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「歯がズキズキする」原因はむし歯だけじゃない?考えられる病気を医師が解説!

「歯がズキズキする」原因はむし歯だけじゃない?考えられる病気を医師が解説!
歯がズキズキするのを治すには?メディカルドック監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
木下 裕貴

監修歯科医師
木下 裕貴(歯科医師)

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北海道大学歯学部卒業。同大学病院にて研修医修了。札幌市内の歯科医院にて副院長・院長を経験。2023年より道内の医療法人の副理事長へ就任。専門はマウスピース矯正だが、一般歯科から歯列矯正・インプラントまで幅広い診療科目に対応できることが強み。『日本床矯正研究会』会員であり小児の矯正にも積極的に取り組んでいる。

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「歯がズキズキする」症状で考えられる病気と対処法

「歯がズキズキする」といえば、多くの方は虫歯が思い浮かぶでしょうが虫歯以外にもそのような症状を引き起こす病気がいくつかあります。痛みの度合いや痛みが強くなるタイミングもそれぞれ異なるので、ご自身の症状と合わせて確認してみてください。

虫歯ではないのに歯がズキズキする症状で考えられる原因と対処法

「歯がズキズキする」と一言でいっても、痛みの出るタイミングが様々かと思います。黙っていても痛みがある、冷たいものや熱いものを食べたときに歯が痛む、固いものを咬んだ時に歯が痛む、ハブラシのときだけ歯が痛むなど、それぞれ症状ごとに原因が異なります。黙っていても痛みがある場合は比較的強めの市販の鎮痛薬を服用してください。また、痛みのある部分を外から冷やすことも効果的です。保冷剤やアイスノンなどを使用して冷やします。布やタオルにくるんで直接皮膚に触れないようにしてください。15-20分程度冷やしたら20-30分程度間隔をあけてください。痛みが続く場合はこの繰り返しを行いましょう。痛みの出るタイミングによって疑うべき原因や病気は異なります。「虫歯」以外の病気の場合、黙っていても痛みがあるものは「歯周病」「副鼻腔炎」、咬んだ時に痛みがあるものは「根尖性歯周炎」「咬合性外傷」「歯根破折」、冷たいものや熱いものがしみるのは「知覚過敏」を疑います。 症状が気になる場合、まずは近くの歯科医院にかかりましょう。「副鼻腔炎」に関しては耳鼻科での治療になりますが、歯科医院のレントゲンでも診断は可能です。もし「副鼻腔炎」の治療の必要があれば随時歯科医院の方から耳鼻科への紹介状が渡されるでしょう。その他の病気については歯科医院で治療が可能です。

急に歯がズキズキする症状で考えられる原因と対処法

急に歯がズキズキするとき「虫歯」以外では「歯周病」か「根尖性歯周炎」になっていることが多いです。「歯周病」の場合は、歯そのものが痛いというよりは歯茎の腫れや痛みを感じることが多く、特定の部位が痛いというよりは周辺が何となく痛いというのが特徴です。「根尖性歯周炎」の場合は、原因の歯の根元にニキビのような小さめの歯茎の腫れを伴うことが多く、原因となる部位に比較的強い痛みが出ます。また、お子様の場合は、永久歯の生え変わりに伴って痛みが出ることもあり「萌出痛」と言います。「萌出痛」は大人の歯が歯茎を破って生えてくるときの痛みなので病気ではありません。この「根尖性歯周炎」は歯の神経や根の中が細菌に感染しておこる病気なのでセルフケアで症状を改善させることは非常に難しいです。比較的強めの市販の鎮痛薬を服用してください。また、痛みのある部分を外から冷やすことも効果的です。保冷剤やアイスノンなどを使用して冷やします。布やタオルにくるんで直接皮膚に触れないようにしてください。15-20分程度冷やしたら20-30分程度間隔をあけてください。痛みが続く場合はこの繰り返しを行いましょう。 「歯周病」の場合は日々の口腔ケアが十分に行き届いていないために磨き残しができ、磨き残しの細菌が原因で発症します。歯茎が腫れている周辺を改めてよく磨くようにしましょう。多くの場合、磨き残しができる場所は歯茎に近い歯の根元の部分です。ただし、固いブラシで強く磨くことはNGです。柔らかめか普通の固さのハブラシでブラシを細かく20-30回程度動かしましょう。初期の間は自覚症状がなくそのまま進行していく病気です。ストレスや疲れにより体の免疫が下がったタイミングで歯周病菌が増えので歯茎の出血・腫れ・痛みがでてきます。初期の歯周病の場合は症状のある部位へ適切なケアをすることで数日中に改善することがほとんどです。中程度まで進行してしまった歯周病の場合はセルフケアのみで原因となる歯石の除去をすることが困難なため、歯科医院への受診が必須となります。また、重度の歯周病の場合は加えて歯が動いてぐらぐらしてきます。歯を支える能力が失われているため物を咬んだ時の痛みもでてきます。この段階になるとすでに手遅れで抜歯となるケースもあります。 「歯周病」「根尖性歯周炎」のいずれも歯科医院で治療を行います。 「根尖性歯周炎」で特に痛みが強い場合は治療の際、麻酔がなかなか効かないこともあるので、あらかじめ痛み止めを服用していくことをおすすめします。

ストレスで歯がズキズキする症状で考えられる原因と対処法

ストレスによって「歯ぎしり」や「食いしばり」の状態が続くと歯に過剰な力がかかって痛みを引き起こすことがあります。特に「歯ぎしり」「食いしばり」は就寝時におこることが多いため、本人は無意識の間にやってしまっていることがほとんどです。 また継続的に過剰な力が歯にかかっていると「楔状欠損」を引き起こします。「楔状欠損」とは歯の根元の部分が楔が打ち込まれたかのような形にえぐれて穴があいている状態のことです。「楔状欠損」では多くの場合、象牙質が露出してしまうので冷たいものでしみやすくなり、「知覚過敏」様の症状が現れます。 「歯ぎしり」「食いしばり」の多くは本人が無意識となる就寝時に行われますが、日中でもストレスを感じると「歯ぎしり」「食いしばり」をしてしまう人もいます。まずは「歯ぎしり」「食いしばり」をしているなと自覚したらすぐにやめる習慣を身につけましょう。「楔状欠損」や「歯根破折」などの病気を引き起こす可能性があります。原因はストレスと言われていますが特定はされていません。子どもや若い人に多く見られる傾向にあり、年齢を重ねるとともに落ち着いていくと言われています。また、すでに特定の歯に痛みが出ている場合はなるべく痛みのある場所で固いものを咬むことは控えましょう。 症状が気になる場合、歯科医院で歯ぎしり防止用のマウスピースを作ってもらいましょう。「歯ぎしり」「食いしばり」は無意識のうちに行われていることが多く、それ自体を止めることは非常に難しいです。代わりに、「歯ぎしり」「食いしばり」をしてしまってもマウスピースを装着することでその力を逃がして自分の歯が擦り減らないようにします。

歯がズキズキして眠れない症状で考えられる原因と対処法

夜眠ることができないほど痛みが出るものは「虫歯」以外だと「根尖性歯周炎」か「智歯周囲炎」になっているケースが多いです。「根尖性歯周炎」については前述のとおりですが、根の先端に細菌がたまることで発症します。原因はほとんどの場合が進行した「虫歯」です。歯の構造は表面から「エナメル質」→「象牙質」→「歯の神経」となっており、最深部の神経に「虫歯」が到達すると虫歯菌によって歯の神経が腐っていきます。その結果、根の中にたまった細菌が先端へ押し出されて「根尖性歯周炎」となります。最初のうちは物を咬むと痛いという症状ですが、悪化すると強い痛みが出るようになります。 一方で「智歯周囲炎」は、親知らずの周りの歯茎が炎症を起こす病気です。親知らずとは奥歯のさらに奥に生えてくる歯のことで、10代後半から20代にかけて生えてくることが多いです。ただし、顎の小さな現代人は親知らずが生えるスペースがないことが多く、正しい向きに生えてこないことがほとんどのためトラブルの原因となります。正しい向きに生えなかった親知らずは口腔ケアが非常に難しく、磨き残しによる細菌がたまりやすいので結果として親知らずの周囲の歯茎が腫れることになります。さらに症状が強い場合は口が開けづらくなることもあります。通常のハブラシだけではきれいにすることが難しいので、先端のとがったハブラシ(ワンタフトブラシ)やデンタルフロスの併用をお勧めします。仕上げにマウスウォッシュも使用すると良いでしょう。 「根尖性歯周炎」の場合は、歯の神経や根の中が細菌に感染しておこる病気なのでセルフケアで症状を改善させることは非常に難しいです。比較的強めの市販の鎮痛薬を服用してください。また、痛みのある部分を外から冷やすことも効果的です。保冷剤やアイスノンなどを使用して冷やします。布やタオルにくるんで直接皮膚に触れないようにしてください。15-20分程度冷やしたら20-30分程度間隔をあけてください。痛みが続く場合はこの繰り返しを行いましょう。 いずれの病気も歯科医院で治療が可能です。痛みが強い場合は治療時の麻酔が効きづらいのであらかじめ市販の鎮痛薬を服用してから受診することをおすすめします。

治療後に歯がズキズキする症状で考えられる原因と対処法

「歯髄炎」もしくは「根尖性歯周炎」になってしまった場合、根の治療を行います。根の治療をする際に、歯を削ったり消毒用の薬品を入れたりするのでこれによって刺激が伝わり、治療後数日間痛みが出ることが多いです。痛みが出たら我慢せずに処方されている痛み止めを服用しましょう。また治療中の歯は敏感な状態なので物を咬まないようにしましょう。根の治療後の痛みは治療の一環の中でおこる痛みなので病気ではありません。歯を削ったことや薬品による刺激が原因なのでほとんどは数日でおさまります。基本的に受診の必要性はありません。処方された痛み止めを早いうちに服用してください。

すぐに病院へ行くべき「歯がズキズキする」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

頬の周りが痛い、鼻詰まりがひどい症状の場合は、耳鼻咽喉科科へ

粘り気のある黄色い鼻水が出る、頬の周りや目の周りが痛いという場合は原因が口の外にある可能性があります。このような場合、「副鼻腔炎」になっている可能性があります。副鼻腔とは、鼻の横で頬の裏側にある空洞のことを言います。鼻の奥から副鼻腔に細菌が入ったり、アレルギーや花粉症で長期間鼻詰まりがあると副鼻腔が炎症を起こすことがあります。「副鼻腔炎」の診断は歯科医院のレントゲンでも可能ですが、治療は耳鼻科で行いますので基本的には耳鼻科を受診されるといいでしょう。「副鼻腔炎」は鼻以外の場所にも症状が出る病気なので可能な限り症状を明確に伝えましょう。また、現在服用している薬があればそれも事前に伝える必要があります。以前に「副鼻腔炎」にかかったことがある方は慢性化している可能性があるので必ず伝えましょう。

受診・予防の目安となる「歯がズキズキする」ときのセルフチェック法

・歯がぐらぐらする症状がある場合
・歯の根元にニキビのような歯茎の腫れがある症状がある場合
・複数の歯が痛い症状がある場合

「歯がズキズキする」症状が特徴的な病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「歯がズキズキする」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

知覚過敏

知覚過敏は、歯が冷たいものや酸っぱいもの、甘いものなどに触れたときに、ピリッとした痛みを感じる状態です。歯の表面を保護しているエナメル質が何らかの理由で削れたり、歯ぐきが下がって歯の根元が露出したりすると、内部の象牙質がむき出しになり、刺激が神経に直接伝わってしまうことで起こります。 発症の原因は多く強いブラッシング:歯をゴシゴシと強く磨きすぎるとエナメル質がすり減り、知覚過敏を引き起こすことがあります。
①歯ぎしり:寝ている間に歯を食いしばったり、歯ぎしりをすることで歯がすり減りやすくなります。
②酸性の食べ物や飲み物:レモンやジュースなど酸性のものがエナメル質を弱らせることがあります。
③歯ぐきの後退:加齢や歯周病によって歯ぐきが下がり、歯の根元が露出して知覚過敏になることがあります。
知覚過敏の対処法としては、まずは日常的なケアが重要です:
①やさしく歯を磨く:硬い歯ブラシではなく、柔らかい歯ブラシを使い、やさしく磨くようにしましょう。
②知覚過敏用の歯磨き粉を使う:フッ素配合の歯磨き粉や、知覚過敏を緩和するために特別に作られた歯磨き粉を使うと効果があります。
治療法としては、以下のようなものがあります:
①フッ素塗布:歯医者さんでフッ素を塗ってもらうことで、エナメル質を強化し、知覚過敏を軽減できます。
②詰め物やコーティング:知覚過敏がひどい場合、露出した歯の根元に詰め物をすることで症状を抑えることができます。
知覚過敏の症状が長期間続く場合や、痛みが強く日常生活に支障をきたす場合は、病院へ行くべきです。特に、次のような症状がある場合は、早めに受診しましょう:
・痛みが数週間以上続く
・歯の変色やひび割れが見られる
・特定の歯だけが異常に痛む
・歯ぐきが腫れたり出血している
知覚過敏の場合は、まず歯科(しか)に行きましょう。歯科医師が原因を診断し、適切な治療法を提案してくれます。場合によっては、歯周病が原因の場合は歯周病専門医に紹介されることもありますが、最初は一般の歯科で診てもらうのがよいでしょう。

歯髄炎

歯髄炎(しずいえん)は、歯の中心にある歯髄(しずい)という組織が炎症を起こす病気です。歯髄は歯の神経や血管が集まった部分で、歯の痛みを感じる部分でもあります。歯髄が炎症を起こすと、ズキズキとした強い痛みを感じることがあります。 発症の原因には以下のものが挙げられます。
①虫歯(むしば):虫歯が進行して歯の深い部分まで達すると、歯髄が細菌に感染して炎症を起こします。
②外傷:事故や転倒などで歯に強い衝撃が加わると、歯髄が損傷し、炎症を引き起こすことがあります。
③歯ぎしりや強いかみ合わせ:歯に過度な負担がかかることで歯髄がダメージを受け、炎症が発生することもあります。
歯髄炎は進行すると自然に治ることは難しいため、適切な治療が必要です。
①軽度の歯髄炎:初期の段階では、虫歯の治療や被せ物をすることで歯髄の炎症が治まることがあります。適切なケアを早めに行えば、歯を残すことができることが多いです。
②進行した歯髄炎:歯髄がひどく感染してしまうと、歯髄を完全に取り除く「根管治療(こんかんちりょう)」という治療が必要です。これにより、痛みの原因となる感染した部分を取り除きます。
③鎮痛剤の使用:痛みが強い場合、歯医者さんが処方する鎮痛剤を使って一時的に痛みを和らげることができますが、根本的な治療にはならないため、早めに歯科を受診することが大切です。
歯髄炎の痛みはとても強いため、痛みを感じたらすぐに歯医者さんに行くことが推奨されます。特に次のような症状があれば、早急に受診するべきです:
・虫歯が深くなり、痛みが持続的に続いている
・熱いものや冷たいものを食べると強い痛みがある
・顔の一部が腫れている、または発熱がある
これらの症状がある場合は、歯髄炎が進行している可能性が高く、歯科での早めの治療が必要です。 特に痛みが強くなったり、虫歯が進行していると感じた場合は、早めに歯科を受診しましょう。場合によっては、根管治療の専門家である歯内療法専門医に紹介されることもありますが、まずは一般の歯科で診てもらうのが一般的です。

歯周病

歯周病は、歯を支える組織(歯ぐきや骨など)が細菌によって感染し、炎症を起こす病気です。進行すると歯ぐきが腫れたり出血したりし、最悪の場合、歯を支える骨が溶けてしまい、歯が抜けてしまうこともあります。 歯周病の主な原因は、歯に溜まった歯垢(プラーク)です。歯垢は食べ物のカスや細菌が集まったものですが、これが歯ぐきに炎症を引き起こします。その他の原因としては、次のようなものがあります:
①不十分な歯磨き:歯垢が溜まると、そこに細菌が繁殖して歯ぐきに悪影響を与えます。
②喫煙:タバコを吸うことで免疫力が低下し、歯周病が悪化しやすくなります。
そのほか、ストレスやホルモンの変化(思春期や妊娠中など)も歯周病を進行させることがあります。 歯周病の進行を防ぐためには、日常的なケアが非常に大切です。
①毎日のブラッシング:歯垢が溜まらないように、正しい方法で歯を磨き、特に歯と歯ぐきの境目をしっかりとケアすることが重要です。
②デンタルフロスや歯間ブラシ:歯ブラシだけでは取りきれない歯と歯の間の汚れを、フロスや歯間ブラシで取り除くことも有効です。
③定期的な歯科検診:歯医者さんで定期的に歯石を取ったり、歯ぐきの状態をチェックしてもらうことで、早期発見と治療が可能です。
進行した場合の治療法は以下のようなものがあります:
④スケーリングとルートプレーニング:歯医者さんが特殊な道具を使って、歯や歯ぐきの下に溜まった歯石や細菌を取り除きます。
⑤外科的治療:歯ぐきが大きく下がってしまったり、骨が溶けてしまった場合、歯ぐきを切開して治療したり、骨を再生する治療が行われることもあります。
歯周病は初期段階ではあまり自覚症状がないことも多いですが、次のような症状が見られたら、早めに歯医者さんに行くことをおすすめします:
・歯ぐきが赤く腫れている
・歯ぐきから出血する(特に歯磨き中)
・口臭が強くなる
・歯がぐらぐらする感じがする
・歯ぐきが下がり、歯が長く見える
これらの症状は、歯周病が進行しているサインかもしれませんので、早めの治療が重要です。 歯周病の治療は歯科で行います。特に歯周病が疑われる場合は、早めに歯科を受診し、専門的なクリーニングや治療を受けるのが良いでしょう。場合によっては、歯周病専門医に紹介されることもありますが、まずは一般の歯科で診てもらうのが一般的です。

歯根破折(しこんはせつ)

歯根破折(しこんはせつ)は、歯の根っこ部分にひびが入ったり、折れてしまう状態です。歯の根が折れると、痛みが生じたり、歯がぐらついたりすることがあります。歯の表面だけでなく、内部にある根の部分がダメージを受けているため、症状がわかりにくいこともありますが、放置すると歯を失うことになる場合もあります。 発症の原因には以下のものが考えられます。
①強いかみ合わせや外部からの衝撃:食べ物を強くかむことや、事故などで歯に衝撃が加わることで歯根が折れることがあります。
②歯ぎしり:長年にわたる歯ぎしりやかみしめによって、歯に継続的な力がかかり、歯根が徐々にダメージを受けることがあります。
③治療後の歯:根管治療をした歯や被せ物をした歯は、内部の神経がなくなっているため脆くなり、折れやすくなることがあります。
歯根破折は自然には治らないため、早めの治療が必要です。歯の状態や破折の程度に応じて、次のような治療法が選ばれます。
①軽度の歯根破折:小さなひび割れの場合は、歯の破折部分を固定するための治療が行われます。場合によっては、根管治療を行い、歯を保護するための被せ物(クラウン)を装着することがあります。
②重度の歯根破折:歯根が深く折れている場合、残念ながらその歯を抜かなければならないことが多いです。抜歯後には、入れ歯やインプラントなどで歯を補う治療が行われます。
次のような症状がある場合は、歯根破折の可能性があるため、早急に歯科を受診する必要があります:
・歯がぐらつく
・歯をかむと強い痛みがある
・歯の周りの歯ぐきが腫れている
・特定の歯に違和感や痛みがあるが、虫歯ではない場合
これらの症状は、歯根が折れているサインかもしれません。放置すると、さらに状態が悪化する恐れがあるので、歯科での早めの診断と治療が大切です。 歯根破折が疑われる場合、歯内療法専門医や口腔外科に紹介されることもありますが、まずは一般の歯科で適切な診断を受けることが大切です。

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)は、歯の根っこの先端(根尖部)で起こる炎症のことです。歯の構造は表面から「エナメル質」→「象牙質」→「歯の神経」となっていますが、この炎症は、主に歯の内部にある歯髄(神経)が細菌に感染して死んでしまい、細菌が根の先まで広がることで発生します。症状が進行すると、歯ぐきや顎の骨にまで影響が出て、腫れや痛みがひどくなることがあります。 発症の原因にはいくつか考えられますが、原因のほとんどは進行した虫歯です。
①進行した虫歯:虫歯が深く進行し、歯の神経が死んでしまうと、細菌が歯の根の先にまで達し、炎症を引き起こします。
②外傷による神経の損傷:歯に強い衝撃が加わることで、歯の神経がダメージを受け、感染が起こることがあります。
③根管治療の失敗:以前に行った根管治療が不完全だった場合、残っていた細菌が原因で炎症が再発することがあります。
根尖性歯周炎の治療は、感染した歯の内部や根の先端部分を清潔にし、細菌を取り除くことが中心となります。ただし、「根尖性歯周炎」も重度に進行したものは治療ができないので抜歯となります。また、以前に神経の治療をした歯が再び感染する場合もあります。神経の治療はその判断が非常に難しく、初回の成功率は80%程度で2回目以降の再治療の場合は60%程度と言われています。
①根管治療(こんかんちりょう):歯の中の神経や細菌が感染した部分を取り除き、根の中をしっかりと消毒して詰め物をする治療です。これにより、細菌の感染を防ぎ、炎症を抑えます。
②再根管治療:過去に根管治療を受けた歯で炎症が再発した場合、再度根管治療を行うことがあります。
③外科的治療(根尖切除術など):通常の根管治療では改善しない場合、歯の根っこの先端部分を外科的に切除することで、炎症を治療します。
④抗生物質の投与:炎症がひどい場合、歯医者さんが抗生物質を処方し、細菌の感染を抑えることもあります。
根尖性歯周炎は早期に治療しないと、痛みや腫れが悪化する可能性があります。以下のような症状が見られたら、できるだけ早く歯科を受診しましょう:
・歯に強い痛みがある、特にかんだときに痛みを感じる
・歯ぐきが腫れている、または膿が出ている
・熱が出たり、顔が腫れるほど炎症がひどい
・虫歯が進行しているが、放置してしまっている
これらの症状は根尖性歯周炎が疑われるサインで、放置すると症状が悪化し、歯を失う可能性もあるため、早めの対応が重要です。 根尖性歯周炎の治療は、歯科で行われます。特に根管治療を必要とするため、一般の歯科で診断・治療を受けるのが第一歩です。場合によっては、歯内療法専門医(根管治療の専門家)に紹介されることもあります。外科的な処置が必要な場合は、口腔外科で治療を受けることもありますが、最初は一般の歯科で診てもらうことが一般的です。

「歯がズキズキする」の正しい対処法は?

症状を緩和させる市販薬で代表的なものは、アセトアミノフェンやイブプロフェンを含む鎮痛剤が効果的です。特に痛みが強い場合はロキソニンSを使用するとよいでしょう。 市販薬を使用してはいけない症状というのはないですが、「歯茎が腫れている、膿が出ている」「顔の一部が腫れている」「歯がぐらぐらして動いている」などの症状がある場合は極力早めの受診をするようにしましょう。 市販薬は、パッケージや説明書に書かれている用法・用量を守って服用しましょう。空腹時に飲むと胃が荒れることがあるため、食後に服用するのが望ましいです。また、鎮痛薬は飲んですぐに効くわけではないので、痛みが強くなりすぎる前に早めに飲むのが効果的です。また、痛みが強いからといって、規定以上の量を飲んだり、短時間に繰り返し飲んだりしないように注意してください。特にロキソニンやイブプロフェンなどは、胃に負担がかかるため、服用に注意が必要です。胃腸の症状が出やすい方は痛み止めと同時に胃薬も飲むといいでしょう。 また、痛みのある部分を外から冷やすことも効果的です。保冷剤やアイスノンなどを使用して冷やします。布やタオルにくるんで直接皮膚に触れないようにしてください。15-20分程度冷やしたら20-30分程度間隔をあけてください。痛みが続く場合はこの繰り返しを行いましょう。逆に体を温めてしまうと痛みが悪化するので注意してください。 市販薬での対処は一時的なもので原因を取り除いたわけではないので、症状が改善しない場合には早めの歯科医院への受診をおすすめします。

「歯がズキズキする」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「歯がズキズキする」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

歯が急にズキズキ痛むのはなぜですか?

木下 裕貴歯科医師木下 裕貴(歯科医師)

歯の痛みが出る原因は一つではありません。「虫歯」「歯髄炎」「根尖性歯周炎」「歯周病」「歯ぎしり・食いしばり」「知覚過敏」など様々な原因で痛みが引き起こされます。まずは、歯科医院で原因をしっかりと特定してもらい適切な治療を受けましょう。

歯がズキズキ痛みだしたらどう対処したらいいですか?

木下 裕貴歯科医師木下 裕貴(歯科医師)

まずは市販の鎮痛薬を服用しましょう。前述の方法で痛みのある部分を冷やすことも効果的です。食事の際は極端に冷たいものや熱いものを避けるようにするといいでしょう。磨き残しが原因で痛みが出ている場合もありますが、固いブラシや強い力で磨くことはNGです。柔らかめのブラシを用いて毛先が開かない程度の力加減で何十回も細かく動かすようにしましょう。

虫歯じゃないのに歯がズキズキ痛むのはなぜですか?

木下 裕貴歯科医師木下 裕貴(歯科医師)

歯の痛みが出る原因は一つではありません。「虫歯」「歯髄炎」「根尖性歯周炎」「歯周病」「歯ぎしり・食いしばり」「知覚過敏」など様々な原因で痛みが引き起こされます。まずは、歯科医院で原因をしっかりと特定してもらい適切な治療を受けましょう。

まとめ 歯の病気は自然に治ることは少ないので早めの歯科医院への受診を

歯がズキズキと痛み始めたら、痛み止めを飲み、痛みのある部分を冷やすことは有効です。しかし、痛み止めや体を冷やすなどの方法はあくまでも一時的な対処法にすぎません。また、痛みの原因も様々考えられるため、早めに歯科医院を受診して適切な処置をしてもらいましょう。

「歯がズキズキする」症状で考えられる病気

「歯がズキズキする」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

歯科・口腔外科の病気

耳鼻咽喉科の病気

歯がズキズキする症状の原因には歯以外の病気の可能性もあります。しかし大半は歯の問題が起こっているため、まずは歯科での相談が適切だと思われます。

「歯がズキズキする」に似ている症状・関連する症状

「歯がズキズキする」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 黙っていても歯の痛みがある
  • 冷たいものや熱いものを食べたときに歯が痛む
  • 固いものを咬んだ時に歯が痛む
  • ハブラシのときだけ歯が痛む
  • 歯茎が痛む
  • 歯がグラグラする