高齢者の新型コロナワクチン接種「強く推奨」日本感染症学会 冬の流行に備えて検討を
日本感染症学会などの3学会は、10月から始まった新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、重症化リスクが高い高齢者に対して「接種を強く推奨する」という見解を公表しました。この内容について中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
日本感染症学会などの3学会の見解とは?
日本感染症学会などの3学会の見解を教えてください。
中路先生
日本感染症学会など3学会は、2024年10月21日に「2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解」を発表しました。
見解の冒頭では「新型コロナウイルスの⾼齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であり、今冬の流⾏に備えて10⽉から始まった新型コロナウイルスワクチンの定期接種を強く推奨します」という内容を示しました。こうした主張の根拠として、「新型コロナウイルスワクチンが、これまでに高い発症・重症化予防効果を示していること」「変異株が出現するため、新型コロナウイルスの流行はこれからも起こること」「高齢者の新型コロナウイルスの重症化・死亡リスクは、インフルエンザ以上であること」「流行株に対応した新たな新型コロナウイルスワクチンの追加接種が必要であること」の4点を挙げています。
見解では、今シーズンの定期接種で使われるワクチンについても紹介していました。そして、最後は「新型コロナウイルスの変異のスピードは速く、免疫回避力を高めた株が繰り返し出現していますが、今のところオミクロン株の派生株にとどまっており、全く新しい系統の変異株が出現する徴候はみられていません。毎シーズン変異を繰り返すインフルエンザウイルスに対して、毎年新しいインフルエンザワクチンが定期接種として高齢者に使用されているように、新型コロナウイルスに対しても新たな流行株に対応したワクチンを少なくとも年に1回は接種することが必要です。これらのワクチンは一過性の副反応がありますが、臨床試験ではワクチンと関連した重篤な健康被害はみられず、安全性が確認されています。ワクチンの利益とリスクの大きさを科学的根拠に基づいて正しく比較し、ご自身が信頼できる医療従事者とよく相談して接種するかどうかを判断することが望まれます」と締めくくられていました。
今シーズンの新型コロナウイルスワクチンの定期接種の内容は?
2024年10月1日から始まった、新型コロナウイルスワクチンの定期接種について教えてください。
中路先生
新型コロナウイルスのワクチンの定期接種について、2024年3月までは無料で接種することができました。しかし、今シーズンの接種については、インフルエンザワクチンと同じように原則、費用の一部を自己負担する形で実施されています。
定期接種の対象となるのは、65歳以上の高齢者と60~64歳までの重症化リスクの高い人です。これらの対象者は、2025年3月末までに1回接種します。接種費用は約1万5000円となりますが、国が1回あたり8300円を助成することで、自己負担が約7000円に収まるよう配慮されています。自治体によっては、独自の補助をおこなうところもあるので、接種を検討する場合はお住いの自治体のホームページなどを確認するといいでしょう。
定期接種に使われる新型コロナワクチンは、ファイザー、モデルナ、第一三共のmRNAワクチン、ノババックスが開発して武田薬品工業が販売する組替えタンパク質ワクチン、Meiji Seikaファルマのレプリコンワクチンの5種類です。
今回のニュースへの受け止めは?
日本感染症学会などの3学会の見解についての受け止めを教えてください。
中路先生
新型コロナウイルスの感染状況について、現在は収束しつつありますが、冬には再び大きな流行が予測されています。高齢者の重症化リスクはインフルエンザ以上であることに加え、日本では新型コロナウイルスに未感染の高齢者が多いとされているため、これまでと同様にワクチンによる免疫獲得が重要であると考えます。それとともに、マスクの着用、手洗い、換気など基本的な感染対策も必要です。
編集部まとめ
日本感染症学会などの3学会は、10月から始まった新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、重症化リスクが高い高齢者に対して「接種を強く推奨する」という見解を公表しました。学会の見解でも述べられていますが、ワクチン接種については、利益とリスクの大きさを科学的根拠に基づいて比較して、信頼できる医療従事者と相談して判断することが望まれています。