「タバコ1本で寿命が20分縮まる」研究で証明される “喫煙の健康リスク”の新事実とは

イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究グループは、タバコを1本吸うことで寿命が平均20分短くなると推定されることを明らかにしました。研究結果は、学術誌「Addiction」に掲載されました。この内容について、五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
研究グループが発表した内容とは?
イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究グループが発表した内容を教えてください。

今回紹介する研究について、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのサラ・E・ジャクソン氏らは、主にイギリスの喫煙者を対象とした疫学的データを活用しました。その結果、タバコ1本あたりの寿命損失が男性で17分、女性で22分、平均20分であると推定されました。この数字は、イギリスの医師の研究による50年間の追跡調査や疫学データを元に算出されました。過去の2000年BMJの推定よりも精度が向上しており、男性・女性の喫煙習慣の違いや寿命への影響をより詳細に反映しています。
研究は、過去数十年で喫煙本数が減少しているものの、喫煙者がより深く吸い込むなどの行動変化により、タバコ1本あたりの有害物質への曝露量がほぼ変わっていないことを示しました。そのため、1本あたりの寿命損失が過去と同等であるという結論に至っています。さらに、喫煙による健康リスクは累積的であり、禁煙のタイミングが早いほど寿命を延ばす効果が高いことが確認されています。例えば、1日10本吸う喫煙者が禁煙を開始すれば、1週間で1日分、1年で50日分の寿命を取り戻す可能性があります。
ただし、この研究にはいくつかの制約があります。推定値は平均値であり、個々の喫煙者によって影響が異なります。喫煙習慣、タバコの種類、有毒物質への個人の感受性などが寿命短縮に影響を与えるため、すべての喫煙者に同一の影響が出るわけではありません。また、研究では喫煙者が一生を通じて一定量のタバコを吸い続けることを前提としていますが、実際には喫煙習慣が変化する場合があります。
研究内容への受け止めは?
イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

今回の研究結果は示唆に富むものであり、喫煙の健康への影響が如何に深刻であるかを改めて認識させるものです。具体的な数字を示すことで、喫煙が時間と共にどのように寿命を縮めていくかの現実を、喫煙者自身にも理解しやすくしています。このような研究は、禁煙を促進する社会的な動きにおいて、重要な根拠となり得るため、広く情報を共有し、1人でも多くの喫煙者が禁煙を決意するきっかけになればと考えています。
今回の研究結果は今後、どのように活用できそうか?
今回紹介していただいた研究結果は、どのようなことに活用できるものでしょうか?

本研究は、喫煙の有害性を示すと同時に、禁煙の重要性を強調しています。特に、喫煙による寿命の短縮は、人生の比較的健康な期間を削る形で進行し、60歳の喫煙者の健康状態は70歳の非喫煙者に匹敵するとされています。禁煙を開始する年齢が早ければ早いほど、寿命延長と健康改善の恩恵を受けられる可能性が高いという点も重要な結論です。
研究成果をもとに喫煙の健康リスクを具体的に伝えることで、禁煙促進や健康教育、公衆衛生政策に活用できます。「タバコ1本で平均20分の寿命短縮」という明確なデータは、禁煙キャンペーンの効果を高め、喫煙者の行動変容を促進するでしょう。
編集部まとめ
今回の研究は、喫煙が健康に与える深刻な影響を科学的に示し、禁煙の重要性を改めて浮き彫りにしました。タバコ1本で平均20分の寿命が短縮されるという明確なデータは、喫煙者にとってリスクを直感的に理解しやすいものです。私たち一人ひとりが喫煙のリスクを正しく理解し、禁煙に向けた行動を起こすことで、自分自身や周囲の人々の健康を守ることができるでしょう。