コロナワクチンは“同じ腕に2回接種”が有効 「ワクチンの効果と接種部位の関係」が新たに判明

ワクチンの効果は、「どこに打つか」も関係しているかもしれません。オーストラリアのガーバン医学研究所の研究員、「ワクチンの打つ場所によって、体の中で働く免疫の反応に違いが出る」ということを発見しました。今回は、この研究内容について本多医師に解説していただきました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
研究グループが発表した内容とは?
オーストラリアのガーバン医学研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。
オーストラリアの研究チームは、ワクチンを打った場所と免疫の働きの関係を調べる研究を実施しました。この研究では、最初にワクチンを接種した場所の近くにあるリンパ節に「記憶B細胞(過去のワクチン情報を覚えている細胞)」が残っており、再び免疫の反応を強く起こす仕組みを明らかにしました。
マウスモデルを用いた実験では、最初に接種した側のリンパ節(排出リンパ節)にいた記憶B細胞の方が、より強い抗体反応を起こす能力があったとされています。この背景には「SSM(被膜下洞マクロファージ)」という細胞の働きが関係していると考えられています。ヒトにおける検証でも、ファイザー社の新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2)を最初と同じ腕に再接種した人の方が、反対の腕に接種した人よりも、抗体の反応が速く広がりも大きかったことが確認されました。
この結果は、免疫記憶の再活性化において、接種部位とその排出リンパ節環境が重要な役割を持つことを示唆しています。ただし、ヒトでの検証は限られた条件下でおこなわれているため、接種部位の違いがほかのワクチンやウイルスにも同様に影響するかどうかは今後の検証が必要です。
ワクチン接種に関する研究内容への受け止めは?
オーストラリアのガーバン医学研究所の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
今回の研究は、免疫学的な「記憶」が空間的な要素(接種部位)に依存するという重要な知見を示しており、免疫の局所環境(特にマクロファージの存在)に注目した先進的な内容と言えるでしょう。特に臨床現場で多く使われるワクチン(インフルエンザ、新型コロナウイルス、帯状疱疹など)のブースター接種戦略を考える際に、接種部位が免疫効果に影響する可能性があるということは見逃せないポイントです。
今後どのように活用できそうか?
ワクチンの接種部位に関する研究結果は、今後どのようなことに活用できるものでしょうか?
ヒトでも同様の現象がどの程度再現されるかの大規模臨床研究が必要ですが、ブースター接種時の接種部位の確認をおこない、可能であれば初回接種と同じ部位を選ぶよう患者指導・記録することが有効かもしれません。その際には母子手帳や電子カルテ、記録表に「接種部位」を明記する習慣をつけることで、より効果的なワクチン管理が可能になりそうです。免疫が弱い高齢者や基礎疾患患者への接種戦略の最適化につながる可能性もあるため、今後の新たな報告に期待したいところです。
編集部まとめ
今回の研究では、ワクチンの接種部位が免疫記憶の質や強さに影響を与える可能性が示されました。特に初回と同じ部位への追加接種により、より強力で広範な抗体反応が得られる可能性が示唆され、今後のワクチン接種戦略や設計に新たな視点をもたらす研究結果となりました。






