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「りんご病の初期症状」はご存知ですか?発症しやすい年齢層も解説!【医師監修】

 公開日:2025/06/14
「りんご病の初期症状」はご存知ですか?発症しやすい年齢層も解説!【医師監修】

りんご病とは伝染性紅斑のことで、ヒトパルボウイルスB19によって引き起こされる感染症です。子どもが感染するイメージを持たれている方も少なくないのではないでしょうか。実は大人も注意すべき点があるため、参考になれば幸いです。

本記事ではりんご病(伝染性紅斑)の初期症状を中心に、原因や治療方法について詳しく解説しています。また予防対策も紹介しています。特に小さなお子さんのいるご家庭の方の参考になれば幸いです。

病気について正しく知り、対策につなげましょう。

菅原 大輔

監修医師
菅原 大輔(医師)

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2007年群馬大学医学部卒業 。 自治医科大学附属さいたま医療センター小児科勤務 。 専門は小児科全般、内分泌代謝、糖尿病、アレルギー。日本小児科学会専門医・指導医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医、臨床研修指導医。

りんご病(伝染性紅斑)の原因や感染経路

心配する母親

りんご病の原因となるウイルスを教えてください。

りんご病(伝染性紅斑)はヒトパルボウイルスB19によって引き起こされます。ヒトパルボウイルスB19には赤血球に感染する特徴があります。そのためもともと遺伝性球状赤血球症やサラセミアといった溶血性疾患を抱えている方は注意が必要です。重症の貧血発作を起こすことがあります。また1度感染すると、免疫が得られます。一般的には1度感染した人が再度感染することはありません。

りんご病の感染経路を教えてください。

りんご病の感染経路は飛沫感染と接触感染に大別できます。飛沫感染とはすでに感染している患者さんの咳から出る飛沫を吸い込むことによって感染することを指します。接触感染は感染している患者さんとの接触によって感染する点が特徴です。具体的にはウイルスが付着した手で口や鼻に触れることで感染します。また胎児の感染にも注意が必要です。胎児の場合は妊娠中の女性の感染を原因とする経胎盤感染で、妊娠中の女性が感染したうち約20%で感染につながります。

りんご病の潜伏期間はどのくらいですか?

りんご病は約10~20日の潜伏期間があるとされています。潜伏期間中に微熱や頭痛、倦怠感といった初期症状が現れることもあります。なお潜伏期間や初期症状を抱えているときが、周囲の人への感染力のあるタイミングです。網目状やレース状の発疹が身体や手足に出ている、りんご病特有の症状が現れている時期には、ほとんど感染力はありません。

りんご病にかかりやすい年齢層を教えてください。

りんご病は、子どもを中心に流行しやすいでしょう。具体的な年齢を見ると、5~9歳のお子さんの罹患が特に多くみられます。次いで多いのが0~4歳であり、幼いお子さんでの罹患が懸念される病気です。感染者数は1月から7月上旬にかけて増加し、9月に少なくなるといった季節性があります。ただし大人も感染しないわけではありません。また大人が感染した場合には、関節炎や頭痛をはじめとするさまざまな症状があらわれます。特に妊娠中の女性が感染した場合には胎児にも感染し、重篤な症状をもたらすだけでなく、流産のリスクとなる可能性があるため注意が必要です。

りんご病(伝染性紅斑)の初期症状

子供の熱を心配する

りんご病にかかるとどのような初期症状が出ますか?

りんご病に感染すると約10~20日の潜伏期間の後、微熱・頭痛・倦怠感といった風邪に近い症状がみられます。その後、頬に蝶の羽のようにも見える、境界が鮮明な赤い発疹が現れます。紅斑と呼ばれる症状です。ただし大人の感染の場合には、発疹が子どもとは異なるケースも少なくありません。頬に典型的な紅斑がみられることはむしろ少ないでしょう。四肢だけでなく体幹にも発疹が現れたり、手足が腫れたりすることもあります。

初期症状に続いて出てくる症状を教えてください。

りんご病に感染すると初期症状に続いて、身体や手足に網目状やレース状の発疹が広がります。これらの発疹は1週間前後で消失することがほとんどです。ただし一部の患者さんでは、発疹が長引くケースや、1度消えた発疹が短期間のうちに再び出現するケースもあるでしょう。また成人でりんご病に感染した場合では、関節痛を伴う関節炎や頭痛をはじめとする合併症が出ることもあります。発熱や全身の倦怠感を伴う症状も子どもと比較すると出現の可能性が高いでしょう。関節炎が重症化すると、歩行困難になることもあるため注意が必要です。ただし多くは合併症を起こすことなく自然に回復するため、症状に合わせた対応がポイントとなるでしょう。

りんご病(伝染性紅斑)の治療方法や予防対策

医療者に相談する

りんご病が疑われる場合は医療機関を受診した方がよいですか?

りんご病には特別な治療法はありません。さらに多くの患者さんは自然に回復します。そのため軽微な症状の場合には、治療を行うことなく経過を観察するケースも少なくないでしょう。ただし妊娠中の女性が感染した場合には胎児が胎児水腫という病気になる可能性があります。特にリスクのある妊娠中の女性は、かかりつけの医療機関で妊婦健診などをきちんと受け、胎児の様子を観察していくことが重要です。また大人が感染した場合で急な関節症状とともに顔面や四肢などに発疹がみられる場合、リンゴ病の可能性も考えられます。このようなケースでは、まずは皮膚科を受診することをおすすめします。対症療法で治療を行っていく必要があるでしょう。

医療機関ではどのような検査を行いますか?

りんご病は通常、発疹などの症状から診断されるケースが多いです。ただし大人が感染しているケースでは、エリテマトーデスや関節リウマチなどの膠原病と症状が似ていることもあります。このような場合には、検査で診断を行うことが必要です。検査で診断する場合には、採血による抗体検査や、病源体遺伝子の検出を行います。また妊娠中の女性で感染が疑われる場合には、併せて超音波検査で胎児の状態を確認します。

医療機関での治療方法を教えてください。

医療機関を受診した場合でも、りんご病の根本的な治療方法はありません。症状に合わせて緩和する対症療法が中心です。免疫の働きが低下して身体を守る力が弱まっていることで感染が持続しているケースや、溶血性貧血を発症している患者さんなどでは、γ-グロブリン製剤を投与することもあります。大人が感染した場合で発熱や倦怠感、関節痛といった症状が強い場合には、消炎鎮痛剤を投与するケースもあります。また、痒みの症状が強い場合は抗ヒスタミンなどを処方することがありますいずれの場合も症状に対する対症療法を行うことにはなりますが、まずは皮膚科を受診してみるとよいでしょう。

りんご病の予防対策について教えてください。

りんご病に対するワクチンはありません。またアルコール消毒も効果が乏しいため、有効な対策とはいえないでしょう。これらの特徴からりんご病を予防するためには、日常の行動を通じて感染経路を絶つことが重要です。具体的にはこまめな手洗いが有効でしょう。石けんと流水でしっかりと手洗いを行うことで予防につなげられます。また咳やくしゃみをするときに口と鼻をハンカチで覆う咳エチケットも、飛沫感染の予防には有効です。妊娠中の女性の場合には、感染が胎児に影響を及ぼす可能性が否めません。そのため流行時期に風邪の症状がある人に近付くことを避けることをおすすめします。また妊娠中の女性でお子さんがいる場合には、保育園や学校で流行が見られるときの送り迎えを控えるとよいでしょう。

編集部まとめ

診察する医師
この記事では、りんご病の初期症状や原因、治療方法と予防方法について紹介しました。

りんご病には約10~20日の潜伏期間を経て風邪に近い初期症状、頬への紅斑から身体や手足に網目状やレース状の発疹へと症状が移行する特徴があります。りんご病には直接の治療法がないものの、感染の割合の高い小児では自然と治癒していくことも少なくありません。

一方で妊娠中の女性が罹患した場合には、胎児にも感染し、ひどい場合には流産のリスクもあるため注意が必要です。また大人が感染した場合にも、発熱や倦怠感、関節痛の症状がひどくなる可能性があります。必要に応じて皮膚科への受診を検討してみるとよいでしょう。

りんご病にはワクチンがないため、咳エチケットや日常でのこまめな手洗いで感染を予防しましょう。また妊娠中の女性などリスクのある方は、流行している時期に風邪に近い症状を抱えている人との接触を避けるといった工夫も必要です。

実際の症状や治療方法、予防方法をしっかりと確認し、あなたの身近にあるりんご病について理解を深めてもらえれば幸いです。

この記事の監修医師