長生きの秘訣は「納豆」にアリ! 習慣的な摂取で死亡リスク低下 1日の適量・食べ過ぎリスクとは

関西医科大学の研究員らは、 納豆の摂取量と全死亡率の関連性について、約15年間にわたり前向きコホート調査をおこないました。その結果、納豆を日常的かつ継続的に摂取している人では、そうでない人と比べて全死亡リスクが低下していることが明らかになりました。この内容について五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
研究グループが発表した内容とは?
関西医科大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
関西医科大学の研究員らは、納豆の摂取量と全死亡率との関連性について、約15年間にわたり前向きコホート調査を実施しました。この前向きコホート研究には、65歳以上の男性2174名が参加し、そのうち2012名がベースライン調査を完了しました。 研究では、参加者の納豆摂取状況を質問票により把握し、その後5年後と10年後に追跡調査をおこないました。アウトカムとして全死亡率を評価し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出しました。最終的な解析対象となったのは1548名で、平均追跡期間12.0年(合計1万8553.3人/年)において430名の死亡が確認されました。 その結果、納豆を「全く摂取していない群」と比べて、「週に数パック摂取していた群」のハザード比は0.603(95%信頼区間0.441~0.825)、「1日に1パック以上摂取していた群」ではハザード比0.786(95%信頼区間0.539~1.145)と算出されました。さらに、「ベースラインと初回追跡調査の両方で納豆を摂取していない群」と比較すると、「両時点で週に数パック、または1日に1パック摂取していた群」のハザード比は0.700(95%信頼区間0.507~0.966)でした。 これらの研究結果から、高齢男性において納豆を継続的かつ多く摂取することが、全死亡リスクの低下と関連していることが示唆されました。
納豆の健康効果とは?
納豆の健康効果とは何ですか? 1日の適量・食べ過ぎリスクはありますか?
納豆は、日本の伝統的な発酵食品であり、多くの健康効果が科学的にも報告されています。主に含まれる栄養素には、腸内環境を整える食物繊維や、骨の健康を保つビタミンK2、カルシウム、タンパク質、そして血栓予防効果が期待されるナットウキナーゼなどがあります。ビタミンK2は骨形成を促進し、骨粗しょう症の予防に寄与することが知られています。また、ナットウキナーゼは血液の線溶系に作用し、脳梗塞や心筋梗塞の予防にも関連があるとされます。 納豆の適量は1日1パック(約50g)を目安とするのが望ましく、過剰摂取すると腸にガスがたまる原因や、特にイソフラボンの過剰摂取によるホルモンバランスの乱れなどが懸念されます。また、抗凝固薬ワルファリンを服用している患者は、納豆のビタミンKが薬効を阻害する可能性があるため、避けるべきです。 納豆摂取のタイミングは、腸の活動が高まる夕食時が推奨されます。日常的に納豆を適切に摂取することは、腸内フローラ改善、骨・血管・代謝系の健康維持に役立ち、結果として全身の健康増進につながると考えます。
研究内容への受け止めは?
関西医科大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
今回の研究結果は、日本人にとって身近な納豆が健康長寿に寄与する可能性を、科学的に支持する貴重なエビデンスです。特に高齢者においては、疾病予防や健康維持に日々の食習慣が大きく影響するため、このようなコホート研究の意義は非常に大きいと感じます。 納豆の摂取が全死亡リスクを有意に低下させることが示唆された点は、栄養医学や予防医学の観点からも注目に値します。ナットウキナーゼやビタミンK2などの機能性成分に加え、発酵食品としての腸内環境への良好な作用が、全身の炎症レベルや代謝にプラスに働くと考えられます。一方で、因果関係の証明まではされていないため、今後はほかの食品や生活習慣因子との相互作用を含めた研究が期待されます。医師としても、患者さんに納豆などの伝統的な発酵食品を取り入れることを推奨しやすくなる好例と感じます。
編集部まとめ
関西医科大学らの研究によって、納豆を日常的に摂取している高齢男性は、そうでない人と比べて死亡リスクが低い傾向にあることが示されました。1日1パックを目安に、夕食などのタイミングで無理なく続けていくのがおすすめです。日々の食生活に納豆を取り入れて、健やかな体づくりを目指しましょう。




