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流行拡大中の「リンゴ病」 感染者は過去最多… 妊婦が感染すると“流産”リスクにも

 公開日:2025/07/31

日本の国立健康危機管理研究機構は、2025年に入ってから国内で伝染性紅斑、通称・リンゴ病の報告数が急増していることを発表しました。厚生労働省も、伝染性紅斑に関する注意喚起をおこなっています。特に、妊娠中または妊娠の可能性がある女性に向けて、同省の公式ウェブサイトなどを通じて情報を発信しています。この内容について吉野医師にお話を伺いました。

吉野 友祐

監修医師
吉野 友祐(医師)

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広島大学医学部卒業。現在は帝京大学医学部附属病院感染症内科所属。専門は内科・感染症。日本感染症学会感染症専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医。帝京大学医学部微生物学講座教授。

国立健康危機管理研究機構が発表した内容とは?

国立健康危機管理研究機構が発表した内容を教えてください。

吉野 友祐 医師吉野先生

今回紹介するのは、国立健康危機管理研究機構が発表した「IDWR 2025年第26号<注目すべき感染症>」についての内容です。国立健康危機管理研究機構は、2025年に入ってから伝染性紅斑の報告数が大幅に増加していると発表しました。 特に第20週には定点あたりの報告数が2.05(4834人)となり、1999年の現行体制導入以降で最高値を記録しました。第25週にはさらに上昇し、2.53(5943人)と高い水準が続いています。報告数が多いのは山形県(7.62)、群馬県(7.32)、栃木県(7.26)など関東・東北地方が中心で、関東地方での流行が先行して全国へ拡大していると考えられます。一方、岡山県(4.57)や香川県(5.67)など西日本では比較的少ない報告数にとどまっています。また、2025年第15週から定点医療機関数が約3000から約2000に減少したこともあり、報告数の推移を評価する際には注意が必要です。 こうした中、厚生労働省は妊娠中または妊娠の可能性がある方に向けて注意喚起をおこなっています。これまでに伝染性紅斑に感染したことのない女性が妊娠中に感染すると、胎児水腫や流産といった重篤な合併症につながる可能性があるため、注意が必要です。

伝染性紅斑(リンゴ病)の初期症状や見分け方とは?

伝染性紅斑(リンゴ病)の初期症状や見分け方とは? また、妊婦の流産との関係も教えてください。

吉野 友祐 医師吉野先生

伝染性紅斑、いわゆるリンゴ病は「ヒトパルボウイルスB19」に感染することで発症し、発熱や倦怠感などの風邪に似た症状の後に、両頬が赤くなる紅斑や四肢のレース状の発疹が表れます。小児では典型的な発疹が多くみられる一方で、成人(妊婦を含む)では25%にとどまり、風邪様症状のみ、関節痛のみ、あるいは無症候で経過する例も少なくありません。 妊娠中に初めて伝染性紅斑を発症すると、胎児にも感染が及び、胎児水腫や流産・死産の原因となる可能性があります。特に妊娠20週まで(10〜20週)の感染では重篤化しやすいとされています。感染が疑われる場合には、血液検査や胎児の超音波検査で慎重に経過を観察することが大切です。流行期にはマスクの着用や手洗いを徹底し、体調に変化を感じた場合には早めに医療機関を受診しましょう。

国立健康危機管理研究機構が発表した内容への受け止めは?

国立健康危機管理研究機構が発表した内容への受け止めを教えてください。

吉野 友祐 医師吉野先生

国立健康危機管理研究機構の速報は、今年のリンゴ病が定点あたりの報告数が過去最多を記録し、流行が拡大していると伝えています。成人では典型的な皮疹が出る割合は低く、発熱・関節痛のみ、または無症候で終わる例が多いため、気づかぬまま家庭や職場に広げる恐れがあります。一方、妊婦が妊娠20週頃までに初感染すると胎児水腫や流産の危険が高まるため、本人と周囲が一層の注意を払う必要があります。流行期は「自分も無症候キャリアかもしれない」と意識し、こまめな手洗いと咳エチケットを徹底しましょう。発熱や倦怠感、家族内で発疹が出た際は早めに医療機関へ。特に妊婦で感染が疑われる場合は血清検査と超音波をおこない、医師の指示に従って経過観察することが最善策です。

編集部まとめ

2025年、伝染性紅斑の報告数が過去最多となり、全国的に流行が広がっています。特に妊婦が初感染した場合、流産のリスクがあることから注意が必要です。周囲で流行しているときは、マスクの着用や手洗いを徹底し、体調に不安を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。日頃から予防意識を持つことが、自分と家族を守る第一歩です。

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