「腰痛」初期・慢性段階の対処法を進行度合い別に解説「カギを握るのは筋トレとストレッチのやり方」
日本人にとって国民病とも言える「腰痛」を改善するには、正しい筋力強化やストレッチが不可欠です。それでは一体、どのようにおこなえばいいのでしょうか? 適切なケア方法について、進行段階別に「さがみ野こころ整骨院」の山口先生に教えていただきました。
監修柔道整復師:
山口 俊介(さがみ野こころ整骨院)
腰痛が慢性化する理由
編集部
なぜ、腰痛は慢性化しやすいのでしょうか?
山口先生
一般に、3カ月以上続く痛みのことを「慢性痛」と言います。腰痛は慢性化しやすい症状の1つで、筋肉、神経、脳が痛みにかかわっているのが理由とされています。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
山口先生
例えば、腰痛があると「また痛くなったらどうしよう」と不安になって、体を動かすことが怖くなることもあるでしょう。そうすると筋肉が硬直して、かえって腰痛を長引かせてしまいます。また、痛みの信号は末梢神経から中枢神経へ届けられ、脳が「痛い」と感じる仕組みになっているのですが、痛みが続くと中枢神経が興奮したままとなり、怪我が治った後も「痛い」という信号を送り続けてしまうことがあるのです。
編集部
さまざまな要因により、慢性痛が起きているのですね。
山口先生
そうですね。そのほか、痛みに対するストレスや不安などの心理が、痛みを長引かせているケースもあります。
編集部
慢性的な腰痛には、多くの原因が重なっているのですね。
山口先生
はい。怪我などが原因で急性腰痛が発症しても、そこに複数の要因が重なることで慢性化してしまいます。慢性腰痛の治療が難しいとされるのはこれが理由です。痛みを改善するためには、適切に対処する必要があります。
編集部
急性腰痛が慢性化すると、慢性腰痛になるのですか?
山口先生
必ずしも急性腰痛が慢性腰痛になるわけではありません。加齢などの原因により筋力が低下して、慢性腰痛を発症するケースもあります。ただし、急性腰痛に対して適切な対処をしなければ、慢性化することが多い傾向にあります。また、急性腰痛を何度も繰り返すことで、慢性腰痛に進行する場合もあります。いずれにしても、急性腰痛が慢性腰痛の重要なリスクとなるのは間違いありません。
腰痛には筋力強化とストレッチが有効
編集部
腰痛を自分で改善することはできるのでしょうか?
山口先生
腰痛が発生した原因にもよりますが、症状を軽減させることは可能です。例えば、そのためには筋力強化とストレッチが有効です。
編集部
なぜ、筋力強化が必要なのですか?
山口先生
特に腰痛の改善効果が期待されるのは、「下半身のトレーニング」です。大腿部(太もも)や臀部(お尻)の筋肉は、骨盤を支えるという重要な役割を担っています。そして、その上に背骨が積み木のように積み上がっています。つまり、大腿部や臀部などの下半身の筋肉が安定していればいるほど、背骨の安定性も高まるということです。反対に、土台の支えが弱いと上半身に症状が出やすくなり、腰痛につながってしまいます。
編集部
なるほど。土台となる下半身を鍛えるのが大事なのですね。
山口先生
はい。それから「体幹を鍛えるトレーニング」も必要です。なぜ体幹を鍛えると腰痛が緩和されるのかというと、体幹には姿勢を改善したり、腰椎をサポートしたりする効果があるからです。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
山口先生
筋肉が鍛えられると筋肉がコルセットのような役割をして、体幹を安定させてくれます。逆に体幹が弱いと筋肉で腰回りをサポートすることができず、正しい姿勢を維持することができません。そのため、不自然な姿勢で腰に負荷をかけ、さらに腰痛を悪化させてしまうのです。
編集部
正しい姿勢を維持して腰の負荷を軽減するということですね。
山口先生
そうです。さらに、筋肉量が増えると血流も増加します。すると体温が高くなって筋肉のこりもほぐれ、腰痛の改善や予防につながります。
編集部
一方、腰痛改善にストレッチが必要な理由は?
山口先生
腰痛の原因には、筋肉のこわばりや冷えなどさまざまなことが関係しています。ストレッチで筋肉の柔軟性を回復し、血流を良くすることでこれらの改善が期待できます。
「初期段階」「慢性段階」で、腰痛はどのようにケアすべき?
編集部
腰痛の初期段階と慢性段階では、ケアの方法は異なるのですか?
山口先生
はい。例えば、ぎっくり腰の直後などの痛みが強い時期に筋トレやストレッチをおこなうと、かえって炎症を促進して逆効果になります。その場合、体を休ませて安静にすることが必要です。
編集部
ほかに、筋トレをしてはいけない腰痛はありますか?
山口先生
筋肉痛が原因で腰痛が生じている場合や、内臓疾患などが原因となって腰痛が出ている場合には、筋トレをおこなってはいけません。軽いストレッチで腰をほぐす程度にとどめることをおすすめします。
編集部
急性期を過ぎたら筋トレを始めていいのですか?
山口先生
急激に痛みが生じるぎっくり腰などの場合、痛みが強い間は体を休ませることを第一におこないます。しかし、長期間安静にしすぎると、かえって回復を遅らせてしまいます。無理のない範囲で、ゆっくりストレッチを開始するようにしましょう。
編集部
ストレッチはどのタイミングから始めたらいいのですか?
山口先生
ご自身で始める場合には、痛みが取れたらおこなうようにしましょう。ただし、治療院などで専門家による施術を受ける場合には、多少痛みが残っていても、動けるようになった段階で開始することをおすすめします。その方が治りは早く、改善効果も高くなります。
編集部
慢性期の筋力強化やストレッチで気をつけることはありますか?
山口先生
腰回りだけでなく、下半身、背筋や腹筋、胸筋などもバランスよく鍛えることが必要です。ただし、筋力強化はすぐに効果が実感できるわけではないので、地道に取り組むようにしましょう。また、早く腰痛を治したいからといって、過度なトレーニングをおこなうのは逆効果です。自分のペースに合わせておこなってくださいね。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山口先生
近年は健康志向の高まりに伴い、筋力強化に励む人が増えています。動画サイトなどでも筋力強化の方法やトレーニング法を投稿している人も多く、以前と比べて家庭でも取り組みやすくなりました。しかし、筋力トレーニングをおこなう上で大切なのは、「正しいフォーム」と「適切な負荷をかけること」です。痛みや違和感があっても「筋トレをしているせい」と考え、トレーニングを続けてしまう人が多いのですが、もしかしたらフォームや負荷が適切でないため、痛みや違和感などが生じているのかもしれません。効果のあるトレーニングには、一定の技術が必要です。できれば専門家の指導を仰ぐことも視野に入れ、正しいトレーニングを実施してほしいと思います。
編集部まとめ
腰痛予防のためには、適切な筋力強化やストレッチが必要とのことでした。しかし、過度に負荷をかけすぎたり、誤ったフォームでトレーニングをしたりしていては、かえって腰に負担をかけてしまうこともあります。まずはトレーナーや柔道整復師などの専門的な知識を持った人にアドバイスを求め、正しいやり方を身につけるのが腰痛改善の近道です。
医院情報
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診療科目 | 整骨院 |