「膵臓がん」は果物で発症リスク低下、研究で示唆 なりやすい人の特徴も医師が解説!

国立がん研究センター社会と健康研究センターの研究員らは、果物および野菜の摂取と膵臓がんリスクの関連性について調査しました。研究成果は、医学雑誌「International Journal of Cancer」に発表されました。この内容について中路医師に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
研究グループが発表した内容とは?
国立がん研究センター社会と健康研究センターの研究員らが発表した膵臓がんに関する研究内容を教えてください。
中路先生
今回紹介するのは、国立がん研究センター社会と健康研究センターがおこなった、果物および野菜の摂取と膵臓がんリスクの関連についての研究報告です。この研究は、日本国内で実施された大規模な前向きコホート研究です。
研究対象となったのは、1995~1998年にかけて健康調査に回答した9万185人の男女であり、約17年にわたる追跡期間中に577人が膵臓がんを発症しました。解析の結果、果物の摂取量が多い人ほど膵臓がんの発症リスクは低い傾向がみられ、特に非喫煙者ではその傾向が顕著でした。一方で、野菜の摂取量が多い場合には、喫煙経験者において膵臓がんリスクとの正の相関が認められました。
この研究結果については、喫煙が野菜摂取の効果に影響を与えている可能性が指摘されています。果物や野菜の摂取は一般的に健康に良いとされる一方、本研究では野菜と膵臓がんリスクとの間に予想外の関連がみられた点は懸念される部分でもあります。今後は、喫煙歴やほかの生活習慣要因をより詳細に考慮した上で、さらなる研究が必要であると考えられます。
研究テーマになった膵臓がんとは?
膵臓がんになると、どこに痛みが出ますか? 症状やなりやすい人の特徴も教えてください。
中路先生
膵臓がんになると、主に上腹部や背中に痛みが表れます。上腹部の痛みは食事に関係なく続くのが特徴で、背中にかけて鈍い痛みが広がることもあります。これは膵臓が体の奥にあり、がんが神経に浸潤しやすいためです。背中の痛みは早期発見の手がかりになる場合もあるため、原因不明の痛みが続く場合は注意が必要です。また、膵臓がんは糖尿病の急な悪化や体重減少、黄疸などを伴うこともあります。
膵臓がんになりやすい人の特徴としては、近親者に膵臓がんの患者がいる場合、発症リスクが2〜5倍に高まるとされています。これは遺伝的な要因が関与している可能性もあり、特定の遺伝子の変異によって細胞の修復能力が低下し、がんが発生しやすくなると考えられています。心当たりのある人は、早めの受診が大切です。
研究グループが発表した膵臓がんに関する研究内容への受け止めは?
国立がん研究センター社会と健康研究センターの研究員らが発表した研究内容への受け止めを教えてください。
中路先生
今回の国立がん研究センターの調査では、果物摂取が多いグループほど膵臓がんを罹患するリスクは低いことが示唆されました。この効果は特に非喫煙者で顕著でした。そのほかのレモンやオレンジなどの柑橘類に限っても、同様の効果が報告されています。これは、果物に含まれるビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質が細胞の損傷を防ぐことで、発がんのリスクを抑えるためと考えられています。また、コーヒーや魚介類に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂肪酸も、膵臓がんを予防する効果があると指摘されています。ただし、膵臓がんの発症には遺伝的因子や未解明の因子も関与しているため、この研究分野においては、さらなるエビデンスの蓄積が必要と考えられます。
まとめ
膵臓がんは早期発見が難しい病気ですが、日頃の食生活や体のサインに注意することで予防や早期対応につなげることができます。食生活を見直し、喫煙や生活習慣を見直すことが大切です。背中やお腹の痛み、急な体重減少など気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。