早歩きは厳禁!? 「股関節の痛み」を予防する運動・生活習慣をご紹介
「股関節が痛い・重い・だるい」などの異変を感じることはありませんか? 股関節の不調を改善するには運動療法や生活習慣の見直しが必要ですが、なかにはかえって股関節痛を悪化させてしまうことがあるかもしれません。今回は、股関節の正しいケア方法について、「あおぞら整骨院」の水野先生にお聞きしました。
監修柔道整復師:
水野 雄介(あおぞら整骨院)
股関節の痛み、その原因は?
編集部
股関節に痛みが出る原因について教えてください。
水野先生
股関節に痛みなどの違和感が生じる原因には様々なものがありますが、そもそも腰から下の部位に生じる痛みには重力が関係しています。つまり、姿勢の乱れや筋力の低下などが原因となり、重力に逆らえなくなったため、関節が変形したり、痛みを生じたりするのです。
編集部
重力に逆らえなくなると、どのような疾患を発症するのですか?
水野先生
「変形性股関節症」が例として挙げられます。大腿骨と骨盤の間にある軟骨が何らかの原因によりすり減った結果、痛みが生じたり、骨が変形したりする疾患です。
編集部
なぜ、軟骨がすり減ってしまうのですか?
水野先生
様々な原因が考えられますが、主に姿勢の乱れや筋力の低下です。また、加齢や肥満も軟骨のすり減りの原因となります。そのほか、先天性股関節脱臼や乳児期の臼蓋形成不全なども将来、変形性股関節症の発症リスクとなることがわかっています。
編集部
変形性股関節症以外にも、股関節の痛みを招く疾患はありますか?
水野先生
例えば、股関節炎や股関節脱臼、リウマチ性関節炎、大腿骨頭壊死症なども股関節の痛みや違和感などを引き起こす原因です。また、スポーツ外傷や怪我なども股関節の痛みを招くことがありますし、左右の筋肉バランスが異なっていることも股関節の痛みの原因になり得ます。
編集部
股関節の痛みを招く疾患は色々あるのですね。
水野先生
はい。股関節は、人間の体のなかで最も大きな関節です。また、身体活動を支える上で重要な筋肉が骨盤周辺に集中していることもあり、1つの筋肉が問題を起こすと、そのほかの筋肉も連鎖的に障害を受けて筋膜などの不一致が起きます。それが、関節のズレや姿勢の乱れなどにつながるのです。
編集部
なるほど、股関節は非常に重要な関節なのですね。
水野先生
そのとおりです。それから、股関節は上半身と下半身をつなぐ役割も担っており、体重の負荷がかかる部位でもあります。そのため、痛みや違和感などの故障が生じやすく、とくに加齢とともに身体機能が衰えることによってトラブルが発症しやすいと考えられています。
股関節の痛みを防ぐにはどうしたらいい?
編集部
股関節の痛みが出たらどうすればいいでしょうか?
水野先生
まずは、「痛い」「重い」などの症状が出たら早めに整形外科を受診して、原因を確認しましょう。変形性股関節症などの疾患を放置すると、安静時にも痛みが出たり、痛みで眠れなくなったりするほか、将来的には歩行が困難になって人工関節などの手術が必要になることもあります。早めに原因を明らかにして、速やかに治療を開始することが大切です。
編集部
股関節の痛みが悪化・再発しないように、日常生活で気をつけることはありますか?
水野先生
医師の診察を受け、手術の必要がなく保存療法をおこなうよう指示されたら、運動療法や生活習慣の改善などをおこないましょう。とくに運動は重要で、股関節痛を改善するには「適切なトレーニング」と「やってはいけないトレーニング」があります。また、体には必ず「頑張る筋肉」と「サボる筋肉」がありますから、全身の筋肉のバランスを整えるためにはサボる筋肉を鍛えることが大事です。そのため、専門家に的確なアドバイスをもらいながら、正しい運動習慣を身につけましょう。
編集部
ほかにも、日常生活で気をつけることはありますか?
水野先生
肥満の人は要注意です。肥満になると股関節だけでなく、膝などにかかる負担も増大するので、体重を増やさないように気をつけましょう。また、痛みがあるときには激しい運動、立ち仕事、立ったり座ったりを繰り返す動作なども股関節の負担になるので避けましょう。ただし、回復傾向にあるときには、少し負荷の強い運動の方が体に良い刺激となるため、運動強度を調整しましょう。
編集部
具体的に、どのような運動をしたらいいですか?
水野先生
股関節を動かすために必要な筋力や股関節周辺の柔軟性を養うために、筋力トレーニングやストレッチをおこないましょう。痛みがあるからといって体を動かさずにいると、ますます筋力が衰えて可動域が狭まり、股関節の痛みや違和感が増してしまいます。無理のない範囲で全身を動かしてください。
股関節痛を予防するために必要な運動療法とは?
編集部
股関節痛を予防するためには、どのような運動が必要ですか?
水野先生
股関節の痛みがあるときには、水中でのウォーキングがおすすめです。浮力により股関節にかかる負担を軽減することができますし、水圧がある分、陸上よりも大きな効果を期待することができます。ただし、股関節の痛みがないときには陸上での運動をしましょう。なぜなら、陸上で運動する方が重力を負荷として利用することができるからです。
編集部
陸上では、どんな運動をしたらいいでしょうか?
水野先生
ウォーキングは、股関節痛を予防するという意味では効果的です。ただし、歩くスピードと距離には気をつけてください。ゆっくりとしたスピードで無理ない距離を歩くことを心がけましょう。
編集部
早歩きはダメなのですか?
水野先生
あまり早く歩くと股関節への負荷が大きくなり、逆効果になることがあります。股関節には、歩行中に体重の2.5~3倍、走っているときは体重の約4倍の負荷がかかるという説もあります。早歩きをすると余計に股関節を傷めるリスクがあるのです。
編集部
それでは、どのような歩き方をしたらいいのでしょうか?
水野先生
一般に「1日1万歩歩きましょう」と言われていますが、私は歩数に気をつけるよりも「インターバル歩行」という歩き方を推奨しています。インターバル歩行は、例えば「3分普通のペースで歩いた後、3分早歩きをする」といったように、歩く速さを交互に変える方法です。こうしたウォーキングを週4回、1日30分程度続けることで、筋肉がつくということが研究により明らかになっています。
編集部
日常生活に気をつけるとともに、そうした運動習慣を身につけることで、股関節痛を予防することができるのですね。
水野先生
はい。股関節が痛いからといって家の中に閉じこもっていると、ロコモティブシンドロームの原因になったり、人と会う機会が少なくなることでうつなどメンタルの不調を発症したりすることもあります。日光に当たりながら外を歩くと気持ちも明るくなり、うつの予防や改善にも効果が期待できると思います。また、運動や日常生活に気をつけても痛みが引かない場合には、専門家に相談しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
水野先生
一般的に「歩くことが健康にいい」と言われていますが、トレーニングとしてウォーキングを取り入れるには、歩く速さや距離、フォームなど、気をつけるべきポイントがたくさんあります。漠然と歩いているだけでは、なかなかトレーニング効果を期待できないので、ウォーキングを股関節痛の予防などに役立てるためには、正しい運動の仕方を専門家に指導してもらうことが重要です。現在はインターネットなどで様々な情報を簡単に入手することができ、何を選択したらいいのかわからないという人も多いと思います。ぜひ医師や専門家に相談して、正しい運動習慣を身につけてほしいと思います。
編集部まとめ
運動することが身体にいいとはいえ、自己流でおこなっているとかえって体を痛めてしまうこともあります。一度、正しい方法を指導してもらい、適切な運動習慣を身につけることが健康への近道です。整形外科や整骨院などで相談してみると、役立つアドバイスがもらえると思います。
医院情報
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診療科目 | 整骨院 |