カフェインだけじゃない! 「甘味料」も体内時計を狂わす一因に 新たな事実が判明
広島大学らの研究グループは、「カフェインと甘味料を加えた水をマウスに与えたところ、体内時計が乱れた」という研究成果を発表しました。この内容について松澤医師に伺いました。
監修医師:
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会
研究グループが発表した内容とは?
広島大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。
松澤先生
今回紹介する研究は、広島大学らの研究グループが発表したもので、研究結果は学術誌の「npj Science of Food」に掲載されています。
疫学研究から、夜型の人は朝型の人と比べて、多くのカフェイン飲料を摂取していることが知られており、カフェインは体内時計の周期を延ばすことが細胞・動物実験で明らかになっています。カフェインを摂取する際、苦味を軽減するために甘味を混ぜることが多いため、研究グループは甘味カフェイン水の体内時計への影響をマウス実験で調べました。研究グループは 「一般的なエスプレッソの半分の濃度のカフェイン水」「甘味料も加えたカフェイン水」「通常の水」の3種類の液体を用意しました。そして、マウスを3グループに分け、それぞれの液体を飲ませて1週間以上観察しました。
実験の結果、甘いカフェイン水を摂取したグループは、1日のリズムが26~30時間周期と乱れて、昼夜が逆転するケースもあることがわかりました。甘いカフェイン水の摂取をやめると、マウスの体内時計は元のリズムに戻ったそうです。また、カフェイン水と通常の水の2グループについては、生活リズムの大きな変化がみられませんでした。甘味によりマウスの飲水量は増えていなかったことから、研究グループは「カフェインと甘味の両方が影響し、このような活動リズムが出現した」と考えています。
今回得られた結果について、研究グループは「本研究ではカフェイン摂取によって夜眠れなくなり、遅寝・遅起きといった生活リズムになってしまう可能性を示唆するだけでなく、カフェイン飲料への甘味の追加が、その影響をさらに悪化させることが結果として示されたと考えます」とコメントしています。
研究を実施した背景とは?
広島大学らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。
松澤先生
カフェインが覚醒作用や睡眠リズムに影響を与えることは知られていましたが、甘味との組み合わせがさらに強力な影響を及ぼすことが、今回の研究で明らかにされました。特に、昼夜の活動リズムが逆転し、腎臓などの末梢臓器の体内時計が乱れる点は新しい知見であり、臨床的にも無視できない問題です。今回の研究結果は、甘味を含むカフェイン飲料を日常的に摂取している人々に対して、睡眠障害や体内リズムの乱れを引き起こすリスクが高まる可能性を示唆しています。
不眠や昼夜逆転の症状を訴える患者に対しては、甘味カフェイン飲料の摂取を控えるよう指導することが有効です。さらに、代謝関連の慢性疾患を持つ患者、例えば糖尿病や肥満の患者にとっても、この種の飲料の摂取は代謝に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。カフェイン摂取に対する適切な指導が、特に夕方以降の摂取を避けて量を制限することを中心におこなわれるべきであり、この研究結果は日常生活におけるカフェインのリスク管理の重要性を強調しています。
研究グループが考える今後の展開は?
広島大学らの研究グループが考える今後の展開を教えてください。
松澤先生
今回の研究はもともと、「砂糖を混ぜたら、マウスもカフェインをたくさん摂取する」と想定して始められたそうです。ところが、実際には飲水量は増えなかったにも関わらず、活動リズムの大きな後退が起きるという結果が出ました。
研究グループは「メタンフェタミン、カフェイン、甘味料は、脳内報酬系であるドーパミン神経を活性化させる」と指摘しており、「今後はドーパミン神経に着目して、長周期の活動リズムの出現メカニズムに迫りたい」とコメントしています。また、「カフェインは体内時計の調節効果を強く持つことから、ベストな摂取タイミングの検討も今後は進めていきたい」とも考えているとのことです。
まとめ
広島大学らの研究グループは、「カフェインと甘味料を加えた水をマウスに与えたところ、体内時計が乱れた」という研究成果を発表しました。今後、研究グループが検討している「カフェインを摂取するベストなタイミング」についても、引き続き注目が集まりそうです。