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「ヒトメタニューモウイルス」が中国で感染拡大中 風邪との違いやパンデミックの可能性は?

 公開日:2025/01/22

WHO(世界保健機関)は北半球における急性呼吸器感染症の動向について報告し、中国でヒトメタニューモウイルス(hMPV)が増加していることを指摘しています。この内容について五藤医師に伺いました。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。

ニュース内容について

WHOが報告した、北半球における急性呼吸器感染症の動向に関するニュースの内容を教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

WHOの北半球における急性呼吸器感染症の増加に関する動向についての報告では、「ヒトメタニューモウイルスは冬季に広く流行する一般的な呼吸器ウイルスである」と指摘されています。ヒトメタニューモウイルスは軽度の風邪のような症状を引き起こすことが多い一方、一部の感染者では気管支炎や肺炎を発症し、入院が必要になる場合もあります。現在、ヒトメタニューモウイルスは北半球の多くの国で観察されており、中国での感染拡大傾向に注目が集まっています。2024年12月末時点のデータによれば、中国北部でヒトメタニューモウイルスやインフルエンザ、RSウイルスの検出例が増加しているものの、これらは冬季に予想される範囲内であり、異常な発生パターンは確認されていません。

中国の保健当局は、現在の医療システムに過剰な負担は生じておらず、緊急事態も宣言されていないとしています。また、WHOはヒトメタニューモウイルスを含む呼吸器感染症の予防策として、手洗いや咳エチケット、混雑した場所でのマスク着用を推奨しており、高齢者や持病を持つ人など、重症化リスクが高い人々への注意を呼びかけています。また、「今後も各国と連携し、呼吸器感染症の監視を強化しながら、必要に応じて最新情報を提供する」としています。

ヒトメタニューモウイルスとは? 症状・風邪との違いは?

今回のニュース内容に関連するヒトメタニューモウイルスについて教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

ヒトメタニューモウイルスは、2001年に発見された呼吸器ウイルスで、主に冬から春にかけて流行します。このウイルスは乳幼児、高齢者、免疫力が低い人に感染しやすく、飛沫感染や接触感染を通じて広がります。症状は一般的な風邪に似ていますが、場合によっては重症化することもあります。

症状としては、軽度の場合、鼻水、咳、喉の痛み、発熱、倦怠感がみられます。一方、重症化した場合は、気管支炎や肺炎を引き起こし、高熱、持続的な咳、呼吸困難、喘鳴などの症状が現れます。特に乳幼児や高齢者では、入院が必要になるケースもあります。

風邪との違いとして、ヒトメタニューモウイルス感染では高熱や激しい咳が特徴で、重症化しやすい点が挙げられます。また、風邪は年間を通して発生する一方、ヒトメタニューモウイルスは冬から春に流行することが多い点でも異なります。

予防策として、手洗い、アルコール消毒、咳エチケット、マスクの着用が効果的です。人混みを避け、体調不良時には十分な休養を取りましょう。特に、症状が長引いたり、高熱や呼吸困難がみられたりする場合は、早めに医師に相談してください。ヒトメタニューモウイルス感染の可能性がある場合、適切な診断と治療が重要です。

新型コロナウイルスと同様に今後、世界的に流行する可能性はありますか?

ヒトメタニューモウイルスが、新型コロナウイルスのように世界的に流行する可能性はありますか。

五藤 良将 医師五藤先生

ヒトメタニューモウイルスが新型コロナウイルスのように、世界的な大流行を引き起こす可能性は低いと考えられています。ヒトメタニューモウイルスはすでに広く存在し、多くの人が幼少期に感染して免疫を獲得しているため、新型コロナウイルスのように「未知のウイルス」として急速に広がるリスクは小さいと言えるでしょう。また、ヒトメタニューモウイルスの感染力はインフルエンザやRSウイルスと同程度であり、無症状者からの感染が少ないため、爆発的な感染拡大は起こりにくいとされています。

ただし、ヒトメタニューモウイルスは免疫力が低い乳幼児や高齢者にとっては重症化のリスクがあり、季節性の流行によって医療機関に負担をかける可能性があります。そのため、手洗いやマスクの着用など、日常的な感染予防策が大切です。

編集部まとめ

WHOは「北半球で急性呼吸器感染症が増加している」と報告し、「ヒトメタニューモウイルスもその一因となっている」と指摘しました。ヒトメタニューモウイルスは主に冬から春にかけて流行し、乳幼児や高齢者を中心に感染しやすいウイルスです。軽度の症状が多い一方、重症化すると気管支炎や肺炎を引き起こすことがあります。ただし、新型コロナウイルスのように世界的なパンデミックを引き起こす可能性は低いと考えられています。感染予防の基本として、手洗いやマスク着用、咳エチケットを心がけることが重要です。特に免疫力の低い人々を守るため、周囲への配慮も求められます。重症化のリスクがある場合は早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。日常生活での予防策を取り入れ、感染拡大を防ぐ努力が大切です。

この記事の監修医師