「膵臓がん」の早期発見に有用な検査をご存じですか? 『超音波内視鏡』を医師が解説

「超音波検査」も「内視鏡検査」も、聞いたことがある方が多いと思いますが、「超音波内視鏡(EUS)」はどうでしょうか。内視鏡検査と超音波装置の両方の特徴をもち、特に膵臓や胆道系の疾患の早期診断に有用なのだそうです。そこで、超音波内視鏡検査について「かわぐち消化器内科」の川口義明先生に解説してもらいました。

監修医師:
川口 義明(かわぐち消化器内科)
目次 -INDEX-
内視鏡検査って? 検査だけじゃなく治療もできるってホント?

編集部
受けたことがある人も多いと思いますが、あらためて内視鏡検査とはどんな検査ですか?
川口先生
内視鏡検査は、先端にカメラとライトが付いた細い管状のスコープを挿入し、食道・胃・十二指腸、大腸などの消化管内部を直接観察する検査です。食道や胃を観察するのはいわゆる「胃カメラ」です。大腸や直腸などを観察する「大腸カメラ」もあわせて、聞いたことがあるという人も多いかもしれません。この検査では、リアルタイムで映像を確認できるため、炎症や潰瘍、腫瘍などの異常を発見しやすいのが特徴です。
編集部
内視鏡検査でどのような病気がわかりますか?
川口先生
胃カメラであれば、たとえば逆流性食道炎や胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ポリープ、胃がんなどの異常を確認できます。粘膜の状態を詳しく観察できるため、早期のがんや前がん病変を発見することにも役立ちます。異常が見つかった場合、その場で病変を切除するといった処置もできます。
編集部
検査時に処置をすることができるのですか?
川口先生
はい。必要に応じてポリープなどを切除したり、病理診断するための組織を採取したり(生検)、出血部位があれば止血したりすることもできます。ポリープの数がかなり多かったり、非常に大きかったりといった特別な場合を除けば、後日改めて処置をする必要はありません。
編集部
では、超音波検査とは何ですか?
川口先生
超音波検査は体の外から超音波を当て、臓器の状態を画像として映し出す検査です。リアルタイムで臓器の動きや血流を観察でき、X線やCTと異なり、放射線を使わないため被ばくの心配もなく、体への負担も少ないのが特徴です。ただし、胃や腸の奥にある膵臓などは、体外からの超音波ではガスや脂肪が妨げとなって見えにくい場合があります。
「超音波内視鏡検査」って? 医師が解説

編集部
「超音波内視鏡(EUS)」というのがあると聞きました。
川口先生
超音波内視鏡(EUS)は、通常の内視鏡の先端に超音波装置を搭載した検査機器です。胃カメラと同じように口から内視鏡を挿入し、消化管内部を観察した上で、消化管の壁や周囲臓器の超音波画像も同時に観察が可能です。これにより、体の表面からおこなう超音波検査では見えにくい膵臓や胆管をより詳細に評価することが可能になります。
編集部
通常の内視鏡検査とEUSの違いは何ですか?
川口先生
先述のとおり、通常の内視鏡検査は食道や胃、十二指腸などの粘膜を直接観察する検査です。一方、EUSは粘膜だけでなく、その奥にある膵臓や胆のう、胆管、リンパ節などを超音波で詳細に調べることができます。つまり一度の検査で、より多くの臓器を検査することができるのです。
編集部
EUSのメリットについて、もう少し教えてください。
川口先生
EUSは、通常の超音波検査では見えにくいところにある膵臓や胆管の病変を高精度に描出できる点が最大のメリットです。さらに、通常の内視鏡検査と同様に、必要に応じて細胞や組織を採取する生検も可能で、病変の良性・悪性の判断に役立ちます。内視鏡検査と超音波装置の「いいとこ取り」ですね。通常の胃カメラと同等に安全性の高い検査です。
超音波内視鏡検査は、どんなときに受ける? 大病院でしか受けられないの?

編集部
EUSはどんな疾患の診断に役立ちますか?
川口先生
EUSは、膵臓がんや胆道がん(胆のうがん・胆管がん)、膵のう胞、胃や食道の粘膜下腫瘍、リンパ節転移の評価などに有用です。特に、膵臓がんは早期発見が難しい病気ですが、EUSを用いることで1cm以下の、より早い段階での診断が可能になります。
編集部
では、EUSのデメリットはありますか?
川口先生
内視鏡にエコーが搭載されている分スコープが太いため、口からの挿入になることです。「鼻からよりも苦しい」というイメージを持つ人も多いと思いますが、苦痛軽減のため鎮静剤を使用するのが一般的です。またEUSは高度な技術を要するため、大病院など限られた医療機関でしか受けることができません。
編集部
EUSは大きな病院でしか受けられないのですか?
川口先生
基本的にはEUSは大病院や専門機関でおこなわれることがほとんどですが、たとえば当院のようなクリニックでも検査を受けられる医療機関もあります。EUSが可能なクリニックはまだかなり稀ですが、より身近な医療機関で膵臓や胆道の精密検査が可能になることで、早期診断のチャンスは広がっていきます。
編集部
健診などでどんな異常を指摘された場合、EUSを受けるべきですか?
川口先生
健診で膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなど)・腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の高値、膵管拡張や膵嚢胞、膵腫瘍、胆のう壁肥厚、粘膜下腫瘍などを指摘された場合は、EUSによる詳しい検査を受けることをお勧めします。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
川口先生
「膵臓がんは治らない病気」というイメージを持つ人も多いと思いますが、それは膵臓がんが非常に見つけにくく、多くの場合、発見した時点でかなり進行しているためです。早期に発見し、早期に治療すれば、多くの場合根治が可能です。健診で膵臓要精査となった方、膵臓がんのハイリスク(家族歴、糖尿病の新規・増悪の人、膵のう胞、慢性膵炎など)の人は、EUSをぜひ一度受けてみてください。
編集部まとめ
超音波内視鏡(EUS)は、通常の内視鏡検査と超音波検査を組み合わせた高度な検査法で、特に膵臓や胆道系の早期診断に優れています。健診で異常を指摘された方や、膵臓がんのリスクが気になる方は、一度EUSによる詳しい検査を受けることをお勧めします。
医院情報
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