交通事故でのケガは自賠責保険や任意保険でどこまでカバーできるのか解説、自己負担額ゼロも可能!
交通事故後の処理は多くの場合、保険会社に“お任せ”となるでしょう。しかし、民間企業である以上、そこに「会社の都合」は挟まらないでしょうか。今回はMedical DOC編集部が、「自己負担額ゼロ」を実現している美容外科医の鈴木先生(池袋サンシャイン美容外科)に、詳しい話を伺ってきました。
監修医師:
鈴木 栄樹(池袋サンシャイン美容外科)
受傷直後に治療した場合の費用
編集部
交通事故直後のケガの治療では、どのような費用減免措置がとられるのでしょうか?
鈴木先生
一般的には、「契約していた保険会社の指示に従う」ということになるでしょう。なお、今回は、「加害者側が自動車を運転していて、自賠責保険や任意保険に加入していること」を前提に話をします。自転車との事故などは保険のかかり方が様々なのでケース・バイ・ケースになるでしょうし、治療を必要とするケガに至ることも少ないと思います。
編集部
わかりました。保険会社に任せる場合、「加害者の保険」を使って手続きしていくと思うのですが?
鈴木先生
そうなることが多いでしょう。このとき、被害者は該当する保険会社とはじめて話すことになると思います。そこで懸念されるのが、保険会社の都合のいいようにリードされてしまう可能性です。しかし、ご相談いただければ「被害者の治療費の自己負担分を実質ゼロ」にすることが医療機関によっては可能です。被害者に代わって直接、治療計画書や治療費のお見積もりなどを提出します。
編集部
加害者が自賠責保険しか入っていないと、支払い可能額を制限されると聞いたことがあります。
鈴木先生
はい。自賠責保険は「年間120万円まで」と上限が課されています。ですが、自動車との事故を前提にすると、ほとんどの場合で任意保険も加入しているのではないでしょうか。そのため、任意保険に加入しているケースの対処法を考えていきましょう。
編集部
わかりました。直接の示談も除外して、あくまで保険会社を挟むケースということですね。
鈴木先生
保険会社を挟んでいれば、事故直後の被害者の治療費は全額、保険会社が支払います。ただし、被害者が立て替えておいて後に被害者本人へ充当されるのか、治療をおこなった医療機関に振り込まれるのかは、保険会社によって異なるようです。仮に「被害者に前払い」すると、治療せずに費用だけ得るケースが考えられるからでしょう。
リハビリや傷跡が残ってしまった場合の費用
編集部
続けて、交通事故からしばらく経ち、後遺症が残った場合についてもお願いします。
鈴木先生
その場合、大きく2段階にわかれます。治療を受けても症状が改善しなくなってきたことを「症状固定」と言います。この症状固定の前の段階なら、上述した流れと同様で、保険会社から必要な治療費が全額支払われます。一方、症状固定の後であれば、別途、後遺障害等級の認定が必要です。後遺症として認められれば、その等級によって保険金が支払われます。
編集部
後遺症として認められるかどうかがポイントになりそうですね。
鈴木先生
そうなのですが、当院の場合は保険会社と交渉して、可能な限り全額負担となるようにしています。例えば、顔面の場合「10円玉の大きさ以下の傷跡」は後遺症の認定基準に含まれません。例え「10円玉の大きさ以下の傷跡」が複数、顔面全体に広がっていたとしてもです。しかし、シミの治療のように、レーザー術で改善できる場合もあります。改善できるのであれば症状固定にはなりませんので、治療費としての請求ができます。
編集部
審美治療的な側面があったとしても、請求可能ということですか?
鈴木先生
患者さん次第ですね。顔は別とすると、「少しくらいの傷跡なら気にならない」という人もいらっしゃるでしょう。他方で、綺麗に治したくて、それが可能であれば「治療をやり尽くした方がいい」ように思います。保険会社から「美容外科には行かないでください」と言われることもあるようですが、そのような“決まり”はありません。患者さんはどうしても情報弱者になってしまいますから、ぜひ当院をはじめとする医療機関へご相談ください。
編集部
リハビリの場合も含めて、1回では終わらない場合の通院費用はどうなるのでしょうか?
鈴木先生
入院や通院費用についても、自己負担ゼロが可能です。もっとも、被害者側の生命保険なども絡みそうですから、どの保険会社が費用負担するのかはケース・バイ・ケースです。加えて、一時金として一括払いだったり、実費精算だったりします。詳しくは、ご自身の契約した保険会社などに問合わせてみてください。少なくとも、被害者側が“全額自己負担する必要はない”ということです。
全ての医療機関が交渉してくれるわけではない
編集部
受けたい最新の治療がそもそも自費診療というケースもありそうですよね?
鈴木先生
傷跡治療を前提にすると、ほとんどの場合が自費診療となります。例外は、受けた傷によって関節の可動域が制限されるような「生活に支障が出ている場合」です。しかし、自費診療であっても、保険会社から治療費が支払われるようにすることは可能です。もちろん、傷跡治療以外でも、必要であれば「保険診療か自費診療か」は問いません。
編集部
今回は除外しましたが、加害者が自賠責保険しか入っていないケースもあるのですよね。
鈴木先生
先ほどお話ししたように、加害者側の自賠責保険による保証には「年間120万円まで」という制限があります。この上限には、治療費に限らず、例えば救急車を呼んだ場合も含めた「全ての費用」に対してです。任意保険の加入を勧められるのは、この上限のためでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
鈴木先生
当院には、全国から交通事故後の傷跡治療についてのお問合わせがあります。また、遠方から通院されている患者さんもいらっしゃいます。それだけ交通事故後の傷跡治療、とくに保険会社との交渉まで手掛けている医療機関が“珍しい”のだと思われます。交通事故の傷跡の治療でお困りごとがあれば、ぜひ遠慮なくご相談ください。
編集部まとめ
交通事故後の傷は、進め方によって「自己負担額ゼロ」にできるとのことでした。しかし、担当医師が治療計画や見積もりを元に保険会社と交渉しないと、保険会社の「言われるがまま」になってしまうかもしれません。保険会社の指示を「そういうものなんだ」と思い込まないようにしたいものですね。鈴木先生いわく「決まりはない」とのことでしたので、保険関係に詳しい医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
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診療科目 | 美容外科、美容皮膚科、皮膚科、形成外科 |