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ノロウイルスはなぜ流行を繰り返すのか? 「遺伝子変異の実態」が明らかに

 公開日:2026/04/10
ノロウイルスはなぜ流行を繰り返すのか? 「遺伝子変異の実態」が明らかに

冬場に流行を繰り返すノロウイルスに対して、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。国立感染症研究所の研究員らは2026年3月28日、ノロウイルスの遺伝子型の一種である「GII.17」の変異の傾向や感染拡大のしくみを明らかにする研究成果を発表しました。この内容について中路先生に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

編集部

国立感染症研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助先生中路先生

本研究ではノロウイルスの遺伝子型の一種「GII.17」が、長い年月の中でどのように変化し、広がってきたのかを調査しています。その結果、「GII.17」には大きく4つの系統(クレード)があり、最近広がっている系統は比較的新しく増えてきた可能性が示されました。特にウイルス表面の「P2」という部分は変異が集中しやすく、他の部分より活発に変化してきたと考えられます。一方で、ウイルスの基本的な構造は大きく変わっておらず、保たれている部分もありました。
また、最近優勢になっている系統は2016〜2017年ごろに分岐したとみられ、2013年以降は全体の広がりも大きくなっています。こうした結果から、「GII.17」は表面の限られた部分を変化させながら広がり、最近の流行に関わっている可能性があると考えられます。

研究テーマになった「ノロウイルス」とは?

編集部

今回の研究テーマに関連するノロウイルスについて教えてください。

中路 幸之助先生中路先生

ノロウイルスによる感染性胃腸炎は一年を通じて発生しますが、特に冬季に流行しやすいという特徴があります。感染経路はほとんどが経口感染で、患者のふん便や吐しゃ物、汚染された食品や水などを介して広がります。感染するとおう吐・下痢・腹痛などの症状が表れ、健康な人は軽症で回復することが多い一方、子どもやお年寄りでは重症化するケースもあります。

現在ノロウイルスに対するワクチンはなく、治療も対症療法に限られているため、予防がとても大切です。食事前やトイレの後には必ず手を洗いましょう。

研究内容への見解は?

編集部

国立感染症研究所の研究員らが発表した内容への見解を教えてください。

中路 幸之助先生中路先生

実際の診療現場においても、「数年前に話題となったウイルスの型が、形を少し変えてまた出てくる」ことは珍しくありません。今回の研究結果は、ノロウイルスについても同様の変異サイクルが起こり得ることを示しており、流行が落ち着いた後も監視や検出体制を継続することの重要性を改めて教えてくれていると感じます。
臨床的立場から見ると、本研究結果を受けて診断や治療の基本がすぐに変わるわけではありません。ただし、「どの型が流行しているのか」「これまでとどう違うのか」といった情報は、高齢者施設や医療機関での集団発生対策を考えるうえで大きなヒントになると考えます。
今後、「GII.17」を含めたノロウイルス全体の進化が明らかになることで、流行の“前兆”を早く捉えて重症化しやすい集団を守れる可能性があり、臨床現場としても注目すべき研究だと考えています。

編集部まとめ

今回の研究により、ノロウイルス「GII.17」が表面の一部を変化させながら広がってきたことが明らかになりました。ウイルスは変化を続けていますが、予防の基本は変わりません。食事前やトイレの後の手洗い、食品の十分な加熱を日頃から意識して、感染予防に取り組みましょう。

この記事の監修医師