肥満症治療薬「ウゴービ」が公的医療保険の対象に。厚生労働省諮問機関が了承
デンマークの製薬大手である「ノボノルディスクファーマ」が開発した肥満症治療薬「ウゴービ」について、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会は公的医療保険の対象とすることを了承しました。本薬は2023年11月22日から保険適用となります。このニュースについて中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
中央社会保険医療協議会が了承した内容とは?
中央社会保険医療協議会が今回了承した内容について教えてください。
中路先生
厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会は2023年11月15日、デンマークの製薬大手であるノボノルディスクファーマが開発した肥満症治療薬「ウゴービ」の公的医療保険の対象とすることを了承しました。「ウゴービ」は2023年3月に承認された薬で、週に1回おなかなどに注射して投与するものです。薬価は量に応じて5段階あり、1回あたり1876円~1万740円で、投与の対象になるのは「肥満症」という病気と診断され、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかの持病があり、食事・運動療法で効果が得られない、肥満度を示すBMIが35以上、あるいは27以上で運動機能障害などがある人に限られます。ただ太っているだけの肥満では投与対象とならないことに注意が必要です。日本医師会らは、同じタイプの糖尿病の薬が一部で美容・ダイエット目的で不適切に使用されているケースがあることに強い懸念を示しています。
ウゴービとは?
今回、中央社会保険医療協議会が了承した肥満症治療薬「ウゴービ」について教えてください。
中路先生
「ウゴービ」は肥満症治療用の注射薬で、GLP-1受容体作動薬に分類されます。これまで、日本での肥満症の薬物治療は主に高度肥満症の患者を対象としていましたが、ウゴービの登場により治療の適用範囲が拡大しています。ウゴービは「GLP-1」というホルモンと類似の作用を持ち、このホルモンが刺激するGLP-1受容体に作用することで食欲抑制や胃運動の抑制効果を発揮して体重減少が期待されるものです。使用方法は、週1回0.25mgから開始し、最終的には週1回2.4mgを注射するというものです。副作用には、悪心、下痢、便秘、嘔吐などの胃腸障害があるほか、重篤な副作用として低血糖や急性膵炎のリスクがあるとされています。また、ウゴービに関する最近の大規模な臨床試験では、心血管疾患にも明らかな効果があることも報告されています
発表内容への受け止めは?
今回の発表内容への受け止めを教えてください。
中路先生
「ウゴービ」を処方するにあたっては、専門医が保険診療上の対象になるかを判断し、注射の使用法や副作用のことなどを説明して理解いただいた上での処方となります。「ウゴービ」を適応のない人へ不適切に使用すると、低血糖などの健康被害をもたらす可能性があるので、適切な使用法が求められます。あくまで肥満を解消するのは「食習慣の是正と適度な運動」が基本です。これからもさまざまな肥満症に効果がある薬が出てくると思われますが、薬は肥満の解消を補助するものであることを忘れないようにしましょう。
まとめ
デンマークの製薬大手「ノボノルディスクファーマ」が開発した肥満症治療薬「ウゴービ」について、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会は公的医療保険の対象とすることを了承しました。約30年ぶりに肥満症の新薬が登場したことで治療の選択肢が広がると予想されますが、適切な使用については注視する必要がありそうです。