新型コロナ死者数 年間3.2万人・インフルの15倍 “命を守るために”ワクチン接種の検討を
「2023年5月~2024年4月の1年間で、新型コロナウイルスによる死者数が計3万2576人に上った」ということが、厚生労働省の人口動態統計によってわかりました。このニュースについて中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
厚生労働省の人口動態統計によって明らかになった内容とは?
厚生労働省の人口動態統計によって明らかになった内容について教えてください。
中路先生
厚生労働省による人口動態統計は、2023年5~12月の確定数と、2024年1~4月の確定前の概数から構成されています。ここで計上された新型コロナウイルスによる死者数を集計した結果、合わせて3万2576人が亡くなっており、そのうち65歳以上が約97%を占めました。同じ時期の季節性インフルエンザの死者数は2244人だったため、季節性インフルエンザの約15倍もの人が新型コロナウイルスによって亡くなったことが明らかになりました。
新型コロナウイルスの感染状況について、2024年10月14〜20日の1週間に全国5000の医療機関から報告された患者数は、1医療機関あたり全国平均で1.86人となっています。前週が1医療機関あたり2.38人だったので、直近では感染者数は減少傾向にあると言えます。
高齢者に対するワクチン接種への考え方は?
今回人口動態統計で明らかになったように、新型コロナウイルスによる死者の97%以上が65歳以上の高齢者となっています。高齢者に対するワクチン接種について、どのように考えたらいいのでしょうか?
中路先生
高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種をめぐっては、日本感染症学会など3学会が見解を出しています。見解では「新型コロナウイルスの⾼齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であり、今冬の流⾏に備えて10⽉から始まった新型コロナウイルスワクチンの定期接種を強く推奨します」と明記されています。
ワクチン接種を推奨する根拠として、「新型コロナウイルスワクチンが、これまでに高い発症・重症化予防効果を示していること」「変異株が出現するため、新型コロナウイルスの流行はこれからも起こること」「高齢者の新型コロナウイルスの重症化・死亡リスクは、インフルエンザ以上であること」「流行株に対応した新たな新型コロナウイルスワクチンの追加接種が必要であること」の4点を挙げています。
今シーズンの新型コロナウイルスワクチンの定期接種は費用の一部を自己負担する形で実施され、「65歳以上の高齢者」と「60~64歳までの重症化リスクの高い人」が対象となっています。対象者は2025年3月末までに、1回接種します。接種費用は約1万5000円となりますが、国が1回あたり8300円を助成することで、自己負担が約7000円に収まるよう配慮されています。自治体によっては、独自の補助をおこなうところもあります。また、定期接種に使われるワクチンは、ファイザー、モデルナ、第一三共のmRNAワクチン、ノババックスが開発して武田薬品工業が販売する組替えタンパク質ワクチン、Meiji Seikaファルマのレプリコンワクチンの5種類です。
今回のニュースへの受け止めは?
今回取り上げたニュースについての受け止めを教えてください。
中路先生
現在の新型コロナウイルスの感染状況は落ち着いていますが、今年も冬季の流行が予想されています。高齢者が多く亡くなっていることを踏まえて、どのようにして高齢者をウイルスから守っていくかを再認識する必要があると考えます。そのためには、高齢者のワクチン接種に対する国の援助や、手洗い・マスクの着用・換気などの基本的な感染対策が必要です。新型コロナウイルスが5類に引き下げられたとはいえ、引き続き気を引き締めていきましょう。
編集部まとめ
「2023年5月~2024年4月の1年間で、新型コロナウイルスによる死者数が計3万2576人に上った」ということが、厚生労働省の人口動態統計によってわかりました。死亡者の97%が高齢者であるという事実や学会の見解を参考に、ワクチン接種について自己判断をする必要があります。