腰痛になったらマッサージはしない方がいい? 柔道整復師が判断基準・種類・注意点を解説
腰痛になったとき、マッサージをしてもいいのか、それともしない方がいいのか。悩んだことがある人もいると思います。「マッサージをすることで、かえって痛みがひどくならないのか」「マッサージをするとしたら、どんな方法がいいのか」など、気になる点がありますね。今回は腰痛時のマッサージについて、「中野島整形外科」に勤務されている柔道整復師の関根先生に教えていただきました。
監修柔道整復師:
関根 武司(中野島整形外科)
腰痛になったとき、自分でマッサージしてもいい?
編集部
腰痛になったときにマッサージをすると、悪化しないのか心配です。
関根先生
あくまでも1つの目安ですが、「ぎっくり腰を起こした直後」など、痛みが出てすぐにマッサージをおこなうのは危険です。また、「夜間痛がある」「腰だけでなく足にも症状がある」「発熱がある」という場合にも、マッサージを避けた方がいいです。総じて、腰痛の炎症期は安静にするのが基本となります。マッサージをおこなうのは、ある程度症状が落ち着いて痛みがなくなってからにしましょう。
編集部
自分でマッサージをしてもいいのですか?
関根先生
腰痛のなかには、マッサージによって症状が改善できるものとできないものがあります。それを見極めるのは、一般人では困難でしょうから、できる限り専門家に依頼することをおすすめします。
編集部
マッサージをしてもいい腰痛というのは、どのようなものですか?
関根先生
血行不良で筋肉が緊張していることによって腰痛が起きている場合は、マッサージの効果が期待できます。しかし、例えば椎間板ヘルニアのように、痛みが神経に起因していたり、骨に原因があったりする場合は、マッサージをすることで逆に痛みがひどくなることもあります。
編集部
腰痛によるマッサージは、どこで施術を受けるのがいいでしょうか? 受診先を教えてください。
関根先生
まずは整形外科を受診して、必要に応じてレントゲンを撮ったり、MRI検査をおこなったりして、痛みの原因を確認しましょう。腰の痛みがどのような状態で現れているのか、医師に診断してもらったうえで、接骨院・整骨院、整形外科など、ご自分が通いやすいところでマッサージを受ける流れがいいと思います。ストレッチなどの運動療法を組み合わせることでも効果が期待できます。
腰痛のマッサージの種類や方法をご紹介
編集部
マッサージにも色々な種類があるのですか?
関根先生
細かく分けると、マッサージの手法にはいくつかの種類があり、それぞれ効果が異なります。一般的には、「軽擦(けいさつ)法」「圧迫法」「揉捏(じゅうねつ)法」といった手技を使い分けています。
編集部
それぞれのマッサージについて、簡単に教えてください。
関根先生
まず、軽擦法は文字通り、手や指を痛みのあるポイントに当てて、軽く皮膚の表面をさする方法です。施術だけでなく、身体の状態を確認するために用いることもあります。血液・リンパ液の循環を促進して、老廃物を除去して疲労回復を早める効果があります。そのほか、リラックス効果も期待できます。
編集部
次に、圧迫法とはなんですか?
関根先生
圧迫法は、手の付け根や肘などを用いて、施術者が体重をかけて患部を圧迫する手技のことを指します。身体の痛みや疲労、筋肉のこりの改善を目的におこないます。また、圧迫を弱くすると神経を興奮させる作用があり、反対に圧迫を強くすると神経を鎮静させる効果が期待できます。
編集部
最後、揉捏法についてお願いします。
関根先生
揉捏法は、手のひらや指などを使って、垂直に圧をかけながら筋肉を揉みほぐし、筋肉の組織を動かす方法です。軽擦法とともにおこなって、血液やリンパ液の循環を促進したり、過度に緊張した軟部組織や筋肉を緩めたりする効果があります。皮膚表面や筋肉の血流を改善するために重要です。
編集部
それらの手技を使って、腰痛を改善していくのですね。
関根先生
はい。マッサージとは、ただ闇雲に揉んだりさすったりすればいいというわけではありません。正しい方法でないと、かえって痛みが増強してしまうこともあります。そうならないためにも、まずは整形外科を受診して痛みを特定してもらってからマッサージを受けるようにしましょう。
編集部
自宅でもセルフケアができますか?
関根先生
医師から指導してもらった内容を適切に実践することで、痛みを改善することもできます。その場合にはマッサージだけでなく、ストレッチや筋トレなども併用して総合的にケアすると、より効果を実感しやすくなるでしょう。
マッサージしても腰痛が改善しない場合は?
編集部
マッサージをしても、腰痛が改善しない場合はどうしたらいいのでしょうか?
関根先生
先述したように、神経や骨が原因となって起きている腰痛の場合は、マッサージでは改善することができません。その場合には、整形外科などで専門的な治療が必要です。
編集部
マッサージをすると、ときどき「もみ返し」があります。どうしたらいいのでしょうか?
関根先生
もみ返しと一口にいっても、「良いもみ返し」と「悪いもみ返し」があります。「良いもみ返し」とは、体が正常な状態へ戻る際に起きる好転反応です。マッサージを受けることによって、蓄積していた老廃物や毒素がスムーズに流れるようになったり、鬱血していた血液が巡り始めたりすることによって起こります。この場合はしばらくすると痛みが治るので、そのまま様子を見ましょう。
編集部
必ずしも、もみ返しは悪いものではないということなのですね。
関根先生
そうですね。また、もみ返しが出やすい人とあまり出ない人がいます。もみ返しは治癒のプロセスですから、次第に痛みや違和感が引いていく場合には、あまり気にしなくても大丈夫です。
編集部
一方、「悪いもみ返し」とはなんですか?
関根先生
受け手が過度に緊張してしまうことによって、筋膜や筋繊維が損傷して炎症を起こすともみ返しが起こります。施術の後に痛みが3日以上続く、頭痛や吐き気がするといった場合は別の原因の可能性もあります。その場合は速やかに整形外科へ相談しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
関根先生
腰がどうして痛いのか原因がわからないまま不安な状態で悩んでいるよりも、まずは専門家による適切な診察を受けて不安を取り除いてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
このご時世、ご自宅でマッサージなどのセルフケアをしたいという人も多いでしょう。ただ、自己流でおこなうと、かえってダメージを与えてしまうこともあります。まずは整形外科で必要に応じた検査を受けて、正しいケアの方法を医師に指導してもらうことをおすすめします。
医院情報
所在地 | 〒214-0012 神奈川県川崎市多摩区中野島6丁目26-2 |
アクセス | JR南武線「中野島駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 整形外科、脊椎外科 |