「脳卒中」発症リスクは“1日1杯の牛乳”で低下 牛乳を飲む意外なメリットが新たに判明

岩手県北地域コホート研究グループは、日本の岩手県において行われた前向きコホート研究「岩手県北地域コホート研究」に基づいて、日本人地域住民を対象に牛乳摂取と脳卒中発症の関連性を調査しました。研究結果は、国際学術誌「Nutrients」に掲載されています。この内容について吉川医師に伺いました。

監修医師:
吉川 博昭(医師)
研究グループが発表した脳卒中に関する研究内容とは?
岩手県北地域コホート研究グループが発表した内容を教えてください。

今回紹介する研究報告は、岩手医科大学衛生学公衆衛生学講座の丹野高三特任教授らの研究グループによるもので、研究報告は国際学術誌「Nutrients」に掲載されています。
この研究は、日本人地域住民を対象に牛乳摂取と脳卒中発症の関連性を調査したもので、岩手県でおこなわれた前向きコホート研究「岩手県北地域コホート研究」に基づき、40~69歳の1万4121人を平均10.7年間追跡しました。牛乳摂取頻度に応じて参加者を4つのグループに分類し、脳卒中の発症率を比較しました。
その結果、女性では週7~12杯未満の牛乳を摂取するグループは、週2杯未満のグループと比較して虚血性脳卒中のリスクが有意に低下していました。一方、男性では有意な関連は認められませんでした。このことから、日本人女性の適度な牛乳摂取は、虚血性脳卒中の予防に寄与する可能性が示唆されました。
ただし、本研究にはいくつかの限界があります。牛乳とヨーグルトの摂取が一括で評価されたため、それぞれの影響を区別できませんでした。また、牛乳の摂取量について詳細な定量評価がおこなわれておらず、食事パターンや生活習慣による影響も完全には排除できませんでした。さらに、対象者が岩手県の健康診断受診者に限られており、全国の日本人にそのまま適用できるかは慎重に考える必要があります。今後は、より詳細な食事評価と地域差を考慮した研究が求められます。
研究テーマになった「脳卒中」とは?
今回の研究テーマに関連する脳卒中について教えてください。

脳卒中は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、または血管が破れる「脳出血」や「くも膜下出血」のことで、突然発症する病気です。主な原因は高血圧や動脈硬化、不整脈などで、高齢者に多くみられます。脳卒中は日本の主要な死因の1つであり、寝たきりの最大の原因でもあります。
脳卒中の症状としては、片側の手足の麻痺やしびれ、言葉の障害、視野の異常、激しい頭痛などが挙げられます。発症したら、すぐに救急車を呼ぶことが重要です。治療には、血栓を溶かすt-PA療法や血管内治療、手術などがあり、発症からの時間が早いほど効果が高まります。
脳卒中を予防するためには、高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理、禁煙、適度な運動、健康的な食生活が重要です。また、脳卒中後はリハビリをおこない、後遺症の軽減を目指します。迅速な対応と予防が、脳卒中の影響を最小限に抑える鍵となります。もし突然の麻痺や言語障害などの症状が表れた場合は、一刻も早く医療機関を受診しましょう。
脳卒中に関する研究内容への受け止めは?
岩手県北地域コホート研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

本研究は日本における牛乳摂取と脳卒中の関係を示唆し、特に女性において適度な牛乳摂取が虚血性脳卒中のリスクを低下させる可能性が示されました。牛乳にはカルシウムやカゼインホスホペプチド(CPP)が含まれ、血圧の安定や動脈硬化の予防に寄与すると考えられています。ただし、牛乳摂取のみで脳卒中を防げるわけではなく、食事全体のバランスや運動習慣、生活習慣の管理も重要です。乳製品を適度に取り入れた健康的な生活を心がけることが望ましいでしょう。
編集部まとめ
今回紹介した研究では、日本人地域住民を対象に牛乳摂取と脳卒中の関係を調査し、特に女性で適度な牛乳摂取が脳卒中のリスクを下げる可能性が示されました。ただし、牛乳単体の影響を正確に評価できていない点など、研究には限界もあります。今後の研究によるさらなる検証が期待されます。健康的な生活を送るために、バランスの取れた食事や運動を心がけましょう。