交通事故で「むちうち損傷」になったときの症状・対処法・施術内容などを柔道整復師が解説
交通事故でよく耳にする「むちうち損傷」、この症状を明確に説明できますか? 今回は、整骨院や接骨院で施術したケースを取りあげます。むちうち損傷の施術期間や内容も含めて、Medical DOC編集部が柔道整復師の飯島先生(はなまる鍼灸接骨院)に最新事情を伺いました。
監修柔道整復師:
飯島 将太郎(はなまる鍼灸接骨院)
むちうち損傷には、どんな症状がある?
編集部
まずは「むちうち損傷」の中身についてお聞きしたいです。具体的にどのような症状があるのでしょうか?
飯島先生
正式には「頸椎捻挫」と言いますが、一般には「外圧を受けた後に覚える首の痛みや違和感」といったところでしょうか。骨折や脱臼と違って、捻挫はX線検査で判明しないこともあります。
編集部
症状として多いのは、やはり「首の痛み」でしょうか?
飯島先生
そうかもしれませんね。しかし、神経を損傷していると様々な症状が出ます。具体的には、頭痛やめまい、なんとなくの重だるさなどですね。もし、めまいと吐き気を伴うとしたら、比較的重症の部類と言えます。また、後遺症として症状が改善せずに固定されてしまうこともあります。
編集部
だとすると、「腰のむちうち損傷」という概念はないのですね。
飯島先生
はい。用語にこだわるよりも調子が悪かったらご相談いただいて、なるべく保険会社に費用負担をしてもらうのがいいと思います。当事者同士の示談にせず、「事故扱い」として自賠責や任意保険を通せば、自己負担なしで施術を受けることができます。
編集部
受診先として、整形外科をはじめとする医療機関と接骨院や整骨院などが考えられますよね?
飯島先生
そうですね。受診先については、「交通事故を扱う専門的な医療機関が少ない」ことと「捻挫はX線の画像に現れにくい」ことが受診先を選ぶポイントになると考えます。また、私個人の見解ですが、むちうち損傷を医療機関で治療しても、痛み止めや湿布の処方でとどまってしまうのではないでしょうか。他方で接骨院や整骨院の中には、当院のように交通事故対応に特化した施設がありますし、体に起きていることに対して具体的な施術をすることができます。
交通事故でむちうち損傷になったときの対処法
編集部
続いて対処法ですが、今回は接骨院や整骨院に絞って伺おうと思います。
飯島先生
わかりました。まず、注意点ですが事故から日にちが過ぎれば過ぎるほど「現在の症状は、本当に交通事故によるものなのか」という疑義を挟みやすくなります。これは保険会社の費用負担に関わる部分です。ですから、症状と事故を速やかに結び付けることが大切です。この点は、医療機関でも接骨院や整骨院でも変わりません。ただし、むちうち損傷の場合は首だけではなく頭痛など、ほかの症状も気にした方がいいかもしれませんね。
編集部
だとすると、医療機関は前述の「頭痛」などが置いてきぼりにしがちということですか?
飯島先生
頭痛などの「わかりやすい症状」なら考慮してくれるかもしれません。しかし、追突事故によって腰や足などに軽微な損傷が出ていても、診断がないと治療手順に乗ってきません。そういう意味では、接骨院や整骨院の方が「痛みに対して対処できる幅は広い」と思います。もちろん、親身になってくれる医療機関もあるとは思います。
編集部
交通事故でのむちうち損傷は、何日後くらいに痛み出してくるのでしょうか?
飯島先生
事故直後に限らず、1週間程度かかる場合もあります。ですが、肝心なのは「症状と事故を速やかに結び付けること」です。自覚症状の軽重にかかわらず、事故直後に一度、受診しておいてください。両者を紐付けられれば、その後に症状が悪化したとしても「交通事故が原因」とみなしやすくなります。
編集部
事故直後の応急処置で知っておくべきことがあれば教えてください。
飯島先生
むちうち損傷は生死に関わるような病気でもないので、「応急処置」という概念がなじみません。一時的に、市販薬の湿布などに頼っても構いませんが、やはり受診だけはしておきましょう。事故直後から受診まで2週間以上空いてしまうと、保険会社からの支払いが認められなくなるかもしれません。
むちうち損傷の施術について
編集部
むちうち損傷に対して、接骨院や整骨院ではどのような施術をするのでしょうか?
飯島先生
主に痛みの緩和や筋肉のこりの解消を手技によっておこないます。このとき、必ずしも首に限らない点が、接骨院や整骨院の特徴と言えるでしょうか。その際、「施術回数を重ねるに応じて、症状は楽になる」ということを覚えておきましょう。つまり、初期で痛みがひどければ通院回数を増やし、痛みが緩和していくに従って通院間隔を延ばしていくイメージです。
編集部
こうした費用が実質、自己負担「ゼロ」ということですか?
飯島先生
そうなります。ですから、「どういう施術をするのですか?」という質問を受けることがあるものの、いずれの方法でも請求可能ということです。全体の計画はご説明しますが、自己負担額ゼロという時点で、お任せいただくことが多いですね。
編集部
費用について、先ほど後遺症の話が出ていましたね。もう少し詳しく聞きたいです。
飯島先生
多くの場合、施術開始から3~6カ月ほど経過した段階で保険会社から「症状固定にしませんか?」と終了をうながされます。その段階で、後遺症扱いにするかどうかを医師と相談してみましょう。また、後遺症認定等級によって慰謝料などが異なります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
飯島先生
むちうち損傷で後遺症が認められるのは一部のケースです。等級認定に至らなかった場合に覚えておいていただきたいのは、通院していれば「通院慰謝料」が認められることです。後遺症慰謝料とは別の枠組みですので、ぜひ知っておいてください。保険会社から通院の終了を告げられた後に「通院慰謝料」を請求できます。
編集部まとめ
交通事故直後は整形外科などの医療機関を受診して、交通事故と身体症状の「紐付け」をおこなっておきましょう。ただし、利便性があるのは接骨院や整骨院という印象でした。首以外の軽度な症状の有無や、営業時間を含めた通いやすさも見据えて、通院先を吟味しましょう。仮に接骨院や整骨院に行くとしたら、「施術回数を重ねるに応じて、症状は楽になる」ということでした。だとしたら、初期の段階で「施術というステップ」をなるべく多く踏んでおきたいものですね。
医院情報
所在地 | 〒244-0003 神奈川県横浜市戸塚区戸塚町4088 神保ビル3F |
アクセス | JR「戸塚駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 接骨院 |