【SHEIN・Temu】商品から「有害物質」続々と検出、安価の代償に“がん”リスクも
中国ECサイトの「SHEIN」「Temu」「アリエクスプレス」で販売されている商品の一部から、基準値を大幅に上回る有害物質が検出されたことが明らかになりました。このニュースについて中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
報じられたニュース内容とは?
今回のニュース内容について教えてください。
中路先生
韓国のソウル市当局が、2024年8月14日に発表したニュースについて解説します。ソウル市当局によると、中国ECサイトのSHEIN、Temu、アリエクスプレスの144製品を対象におこなった検査で、3社の複数製品から韓国での基準値を上回る有害物質が検出されたとのことです。
このうち、SHEIN製の靴の1足には、プラスチックの柔軟性を高める「フタル酸エステル」が、基準値の229倍含まれていることが判明しています。また、SHEINで販売されている帽子からは、住宅建材でよく使用される「ホルムアルデヒド」が、基準値の2倍検出されたことも明らかになっています。さらに、マニキュア液2瓶からは、肝臓に有害な影響をもたらし得る「ジオキサン」が、基準値の3.6倍以上検出されたほか、「メタノール」も基準値の1.4倍検出されました。加えて、Temu製のサンダルの中敷きからは、基準値の11倍を超える「鉛」が検出されたとのことです。
こうした結果を受けて、ソウル市当局は、事業者に対してこれらの製品の販売中止を求めています。こうした中国ECサイトの商品から基準値を超える有害物質が見つかる問題をめぐってEU(欧州連合)は、2024年4月に有害製品から消費者を保護する措置を含めて、SHEINを規制対象に指定しています。
これまでに中国ECサイトで基準値を超えた有害物質が確認された商品は?
今回のニュース以外にも、中国ECサイトで取り扱われる商品から基準値を超えた有害物質が見つかっています。具体的に、どのような商品から見つかっているのでしょうか?
中路先生
Temuなどで販売されている252点の子ども向け製品を韓国関税庁が調べたところ、製品全体の15.1%にあたる38点から有害成分が検出されたと明らかにしました。このうち、靴、学用品、おもちゃなど27点から、基準値の最大82倍の「フタル酸系可塑剤」が検出され、指輪、ブレスレットなどのアクセサリー6点からは発がん性物質の「カドミウム」が検出されています。また、ソウル氏当局が2024年7月に公開した情報によると、女性用パンツから発がん物質である「アリールアミン」が基準値を超えて検出されました。さらに、口紅からは「黄色ブドウ球菌」が検出され、チークからは「好気性菌」が検出されています。
基準値を超えた発がん性物質商品の危険性は?
今回報じられたニュースでは、基準値を超えた有害物質が複数報告されています。中には発がん性が指摘されている物質も含まれていますが、こうした商品についての受け止めを教えてください。
中路先生
近年、衣類や玩具などに含まれている「化学物質」の有害性について注目が集まっています。衣類のシワ防止加工に使われる「ホルムアルデヒド」には発がん性や皮膚刺激作用が知られていますし、玩具のプラスチックに含まれる耐久性や柔軟性を高める「フタル酸」は乳がんや注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害などの精神神経疾患、肥満・2型糖尿病などの成人病の発症に関連していると言われています。
このように、衣類や玩具に使用されている化学物質と聞くと、全て危険で有害なような印象があります。しかしその一方、化学物質はファッション・玩具の業界に欠かせない物質であり、その発展・安全性に寄与し、現在も広く使われています。特に衣服や玩具を燃えにくくする「難燃剤」は、その安全性を確保するのに不可欠です。化学物質を完全に排除することは難しく、同様の特性を持つ代替品を見つけても、科学的な安全性の比較はほとんどなされていません。そのため、どの程度の含有量なら許容されるかの判断が重要であると考えられます。
今回の報告では、たまたま中国の企業が取り上げられていますが、おそらく他国の企業の製品にも、同様の事例の存在があると思われます。実際に「子ども用玩具の2割に有害な化学物質が含まれている」との海外からの報告もあり、玩具を選ぶ安全基準も曖昧で、親が玩具を選ぶ際に参考になる国際基準の決まった認証マークもありません。今後は国際会議などの公の場で、これらの化学物質の安全基準に基づくユニバーサルな認定マークの作成が必要と思われます。
まとめ
韓国のソウル市当局は、中国ECサイトの「SHEIN」「Temu」「アリエクスプレス」で販売されている商品の一部から、基準値を大幅に上回る有害物質が検出されたと発表しました。安価で購入できることが魅力的な中国のECサイトですが、こうした有害物質の検出にどう対応していくのか注視する必要がありそうです。