が男性2位、女性1位を占めています。
大腸がんは腫瘍が出来る場所で症状が変わります。肛門に近い場所(左側)では便秘や下痢、便が細くなる、血便、下血などの症状が現れ、小腸に近い場所(右側)ではお腹のしこり、貧血などの症状が現れます。進行すると腹痛や腸閉塞なども併発します。
しかし、初期症状はほとんどありません。自覚症状が出るころには、病状が進行しています。
大腸がんは早期に発見し、治療すれば高い確率で寛解します。40歳を超えたら定期健診を受け、異常が見つかればすぐに消化器内科を受診しましょう。
過敏性腸症候群
電車に乗ると便意がガマンできなくなり、途中下車を繰り返してしまう…こんなお悩みがある方は少なくありません。
過敏性腸症候群は日本人の10~20%が発症していると言われる、身近な症状です。20~40才代に多く見られ、女性の方が発症しやすい傾向があります。下痢や便秘を繰り返す、お腹が張るなど腹部にトラブルを起こしやすい症状です。
過敏性腸症候群は、大腸に腫瘍や炎症などがありません。発症する原因は不明ですが、ストレスや感染性腸炎を発症した後に起こりやすいと言われています。
完治は難しく、対処療法で寛解を目指します。規則正しい生活習慣や食習慣の改善指導、心理療法に加え、症状に合わせた薬物治療を行います。
病気とうまく折り合いをつける方法はあります。通院を続けながら無理のない範囲で、生活習慣を改善していきましょう。
クローン病
口から肛門までの消化器官に炎症を起こす、非常に厄介な病気です。
小腸、大腸に腫瘍や炎症を起こすことが多く、下痢や腹痛、貧血、倦怠感や体重減少、発熱、痔ろうなど肛門の病気などを引き起こします。
発症する原因は不明で完治は難しいですが、寛解に向けた治療を行います。ステロイド剤など薬物治療や栄養療法、腫瘍や大量出血など合併症が起これば、外科治療を行います。
寛解すると、その状態を続けるための寛解維持療法に替えて悪化しないように調整します。
クローン病の治療法は日々進化し、有効な治療法が次々と出ています。治療を続けることで日常生活を送ることができるケースが増えています。
潰瘍性大腸炎
消化器官すべてで発病するクローン病と異なり、大腸だけ潰瘍や腫瘍ができる病気です。クローン病と併せて炎症性腸疾患と呼びます。症状はクローン病とほぼ同じですが、粘血便(粘り気のある便)が出やすいことが特徴です。10~30才代に多い病気とされていましたが、近年は50代以上の発症者が増えています。
寛解期と活動期を繰り返す再燃緩解型が多く、一度だけ発症して後は寛解する初回発作型、発症から半年以上活動期が持続する慢性持続型、激しい症状が起こる急性劇症型(急性電撃型)など、発症期間もさまざまです。
原因は不明で完治は困難ですが、治療法は多く、新しい治療法が次々と出ています。薬物治療や外科治療、血球成分除去療法などで症状を抑え、寛解期を伸ばします。
潰瘍性大腸炎も適切に治療を続けることで、日常生活を送ることができます。
「おならが硫黄臭い」症状の正しい対処法は?
まずは、前日に何を食べたかを思い出しましょう。肉や卵などたんぱく質をたくさん食べた、ニラやにんにくを大量に食べた場合は、悪玉菌が一時的に活性化した可能性があります。
たんぱく質が多すぎる食生活を改めて、炭水化物や野菜、果物など食物繊維を豊富に含む食生活にしましょう。食物繊維は善玉菌のエサになり、活性化させます。
にら、にんにく、ネギは生食を控えて加熱しましょう。硫黄臭い原因になる流加アリルは、熱で分解されます。
ヨーグルト、納豆など生きた乳酸菌(プロバイオティクス)食品を摂取するのも効果的です 。有酸素運動やリラックスする習慣を付け、規則正しい生活をすることも大切です。
善玉菌が優位になると、おならの臭いもだんだんと控えめになっていきます。便通が改善すれば、無臭に近づくでしょう。
これでも改善しない、食生活は悪くないのに硫黄臭さが続く場合は腸の病気の可能性があります。医療機関を受診しましょう。
「おならが硫黄臭い」症状で医師が薦める食べ物・飲み物は?
健康な方ならおならが硫黄臭くても、腸内環境を改善すれば治ります。腸内の乳酸菌など善玉菌が優勢になると、腸内環境が整います。善玉菌を増やすためにエサになる食物繊維やオリゴ糖を含む食べ物を定期的に食べましょう。プロバイオティクスと呼ばれる生きた善玉菌を含む食品(ヨーグルト、漬物、納豆など)を食習慣に取り入れるのも効果があります。
硫黄臭いおならは、たんぱく質の食べ過ぎが原因で起こることがあります。特に脂肪が多い肉や、硫黄化合物の多い玉ねぎ、にら、にんにくの過剰摂取は腸内で硫化水素を発生させ、硫黄臭いおならの原因になります。しばらくは魚と野菜中心の食生活にすることをおすすめします。
これらは便秘を改善する効果もあります。しかし腸に便が長く留まる便秘や便が出にくい症状(大腸通過遅延型便秘症、便排出障害)の方は、食物繊維を多く摂取すると悪化することがあります。しつこい便秘が続く方は、できるだけ早く消化器内科を受診して下さい。
ストレス、不摂生な生活は腸内環境を悪化させます。できるだけ冷静になる、安眠習慣を付けることも大切です。
「おならが硫黄臭い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「おならが硫黄臭い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
おならが硫黄臭い場合、病院を受診した方がいいですか?
伊藤 陽子(医師)
食事を改善しても1週間以上続く場合は、医療機関の受診を検討しましょう。消化器内科がお勧めです。病院では大腸鏡検査などで消化器の疾患を確認します。放置すると症状は悪化することもあるため、受診しましょう。
ヨーグルトを含めた乳製品を摂取するとおならが硫黄臭くなるのですが、原因はどんなことが考えられますか?
伊藤 陽子(医師)
乳糖不耐症という、乳糖を分解できる酵素が少ない体質の方が乳製品を摂取すると、消化不良を起こしおならが臭くなります。
ヨーグルトは乳糖を分解するラクターゼが含まれていることが多く牛乳に比べて不調を起こしにくいですが、すべての方が消化できるとは限りません。
乳糖不耐症の方はぜひ日本食を取り入れましょう。乳酸菌は味噌など発酵食品、漬物にも豊富に含まれます。日本の伝統食を食卓に適量取り入れることで、無理なく腸内環境を整えられます。これらの食品は塩分が高いので、過剰摂取は控えましょう。
まとめ おならが硫黄臭いは重大な病気のサインかも!?
肉や卵を食べ過ぎた、ニラやにんにくをたっぷり食べた後は、おならが硫黄臭くなることがあります。しかし、これらは一過性で長続きはしません。
一過性でも、おならの異臭は腸内環境が悪化している証拠です。放置して不摂生を続けていると腸疾患リスクを上げてしまいます。今日から腸内環境を整える食習慣に切り替え、不摂生な生活を改善しましょう。
おならが硫黄臭い状態が1週間以上続く、食生活を改善したのに断続的に続く場合は、大腸がんなど重い疾患が隠れている可能性があります。腹痛や下痢、便秘が続く、血便が出る場合は、より可能性が上がります。医療機関を受診しましょう。
「おならが硫黄臭い」で考えられる病気
「おならが硫黄臭い」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
おならが硫黄臭い原因は腸内環境の悪化です。食生活の乱れが多いですが、中には大腸がんなど重い疾患が原因のことがあります。食生活を改善しても症状が続く場合には、消化器内科を受診しましょう。
「おならが硫黄臭い」に似ている症状・関連する症状
「おならが硫黄臭い」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
おならが硫黄臭い時は便秘を伴うことがあります。食生活に問題がないのに便秘と下痢を繰り返す場合や腹痛、血便を伴う場合は重い疾患が隠れているかもしれません。特に血便がある場合には、早急に消化器内科を受診しましょう。