その肩こり・腰痛、枕が原因かも!? 自分に合った枕の選び方を理学療法士が紹介
普段、寝る時に使っている枕は、体にフィットしていますか? 慢性的な肩こりや腰痛の原因は、もしかしたら毎日使っている枕にあるのかもしれません。今回は、自分に合った枕の選び方について、「TKM整骨院」の手倉森先生に解説していただきました。
監修理学療法士:
手倉森 勇夫(TKM整骨院)
枕が肩こりや腰痛の原因になる?
編集部
枕が肩こりの原因になることもあると聞きました。本当ですか?
手倉森先生
はい、本当です。なぜなら、枕が合わないと睡眠中、無意識のうちに頸椎へストレスがかかり続けるからです。
編集部
どういうことでしょうか?
手倉森先生
体に合わない枕を使って眠っていると、頸椎にストレスがかかってしまいます。そもそも肩こりは、首から肩にかけての筋肉が硬くなった状態です。首から肩にかけての筋肉は、頭を保持する役目を担っているのですが、頸椎にストレスがかかるとこの辺りの筋肉が弱くなり、どんどん硬くなってしまいます。そのため、肩こりが起きやすくなるのです。
編集部
肩こりだけでなく、枕が腰痛の原因になることもあるのですか?
手倉森先生
あり得ます。なぜ枕が腰痛の原因になるかというと、高さが合っていない枕を使うと首の骨に負担がかかり、就寝時の姿勢が崩れるからです。本来、背骨は首から腰まで連なってS字カーブを描いていますが、首の骨に負担がかかるとこのS字カーブが崩れて反り腰になるなど、腰に影響を与えてしまいます。そのため、腰痛を引き起こしやすくなるのです。
編集部
姿勢が崩れることが腰痛の原因なのですね。
手倉森先生
それ以外にも原因があります。例えば、合わない枕を使っていると肩甲骨周りの筋肉に余計な負荷がかかり、それによって筋力が弱くなることで腰痛につながることもあります。肩甲骨周りの筋肉には腰を保護する役割があり、それらが弱くなると腰痛を招くことがあるからです。同様に、合わない枕を使って腰の骨周りの筋力が弱くなったり、お尻の筋肉が弱くなったりすることも腰痛の原因になります。
体に合わない枕を使うとどうなる? 肩こり・首こりのメカニズム
編集部
肩こりや首こりのメカニズムについて、もう少し詳しく教えてください。
手倉森先生
肩こりや首こりと深く関わっているのは「スマホ首」です。現代人はスマートフォンやパソコンをよく使う生活のため、猫背になりがちです。
編集部
「スマホ首」とはなんですか?
手倉森先生
スマホやパソコンを使うときは、自然と頭を肩より前に突き出す姿勢になると思います。この状態を長く続けると、頭を支えるために首の周辺に大きな負荷がかかってしまいます。本来、首の骨は重い頭を支えるために緩やかなS字カーブを描いているのですが、頭を前に突き出した状態が長く続くと、頸椎がまっすぐになってしまいます。これがスマホ首です。
編集部
スマホやパソコンの使いすぎによって体勢が悪くなることが、スマホ首の原因になるのですね。
手倉森先生
それから、スマホ首はストレートネックとも深い関わりがあります。ストレートネックとは本来、S字を描いている首の骨がまっすぐになっている状態のことを指します。ストレートネックになると頭の重さに首の骨が耐えきれなくなってきますから、肩や首周りの筋肉が緊張して肩こりを起こしやすくなります。そして、ストレートネックの人がスマホやパソコンを使うと、より一層、肩や首周りの筋肉が緊張して肩こりがひどくなります。
編集部
ストレートネックになると、どのような症状が起きるのですか?
手倉森先生
ストレートネックになると頸椎の後方にある筋力が弱くなってきます。そのため、首の前側にある胸鎖乳突筋も硬くなり、そのために肩こり、頭痛、めまいなどが起きやすくなります。
編集部
めまいなども起こり得るのですね。
手倉森先生
はい。それから、胸鎖乳突筋が硬くなると顎関節症にも影響します。なぜなら、胸鎖乳突筋は耳たぶの後ろあたりについていて、顎関節ととても近い位置にあるからです。そのため私は、ストレートネックと顎関節症には深い関係があると考えています。
編集部
ストレートネックは首や肩だけでなく、全身の症状を引き起こすのですね。
手倉森先生
そのほか、顔のたるみや首周りのシワなど、美容面で影響を及ぼすこともあります。放置すると様々な害が及ぶので、「ストレートネックかもしれない」と思ったらきちんと対処することが必要です。
肩こりや腰痛の防止に! 理学療法士が薦める自分に合った枕の選び方
編集部
どのような枕を選べば、肩こりや首こり、腰痛の予防になるのですか?
手倉森先生
まず考えたいのが、枕の高さです。横向きになって寝て枕を当てたとき、体の中心線が床と並行になり、なおかつ首や肩周辺に痛みや違和感のない高さを選びましょう。一般的な成人で約8cmと言われています。なお、筋肉量が多かったり肩幅が広かったりすると、もう少し高さが必要かもしれません。
編集部
硬めの枕と柔らかめの枕はどちらがいいのですか?
手倉森先生
硬めの枕の方が高さを保てるのでおすすめです。なお、素材によって枕の硬さは変わります。パイプやそば殻、ヒノキなどは硬め、ポリエステルや羽毛などは柔らかめです。そのなかで一番おすすめしたいのが、そば殻です。ただし、そばアレルギーの人は使えませんから、その場合はあずきを詰めた枕を使ってもいいでしょう。あるいは、バスタオルを三つ折りか四つ折りにして、頭の下に当てるのもいいと思います。
編集部
柔らかめの枕はあまりよくないのでしょうか?
手倉森先生
柔らかいと頸椎にストレスがかかりやすくなります。また、耐久性がいまひとつで、すぐにヘタってしまうという難点があります。そのため、できるだけ硬めの枕を選ぶことをおすすめします。
編集部
最近だと低反発枕も販売されていますが、こちらはどうでしょうか?
手倉森先生
低反発素材で作られていて力がかかるとゆっくりと沈み、力がかからなくなるとゆっくり元の形に戻るのが低反発枕の特徴です。寝ているとき、肩や首などにかかる負担を軽減するとされていますが、その反面、頭や首が枕に沈み込んで寝返りを打ちにくいというデメリットがあります。寝返りは睡眠中の姿勢を補正する大事な役割があるので、肩こりや腰痛のある人は使わない方がいいかもしれません。
編集部
オーダー枕や医療用枕についてはいかがでしょうか?
手倉森先生
オーダー枕は一人ひとりにフィットする高さに仕上がるのでいいと思いますが、値段が高めですよね。また、医療用枕は寝返りをしやすい立体構造になっていたり、高さを調整できたりしますが、私自身は、枕はフラットな状態がベストだと考えています。高さに高低差があると、頸椎に負担がかかりやすくなるからです。仰向けになったとき8cmほどの高さがある、フラットな枕を選ぶといいのではないでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
手倉森先生
睡眠は人生の1/3を占めるため、それに深く関係している枕をはじめとする寝具選びは重要です。体に合わない枕を使っていることで、首や肩の痛み、背中のハリ、腰の痛みなどを招く可能性があります。また、夜中に何度も覚醒したり、朝の目覚めがスッキリしていなかったりすることも、枕が合わないことが原因かもしれません。古い枕を何年も使い続けている人もいますが、枕にも寿命があります。柔らかい素材だけでなく、そば殻のように硬い素材でも寿命がありますから、中の素材がヘタってきて「枕の高さが低くなってきたな」と思ったら、新調するタイミングです。しっかり体にフィットした枕を使って、質の良い睡眠を取るようにしましょう。
編集部まとめ
つい何気なく選んでいるかもしれませんが、枕は良質な睡眠を取るためにとても重要な要素です。睡眠をしっかり取ることができれば充実した日中を過ごすこともできますし、免疫力アップや疲労回復の効果も期待できます。ぜひ、高さや硬さに気をつけて、体にぴったり合った枕を選ぶようにしましょう。
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