「肋骨骨折」とは?症状・原因・治療法についても解説!
更新日:2023/03/27


監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
肋骨骨折とは
肋骨骨折とは、どのような病気ですか?
肋骨は左右12対の骨で構成されており、脊椎から両側に湾曲して内臓を取り囲むように形成されています。その中に存在する心臓や肺だけでなく、腹腔内の肝臓、脾臓、腎臓の一部を保護していますが、11、12番目の肋骨の前方は胸骨には付いていません。
肋骨骨折とは、心臓や肺などの臓器を保護している肋骨の骨折を指し、交通事故や高所からの落下、転倒、スポーツでの接触事故などで肋骨に外力が加わることが原因です。
骨折により痛みや皮下出血が発生し、腫れも見られます。胸部や腹部の臓器にも損傷を受け、場合によっては重篤な症状を引き起こすこともあるのです。
肋骨骨折が複数に及ぶと、胸郭内にある肺などの損傷のために肺の表面が破れ、空気が肺から外側に漏れる気胸や、肺やその血管に損傷が起こります。胸腔内に血液が溜まる血胸などは命に係わりますので、早急な外科治療が必要です。
また、骨粗鬆症の高齢者は軽い転倒や身体を捻ったり、咳を繰り返したりすることで肋骨骨折を起こす場合があります。
治療には鎮痛剤を投与して痛みを緩和します。バストバンドにより肋骨を固定しますが、臓器損傷が見られるなど症状が重篤な場合には、外科的な治療も行います。
肋骨骨折の症状
肋骨骨折の症状はどのようなものですか?
肋骨骨折の症状は、骨折部位の痛みや出血、皮下出血、局所の腫れなどが見られ、局所の痛みは、呼吸や身体の捻じれ動作に連動して増悪します。
肋骨骨折の痛みは数週間続き、呼吸をすると痛むため患者の呼吸が浅くなります。その結果、肺の一部の虚脱を起こす無気肺や肺炎などの合併症を起こす場合があります。
特に高齢者、複数の肋骨骨折がある人では、合併症を起こす可能性が高くなるため注意が必要です。
肋骨は、心臓、肺、肝臓、脾臓などの臓器を保護しているため、肋骨骨折によってこれらの臓器が損傷することがあります。すると、損傷を受けた臓器に起因した症状や臓器からの出血による血圧低下などに繋がり、重篤な症状が現れることがあります。
また、肋骨が複数箇所にわたって骨折すると、呼吸への影響が大きくなります。
具体的な症状は、骨折部位に生じる痛み、圧痛、皮下出血、腫脹や骨折部位の圧迫時に軋轢音(骨がきしむ音)の発生、呼吸やくしゃみ、咳に伴う痛み、息苦しさや呼吸のしずらさ、体を反る、捻る、手を挙げるなどの動作に伴う痛みなどが生じます。
フレイルチェストは、連続する肋骨が2か所以上折れている時に発生する場合があります。胸壁の一部が残りの部分から分離し、呼吸によって分離した部分が残りの部分とは反対方向に動くことが原因です。
フレイルチェストが起こると呼吸が一層困難になり、呼吸に疲労を伴います。フレイルチェストを起こす程の打撲は、通常胸膜の下にある肺の組織に損傷を与えることもあるのです。
肋骨骨折の原因
肋骨骨折の原因はどのようなものですか?
肋骨骨折は、肋骨に軽度~強度の外力が加わることで起こります
強度の外力
強度の外力とはどのようなものですか?
強度の外力とは、例えば交通事故でシートベルトやハンドルによって胸を強打した、転倒や高所からの転落して胸を強打した、ラグビーや柔道のように激しいコンタクトスポーツ中に胸を強打した時などに肋骨に掛かる力のことです。
軽度の外力
軽度の外力とはどのようなものですか?
軽度の外力とは、気管支炎や肺炎などで繰り返される咳、子どもが突然抱き付いてくる、胸を机の角にぶつけるといった際に肋骨に掛かる力のことです。
さほど強くないこれらの外力によって、肋骨骨折が生じる場合があります。
肋骨骨折の検査・診断
肋骨骨折の検査と診断はどのようにしますか?
肋骨骨折が疑われた場合、医師による問診、触診を行い、痛みの強い部分や症状の程度を確認し、レントゲン撮影により骨折の有無を確認します。
また、気胸(肺の損傷)や肺を包んでいる胸膜の損傷も、レントゲン撮影により確認が可能です。
しかし、肋骨の前方内側部分は軟骨のため、レントゲン撮影では骨折を確認することが困難です。また肺の影や肋骨同士の重なりがある場合など、レントゲン撮影により骨折が判明しにくい場合があります。
肋骨骨折の有無に関わらず胸部損傷の治療法は同じですので、必ずしもレントゲン撮影により肋骨骨折を確認する必要はありません。肺の組織の損傷や虚脱など、肋骨の骨折に伴う重篤な合併症を見つけるためにレントゲン撮影を行いますが、全ての肋骨骨折が写るとは限らないのです。
内臓の損傷が疑われる場合には、血液検査、超音波検査、CT検査、心電図などの検査も実施します。
肋骨骨折の治療
肋骨骨折の治療はどのようなものですか?
骨折した肋骨の本数、臓器の損傷の有無などによって治療方法が違います。
軽度の骨折では、痛みに対してアセトアミノフェンやNSAIDsなどの一般鎮痛薬の投与と湿布を処方し経過観察をします。
また、入院患者で激しい痛みがある場合は、折れた骨折に繋がる神経を麻痺させる処置や、脊髄の周辺に硬膜外麻酔を注射し治療します。
疼痛が強い場合に、バストバンドやトラコバンドという固定帯により圧迫固定処置を追加します。ただ、固定処置は呼吸を抑制し、無気肺や肺炎を起こすことがあるため、極力回避します。
肋骨骨折患者では、肺胞を開いた状態に保ち肺炎を予防するため、起きている時間に約1時間に1回、咳や深呼吸をさせる必要があります。
これらの処置により、多くの場合は数週間で軽快が見られるでしょう。
重篤な骨折や臓器損傷がある場合は、外科的な治療を考慮します。
また、正常な呼吸ができなくなるフルレイチェストの患者は、人口呼吸器により呼吸補助を行う必要があり、一部の患者では肺炎や入院の長期化、死亡など合併症のリスクを減らすために手術を行います。
肋骨骨折が疑われる場合の応急処置は、呼吸運動による胸痛を抑えるため、患部に厚手のタオルなどを当て軽く圧迫することで痛みを軽減することが可能です。肋骨骨折では、腹腔内の損傷を合併している場合があるため、応急処置をした後、早期に医師の診察を受けるようにしましょう。
肋骨骨折治療中の生活で注意すべき点として、急性期(肋骨骨折直後)は入浴により身体を温めることで炎症が強く出るため、身体を拭いたり、シャワーで汗を流す程度にしたりします。
入浴は急性期を過ぎ症状が落ち着いてからにすることで、血行を改善し回復を促すことに繋がります。また、日常生活では安静を基本とし、身体を反る、捻るなど痛みが出る動作を控えることが大切です。
症状の程度をみて、痛みが無い範囲で身体を動かすことや、栄養バランスの取れた食生活と十分な睡眠が回復に役立ちます。

